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第2話 解錠

 必死の訴えも誰にも届かず、私は処刑されることになった。

 薄暗い地下牢に私を連れてきた騎士は扉を開け、冷たい石の床に放り出す。顔面から床に倒れた私だが、彼らは気にする素振りもない。


「そこで大人しくしていろ、化け物」


 騎士は捨て台詞を吐くと牢の鍵を閉め、歩き去っていった。

 舌に血の味が広がる。唇でも切れたらしい。


 この国は名誉や誇りを何よりも大事にする。国や大陸の平和に貢献した英雄に名誉ある死を与えるように。

 裏を返せば、王家に近い人間から反逆者が出ることを公表したりはしない。

 よって私は地下室にある〝大穴〟に落とされる。大罪人を処刑する際に使われる暗く深い縦穴だ。秘密裏に執行されるためか私も実際に行ったことはない。


 まさか不治の呪いに侵された騎士たちの誇りある魂を天に送る役目を負った天葬師が処刑される側になるなんて。


「ひどい最期だな……」


 身をよじりながら壁に寄りかかる。ここに放り込まれるまでに散々聴取という名の拷問を受けて、体は既にボロボロだ。

 犯人ではないのだから何も証拠なんて出るわけがないのに、これでもかと痛めつけられた。

 幸運だったのはランディが言った〝私の血には死の呪いが流れている〟という言葉を信じているのか、血が飛び散るほどの暴力はしてこなかったことくらいだろう。


 それにこんな傷の痛みなんてどうでも良かった。

 今まで仲間だった人達からの罵倒や暴力。体より心に堪える。


 昔、師匠が言っていた。人との信頼は築くまでが難しく、壊すのは簡単だと。

 今ならその意味がよく解る。


 今、私を信じていてくれる人はいるのだろうか。

 そう考えたとき、脳裏に浮かんだのは一人の少女だった。


「アスタ……」


 呪いを受けたという王女、アスタ。襲われた状況は解らないが、真犯人を知っているかもしれない。彼女だけは、今も私が現れるのを待っているかもしれない。


 心配なのはアスタの容体だ。

 最後に会ったのは六日前、つまり私が騎士に捕まる前日だ。本当に呪いを受けていたのなら、体が耐えられるのも限界だろう。しかしここにいては何もわからない。何もできない。


「無事でいてください、どうか……」


 ポツリと言葉が漏れる。

 牢の中で祈ることしかできない自分が不甲斐ない。


 どうにか救う方法はないか、そんなことを考えていると、コツコツと地下に足音が響いた。誰かがやってくる。


「……誰」


 足音は私がいる牢に近づくにつれ大きくなり、そして檻の前で止まる。そこにいたのは、


「王妃様……」


 王妃メルザ・グランクリー陛下。先代王妃が病死した翌年、国王が国境付近へ遠征先で出会った姫君で、後妻という形で王妃になられた。

 絹のようにつややかで白い肌、唇に真っ赤な紅を入れた見目麗しいお方だ。深い青のドレスを着ており、澄んだ黒い長髪は後ろでまとめ上げられている。


 私が糾弾された場にはいなかったが、なぜここに?。


「エヴィ、出なさい」


 メルザ様の一言で、後ろに控えていた兵士が牢の鍵を開け、扉を開く。

 まさか処刑が執行される時間が来てしまったのか? 王妃であるメルザ様が直々に迎えに来たというのはどういうことなんだ?


「混乱しているでしょうが、今は時間がありません。あなたを逃がします」

「え?」


 陛下の言葉はあまりにも意外なものだった。あまりにも淡々とした口調もあわせてどういう意図があるか全くわからない。


「私を逃がす? なぜメルザ様がそのようなことを」

「詳しいことは移動しながら話します。さあ、急いで」


 事態が飲み込めていないが、ここは従う他ないようだ。私は痛む体を無理やり動かし、牢の外に出る。

 メルザ様は傷だらけになった私の全身を見て少し眉をひそめたが、すぐに歩き始めた。


 ここまで読んでいただきありがとうございました。


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 次回もお楽しみに!



 実際の地下牢って寒いのかな。

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