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思考




思ったより激しかったなあ、和ちゃん.......。

元々、攻め気質だったのね。分かってたけど。

ああ、体のあちこちがきしむ。あら、こんなとこにまでキスマークつけちゃって。

ふふっ。これをネタに恵美に絡まれようかしら?

ああ、楽しみにとっておこう。


思考のスキマに正気が入り込む。


和ちゃん。小さい頃から、あんなに私を想ってくれたんだなあ.......。涙は、もう出なかったけど、まだ胸が痛んだ。




「和ちゃんは、巻き込みたくなかったなあ」




1人呟いてみたけど、なんだか空々しく感じた。

ふふっ。我ながら、白々しい。なんだか、また可笑しくなってきたので、つらつらと思考を再開する。


彼女達の事は、はるか雲の彼方の上に追いやって、自己を振り替える。私は、いつも独りの時そうしている。癖というか、一定期間空いたらやる事だ。私は、どこかで独りの時間はいる。




小さな頃か──

小さな頃はいい子だった。平等に人に優しく(名前の通りに生きようとしたのだ)怒らず泣きもしなかった。

99%は、その通りの周りの評価を得られた。1%は違った。「言われてやってんのか!!」正直99%の評価の言葉より、その一言の方が覚えている。

母に言われた気がするけど、なんと言われたか、よく思い出せない。今となってはどうでもいい。


私は、大きくなるにつれ、この1%に蝕まれていき、次第にどうでもよくなったのだ。

どんなに良く生きようとしても、手に入らないならもういいかと、思わないまでも、言動がおかしくなっていった。

好きな人と巡り会おう。そう。巡り会った。

しかし、どうしても心の底から大事に思えなかった。大事にしようと思えば思うほど、私の中の1%が顔を覗かせるのだった。親しい人を卑下して、裏切り、憎しみを覚えさせて、悦に入る。


何に起因するのか?

この腐れてただれて黒く染まってしまった心根は。

小さな頃の親戚にたらい回しにされた事や、母が私を捨てて男に走ったのをトラウマとして、そのせいにしたかった。

だけど出来なかった。私はいい子だったのだ。

いい子を捨てきれなかったのだ。


それが今に繋がったのだろうか。私は最悪だ。

誰のせいでもない、私は今の私が本当なんだろう。


別に母が男と逃げたから、女に走った訳じゃない。

愛された記憶がないから、愛する人を裏切る訳じゃない。ただ、ただいい子であろうとしたからこうなったのだろう。本当に、今さらどうでもいい。


私の成り立ちってこんな感じだったかなあ?

気が触れてるなあ.......。

ツラツラ考えても仕方ない!愛人に愛されに行きますか──






「あの、もし。鍵を落としましたよ?」




不意に、独りの時間が終わりを告げた。

ちょうどいいところで思考がまとまったので、タイミングがいい。気分もいい。

だから私は、後ろから声をかけた女性に笑顔を返して答えた。




「あら、ご親切にありがとうございます」




30代と見える主婦は、人の良い笑顔をしていた──






続く














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