初恋の相手でご免なさい
帰り道。
愛美と私は手を繋ぎながら下校していた。
まだ顔を赤く染めている彼女ととつとつと喋っている。ピロートークも大事だ。
「それで愛美ちゃんは私のどこを好きになったの?」
「それは、その。2年の時の修学旅行で......。貴女と和久井さんがキスしてるとこを見ちゃって......。それから青島さんの事を目で追うようになった」
「あら飽きれた愛美ちゃん。私の事を好きと言うより、ただキスシーンを見てモヤモヤしただけじゃない」
「ち、違う!!私は和久井さんじゃなく貴女を見ていた!」
「ほんとかしら?ただ女の子どおしのキスを見てしまって、愛美ちゃんは、普通の恋愛よりも興奮しただけじゃ?そして、和久井より私の方がまだイケると踏んだ」
「ほ、本当よ!貴女を見ていて私は、いつもドキドキした!和久井さんには何も感じなかった。彼氏がいた事もあったけど、こんなには思わなかった。貴女が次に何をするのだろうと、目で追わずにはいられなかった!イケるとかそんなんじゃない!」
「刷り込みによる錯覚かもね、愛美ちゃん」
「違う......」
「じゃあ、女の私に初恋かな?愛美ちゃん」
私は笑顔で愛美の顔を覗きこむ。
愛美は泣きそうな顔で絶叫に近い声で叫ぶ。
「なんでさっきから、ちゃんづけで呼ぶの!?キスした時みたいに名前で呼んでよ!」
何かに辛抱たまらず、こちらを見据える愛美。私は突き放す。
「駄目ね。貴女が私を呼び捨てにするの、愛美ちゃん。」
「......!」
じっとにらみ合う、私と愛美。信じられないものを見る目で私を見る愛美。だけど、そう。貴女もそうなるの。
「ほら、早く。私の事を好きなんでしょ?」
「優子さん......」
「駄目よ。ちゃんと呼び捨てになさい」
「ゆ......優子!!」
「そうよ、それでいいの。愛美」
駄々っ子みたいに顔を背ける愛美。興奮して手の先まで赤くなっている。
「......ねえ?優子。優子はなんでそんななの?なんで私の初恋が優子なのよ」
「無粋ね......。私は母親の愛が欲しかっただけよ。今、それを実行してるだけよ」
「お母さん亡くなったの?」
「いえ、新しい男を作って、子供の私を置いていったわ」
「普通、それなら、お父さん子にならない?」
「お父さんが先に不倫したのよ。だから私は男は駄目。生理的に受け付けない」
「だからなの?駄目だわ、分かったような気持ちにはなるけど分からない」
それでいいのよ。悩んだような八の字眉に、憐れむような慈しむような目になる愛美。
「貴女の初恋を奪ったのは私よ。奪い返しなさい」
目を閉じて顎をつき出す私。腰に手を回し密着する。愛美の息がかかるのを感じる。
そして私にかぶりつくような──
獰猛なキスをする愛美だった。
続く