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勇者を名乗る少女(1)

お初にお目にかかります、秋狐と申します。

拙い文章ではありますが、どうか一読して頂ければ幸いです。

 空から女の子が降ってくる。

 飼っているペットが、朝起きたら美少女になっている。

 昔通っていた神社の神様が、なんやかんやと世話を焼いてくれる。

 アニメ好きの人間なら、一度は夢に見る展開だろう。

 しかし、今俺に起こっている事態は、そんなロマンチックな物ではなかった。


「なあ、お前はどうして俺の家の扉の前で座り込んでいるんだ」


「お腹がすいて動けない。香ばしい香りに釣られてここまで来たのだが、それも途絶えてしまった」


 先ほど隣の部屋に届いたと思われる、ピザの匂いに釣られてここまで来たらしい。

 部屋の前を歩き回っている足音が自分の部屋の前で止まったので、気になって見に来てみればこの少女が座り込んでいた。普通の少女が座り込んでいたのならば、交番に届けるなり何かしらの対処は出来ただろう。

 だが、扉を開けて下を見たとき、真っ先に目に入ったのは流れるような銀髪だった。

 そしてこちらを仰ぎ見た少女の瞳は、テレビやゲームでしか見たことのない、透き通るような琥珀色。日本人離れしたその容姿をしているのに、話す日本語は非常に流暢でこんなの無視できるかと、思わず声をかけてしまった。


「あー、その、なんだ。お嬢ちゃんの家はどこかな」


「パドック村だ。フィニエス王国の南西部の村だが知っているか?」


「すまん、それはどこの喫茶店の名前だ」


「キッサテン、というのは分からないが、貴様に私の世界の知識がないことはわかった」


 これは、相当仕上がってらっしゃるのだろうか。

 だが、この顔立ちから日本人ということはないだろうし、外国からはるばる日本に来て迷子というのなら、それこそ放っておくわけにはいかない。


「熟考しているところ申し訳ないが、見ての通り私の持ち物は何もない。こんな状態で厚かましいということも承知しているが、なにか食べ物を分けてくれないだろうか」


 座り込んだままこちらを見上げていた少女は、蚊の鳴くような音を腹部から発しつつ何とも情けない表情をしている。その表情はずるいだろうと頭を掻きながら、俺はこの少女に後の俺の人生を変えてしまう一言を放ってしまった。


「それじゃあ、飯だけでも食ってくか?」


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