*15年ぶりの帰国
思えばあの時、日本に行かなければ私はあなたを想う事も、あなたを愛することもなかった。
そして愛を知ることもなかった……
仲間と出逢うこともなかった。
2007年・夏・
成田空港
“コツッコツッコツッ”
高さ7センチ程のハイヒールの音が空港のフロアに響く。
入国審査を終えて、私ははじめて外の景色を見た。
それはなんてことない日本の風景で…
でも、何故か心が和んだ。
「真中先生!!」
現実につれもどされる大きな声で彼女は私を呼んだ。
「……………」
小柄でまだ若い彼女は日本では普通に考えて研修医だろう。
「海南大学付属総合病院の秋川です。
真中藍良先生でいらっしゃいますよね?
お待ちしていました。」
恐らく彼女は私とあまり年齢は変わらない。
でも、私と違うあたたかな瞳をしていた。
「はじめまして。」
私はそれだけ言うと外の景色も見ずに指示された殺風景な車内に乗り込んでいった。
海南大学付属総合病院
院長室
「やはり凄くお若いんですね〜。
ハーバード大学メディカルセンターで学ばれてから暫くアメリカのERで活躍なさっていたとか。むこうでは何年飛び級なさって大学に?」
私は院長の問いに急いで答える素振りなど少しも見せず、長い髪を束ねてから言った。
「…そうですね、9年くらいでしたかね。
大学院で研究もしましたし……。
ERで働いてはいましたが私の専門は胸部心臓外科なので…。」
このときの私は仕事しか頭になくて……
きっと永遠にそうだとおもってた。
あなたに会うまでずっと優秀な外科医だった。
次回から友情や恋愛要素がようやくはいってきます★ なお、病院名などは全部架空ですのでよろしくお願いします! 評価、感想お待ちしています☆