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短編集 冬花火

卵の中の生

作者: 春風 月葉

 教えはくれまいか?

 私は生きていたのかを、私は生まれていたのかを、私の生がなんなのかを。

 暗く、狭い殻の中、私にはたしかに鼓動があった。

 外の世界を夢想し、来たる時を待ち望んでいた。

 近くにいるのであろう兄弟達、自分を優しく温める両親の体温を感じ、見えぬ孤独も搔き消した。

 その日は外からは水の弾ける音が聞こえていた。

 待ちに待ったその時が私達にもやって来た。

 ピシリという乾いた音が一つ聞こえると、辺りからそれに続くようにピシリピシリと乾いた音がする。

 外からは生まれたことを喜ぶ兄弟達の声が聞こえていた。

 私も早く外へ出たいと思った。

 しかし、私が外の世界を見ることはなかった。

 どうやら私は生まれ損ねてしまったらしかった。

 もし、私がこの私には分厚く硬すぎる殻の外に出ることができていたら、私はどんな姿だったのだろう、世界はどんな色をしているのだろう。

 教えてはくれまいか?

 私に生は存在していたのかを。

 出来損ない(わたし)は殻の中で永遠に夢をみる。

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