遊夢編―序章―
見た目が淫乱の転校生がやって来て、僕は少しだけ彼女と話をしたりした。
席が近いためか、向こうも時たま振り向いては小説の話題を出してくる。
もちろんエロい内容だけでなく、男女の恋愛トークをしているようなものだった。
そんな僕の姿を他の男子が黙っておくはずもなく、ずっとこちらを睨んでいた。
「(気まずいな……)」
「どしたの?」
「ちょっと、トイレ」
僕はその場から立ち去った。
その瞬間には男子に囲まれていた。
大方彼女の胸元を近くで見たいだけだろう。
そのままトイレには行かず、教室にも戻らなかった僕は4時限目を抜け、僕はひとり屋上へとやってきた。
「あっ」
ひとりだと思ってた屋上に、星井いた。
「……」
「なんだ、まだ怒ってるのか?」
「そうじゃ、ないけど。ちょっと、悔しい」
彼女は上からグランドを眺めながら、金具を強く掴んでいた。
「タカタカは優しい。ううん、優しすぎるくらいだよ。こんな私にも、あのロリ野郎の先輩のことも許すなんて……普通なら拒絶ものよ」
「別に普通だし、僕は全てを許したわけでないし」
「そういうところだよ。一部でも許して、朝一緒に登校するほどの仲になるなんて……」
「星井?」
「ほんっと、ずるい!悔しいよ!」
どうやら星井が本気で怒っていたのは、朝一緒に登校してきたことのようだった。
僕は飽きれ半分に星井のことを見ていた。
「明日は、私と登校してよね!」
「お前、家の方向逆だろ?」
「なら朝迎えにいく!」
それはあってはならないことだった。
同棲していることまでバレたら、星井が僕を殺すかもしれない。殺せないだろうけど。
「うちは叔父がいるから……」
「じゃあ何ならいいのよ!」
そんな必死の星井に僕から妙案を出すことにした。
「時間があるとき、勉強教えてやるよ」
「……勉強か。勉強……図書室……放課後……二人きり……」
ぶつぶつと独り言をぼやいた後、彼女はにっこりと笑った。
「しょうがないから、勉強教わってあげる」
何故か上から目線でそう言われ、僕もしょうがないから彼女に勉強を教えることとなった。