第6話―淫乱な転校生―
僕は悪魔との共同生活を強いられ、友に釜の飯を食べ、狭い部屋で一緒に寝ることとなった。
たまに寝ぼけて僕の血を吸うこともあるけど、殺傷能力はそれほどではなかった。
僕が能力の一部を奪ったのはある意味正解だったのかもしれない。
今後の彼女の方針は分からないけれど、見た目は人間でも根は悪魔、何をされるか分かったもんじゃない。
そんな生活にも慣れ初めて1ヵ月、一緒に学校を登校していると、後ろから星井が声をかけてきた。
「タカタカ、何してるの?」
この時間に星井とぶつかるのは珍しいことだった。
そもそも不良もどきである星井が朝から学校にいること事態珍しいことだった。
「なにって、なにが?」
「そいつって、私を殺そうとしたやつじゃん!」
必死に声を荒げて悪魔を指で指した。
高橋はそんな星井に気を抜けたように答えた。
「大丈夫だって、こいつはもうそんなことしねぇよ」
「そういうことじゃなくて!そいつは――」
「星井、もう終わったんだ。なっ?」
過去に起きたことを水に流そうとする高橋の姿勢に納得がいかぬまま、星井は後ろに付くように高橋と共に教室へと入った。
そして椅子に座ってからも、黙りとしていた。
そんな中、教室に担任がいつもより少し早く到着した。
皆がざわざわと騒ぎながら、状況を察して席へと着いた。
「えぇ、みなに報告がある。今日から転校生が来ることになった」
――おぉ!
教室で生徒の一部が歓喜する。
――また転校生だってよ!
――女か?女か?
――可愛い子がいい!
どうやら男子の方が反応しているようだ。
最近の転校生が僕、すなわち男子だったから次は女子だろうと思い込んでいるようだ。
そんな幻想と期待に答えるように、転校生が現れた。
「それじゃあ、軽く自己紹介を」
「はぁい」
甘ったるい声で返事をした転校生は、文字通り女子高生だった。
「亜熊遊夢ですぅ。よろしく~」
あんくま?――そんな名字が存在するのだろうか。
しかし世の中色んな名前もある故、不思議があっても可笑しくはない。
それに僕は彼女に見覚えがある。
そうだ!――昨日本屋に来た女の子じゃないだろうか。
谷間の見えるワイシャツに今度は制服のスカート、それも今にも白い生地が見えてしまいそうなほど、短い間やつだ。
そんな彼女と目が合うが、僕は目線を反らしたが、彼女が反応してしまった。
「君は……?」
「おっ、なんだ高橋知り合いか?」
「いえ、人違いですよ。僕みたいなのは他のクラスにもいますし」
僕は嘘を付いたが、彼女がニヤニヤとこちらを見ていた。
互いに秘密があるせいか、嘘は通用しないようだった。
「それじゃ、その高橋の前の席に」
「はぁい」
僕の前の席にいたクラスメイトはいつの間にか消えていた。というか、星井の席ではなかろうか。
星井がいない――たぶん教師が来た時点で部屋を出たのだろう。
サボりで有名な彼女の席は、亜熊の席となってしまった。
教師にとっても、星井はそれほどの存在でしかないのだろう。
「よろしくね、変態さん」
小さい声でにっこりと随分な挨拶をされた。
僕の顔はたぶん呆れていたに違いない。
彼女の背中は、相変わらずエロいというか、ブラジャーが透けているのが分かった。
もしかして、彼女もまた悪魔と成り得る存在なのだろうかと、僕はあの悪魔の顔と重ねてしまうのだった。