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第5話―悪魔解雇?―

 年がら年中、真っ黒の空で覆い被さり、コウモリが飛び交うここは魔界と呼ばれている場所である。


 そこへそびえ立つ城が多くの魔族が集まり、いつしか地上を我が物としようと考えるものの集まりであった。


 そんな魔界へひっそりと地上でミッションを失敗に終わった悪魔少女が帰ってきた。


「た、ただいま戻りました魔王様」


 高橋焚柏に負けた悪魔が報告へと戻ってきたのだ。


 膝を着き、忠誠を誓うその姿を、玉座と思われるその場所から見下す魔界の族長(おさ)である魔王が待ちわびたように驚いた。


「おぉ、サタンよ。戻った」


 大きな角にギザギザの歯、黒く染まった肌色こそ悪魔の象徴である。


 人間の3倍の大きさである魔王は悪魔からしてもとても大きかった。


「魔王様、前にも言いましたように私はサタンの娘であり、サタンではございません故に……」


「サタンは死んだことはとうに知っておる。たがサタン亡き今はお前がサタンを名乗ることに躊躇する必要もなかろう」


「そう、でしょうか……」 


 渋々と返事をする悪魔。


 亡き父親であるサタンと同様の扱いをされる。


「ところでサタンよ。地上の侵略、成功したのだろうな?」


「そ、それが……予期せぬ事態が……」


「予期せぬ事態?」


「我々悪魔にも匹敵する能力者がいたのです!それで手も足もでず……」


「……くぅ、バカ者が!!!」


「うっ!」


 突然に怒鳴られ、目をつぶってしまう。


「それでノケノケと帰って来るとは……愚行にもほどがある!」


「し、しかしっ!」


「言い訳は聞かぬ。いいか、お前は地上を征服するまで帰って来るではない!それはお前がサタンである以上の最低条件でもあるのだ!先代のサタン同様、きちんと役割を果たしてこい!」


「そ、そんな……」


「言い訳は聞かぬと言った!さっさといけ!」


 悪魔ことサタンは再び地上へと戻ることとなった。


 高橋炊樫という存在がある限り、地上を征服することなど不可能だった。これからを路頭に迷いながら、地上へと戻るのだった。





 一方では、高橋焚柏は寝ていた。


 今日は土曜日、そして店番で家から一歩も動けない状況だった。


 見たい本も見飽きてしまい、古本をベットに横たわっていた。


 これらの本は当然売り物、しかし売れてないのを良いことに雑に扱う始末。


「あぁ、暇」


 手の届く位置にある本をパラパラと捲り、流し読みしていた。


 彼はスマホもなければ友達もいない。


 故に暇を潰す方法がない。


 友達がいればこんなに暇じゃないんだろうなぁ、そんなことを考えていた。


 そんな時、目の前に人影が煽った。


「あの、ここやってます?」


 本を退かし見上げるとそこには女性がいた。


 谷間の見えるワイシャツにダメージの入ったデニムのミニスカート、高橋の位置から若干白い生地が見えたせいか、直ぐに起き上がり尻を払った、 


「いらっしゃいませ。ご覧の通り閑古鳥でして、営業はしてますよ」


「そ、じゃあ君の持ってるそれ、貰えるかな?」


「……はい、500円です」


 一瞬、躊躇ってしまった。 


 何故なら彼が流し読みしていた本は官能小説、いわゆるエロ小説だったからだ。


 それを女性が買うとなると、男である以上、無意識に反応するのは仕方のないことだった。


「ふふ、これ、どうなの?」


「どう、とは?」


 ニュアンスだけの回答に答えようがなかった。


「エロい?」


 これまた、真面目に答え辛い質問だった。


「はい、大変変態的内容ですよ」


「ならよかった」


「でもお姉さん、見たところ学生だけど、それ18禁ですよ?本来お売り出来ませんが」


「あなたも、学生でしょ?」


「読まれてる姿を見られた以上、売らざる終えませんからね」


「話が早くて助かるわ。それじゃ」


 500円玉片手に呆然とする高橋、また暇となる。 


「しかしまあ、見た目通りのエロいお客様だったな」


「お前、一人でなに言うてるのだ?」 


 大きな独り言に声が返ってきたことに、思わず顔を上げる。


 そこには再び、違う人が立っていた。


 見覚えのある。さっきのお姉さんとは違い色気のない少女がそこにはいた。


「悪魔か、また来たのか。懲りないなぁ、お前も」


「いや、待て。今回は戦いに来たんじゃない」


「いや待たない。二度と来るなと言ったはずだが?」


「話せばわかる」 


「分かりたくもないが」


「まあ聞け」


「命令か?」 


「聞いてください」


「切り替わるの早いな……」


「じ、実は……」


 申し訳なさそうにもじもじと指同時を合わせ、恥ずかしめていた。


「実は……私の洗脳能力が使えず……家賃が払えなくなった」 


「……ん?なんだって?」


「だから、私は人間を洗脳する能力を持っていた。しかしお前と戦い終えてからと言うものの、その能力が使えなくなった。で、昨日家賃の収集に来た大家を洗脳しようと思ったら使えず、家を追い出された」


「……ぁ」


 小さい声で原因に察した高橋は、思わず口を閉じた。


 前の戦いで一部の能力を返さずに持っていたため、悪魔はその能力を使えない状況になっていた。


 それに気づいた高橋、悪魔の肩を掴み、そのまま店の外まで持っていく。


「俺にはぁ、関係がぁ、ないなぁ」


「なにその言い方?怪しい……」 


「オレハナニモシラナイアルヨ」


「お前そんなキャラだったか?」


「黙れ。どのみち俺には何の関係もないだろ」


「能力が戻るまでしばらく泊めろ」


「お前女だろ」


「関係ない。泊めろ」


「それも命令か?」


「お願いします、泊めろ」


「……結局命令かよ!」


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