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女子高生は悪魔or催眠術師?  作者: 名無 無垢
戦闘準備の回ー天使編ー
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天使編04-02

 亜熊が屋上に来て、僕は直ぐに亜熊に駆け寄る。


「星井が気になる。探して僕らだけで儀式をやりに家に戻ろう!」


「……そう、ね」


 暗い顔のまま、亜熊がそっと背中を貸してくれた。何かあったのだろうか。


 上空から見下ろす町並み、近くにある体育館が非難所となっているようだ。その生徒の群れに星井がいた。


 亜熊がテレパシーで星井に「外に出て」と送ると、体育館から星井が現れた。


「お前も見たな?あれが堕天使と呼ばれる……僕の悪友が生み出している敵だ」


「あ、あれと戦うの?」


「だから天使に戻すのよ。元々あんたらのもっている潜在能力を引き出すだけ」


「どうすればいいんだ?」


「……これを飲むの」


 亜熊が渡したのは黒い丸薬--匂いもなく粒のようなものだった。


「これを飲めばいい。以上」


「……それだけ?」


「死ぬような痛みが走るましいけどね」


「……」


「大丈夫。私が痛みを和らげてあげるから」


 星井の肩に軽く手を置き、優しく微笑んでいた。僕は先にその黒い粒を飲み込んだ。


 僕には認識を変える力が既にあるから、もしかしたら星井よりは耐えられるはずと思ったからだ。


 丸薬を飲み込む姿を見た星井が続けざまに飲み込んだ。


「~~~~~っ!!!」


 声が出せない痛みが全身に走る--背中の骨格が動く感覚を味わう。



 骨が伸びようと内側から皮膚を突き破り、目の中が焼けるように熱くなった。



 顔がバラバラに散りじりとなり、黒い皮膚が徐々に体を蝕み、頭からは角のような触覚が生え血が噴き出る。



 自分の中にいる何かがドアを叩くように脳の中を駆け巡る--僕は認識を変える力を出す時と同じような感覚で自分を支配した。



『我が怖いか?』



 僕に住んでいた天使が悪魔のような笑みで見つめている。



「僕は臆病者だ。怖いと思って何が悪い?」



『開き直りか。それもまたいい。お前らしいぞ高橋焚樫!我が力、受け取るがいい!』



 白い炎を全身に浴び、炎は皮膚に吸われるように吸収されていった。



 これが天使の力を持つ人格、悪魔の血が入っているだけあって狂気に満ちている。



 僕が力を認識し受け入れると、再び人間の姿へと戻っていた--今のは幻覚だったのか?



 その頃、亜熊は魔力を星井に送り、痛みを和らげていた。


「痛い痛い痛いの!!!!!!!いやぁっぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!」


「頑張って星井!!」


「来るなぁ!!!」


 亜熊が星井に吹き飛ばれるサマを今僕は目の前で見てしまった。


 体力のない亜熊はそのまま気を失ってしまう。仮にも天使の星井、その溢れる力は魔界人には効果的だった。


「……待ってろ星井、今助けてやる」


「グル゛ナ゛ァ゛!!!」 

 

「今の僕ならお前の天使の認識を変えられる……」


 僕は星井を蝕むその何かが目に見え、その悍ましい天使の首を絞めた。


『……!?』


「大人しく星井の力になりやがれ!」


『……』


 僕の力は無にされ、星井の身体は僕と同じように皮膚が避け始めていた。


 骨全体が体から浮かびだし、徐々に肉体と離れようとしていた--天使の意識だけが分離しているのか?


 そんな星井の天使に負けじと僕は力で身体の分離を止めた。


「舐めんじゃねぇ!」


『……』


「入ってくれぇ!星井が死んでしまうだろうが!」


『ほしい?……ほしい……星井……』


 星井の天使は急に動かなくなり、星井の名前を口動かしながら静かに身体へと戻っていった。


「な、なんだったんだ……?」


 骨が抜き出しとなった身体も元に戻り、星井は意識を失ってしまった。


 吹き飛ばされた亜熊が目を覚ましすと、自分の傷を魔力で補い、気絶した星井を担いだ。


「星井には……荷が重かったかしら」


「いずれはまた現れるはずだ……その時まで星井にはサタナエルの付いてもらう。少しでも力を使えるようにするならそれが一番だろうからな」


「なる、ほどね……はぁ、星井……あんな姿になってしまうのなら、やっぱり天使になんかさせるんじゃなかったのかな……」


 再び俯く(うつむく)亜熊、自分の不甲斐なさに嫌気を刺したようなその表情をしていた。


「どした?らしくないもない顔しやがって」


「……私って足手まといなのかなって……さっきも星井を助けてやれなかった……」


「はは、そんなことか」


「そんなことって……」


「お前がいなかったら、堕天使から逃げられなかった人間がどれほどいた?亜熊がいなかったら太陽の異変にも気づけなかったしな。

それに星井もな、ほんとなら痛みで死んでいたかもしれない。それをお前が抑えたんだ……わかるか?少なくとも僕は亜熊が必要だ」


「っ!そんな……やめて。好きになる……じゃん」


 亜熊を慰めることができた。本心も含んで伝えたこの思いは、僕と亜熊の間に絆のようなものが生まれた気がした。


「!」


 亜熊の懐に持っていた本が光りだした--絆の本が生まれた。


 これは悪魔の時と同じく、魔界人が天界人への転生が可能となる力だった。


「初めてあなたと会った時に買った本……」


 亜熊に生える白い羽、制服がシスターの聖者のようにフードのある恰好となり、彼女もまた天使の力を手に入れた。


「これで、私も戦える!」


「星井を一回僕の家に運ぶぞ。その後にみんなのところ行くぞ」





 一方その頃、叔父と悪魔、そして天使が堕天使を処理を急いでいた。


 何人倒しても増え続ける堕天使、三人ではとても処理が追い付かない--疲労困憊に追われながらも剣を振り回す悪魔。


「はぁ……はぁ……」


 高橋との距離も遠く、天使の力は徐々に薄れて来てしまう。絆の力で生まれたこの力は高橋が近くにいないことにはそう長く扱えるものじゃなかった。


『しっかりして下さい!』


「そういうあんたが一番キツそうね……」


 サタナエルが駆け寄り、膝を着く悪魔を守りながらに全力で魔力を使い尽くす。だが前半の時に既に消費してしまった力のせいで、サタナエルもまた困難になる。


 叔父も自分の戦闘で手一杯と動けず、このまま皆が全滅しそうとなる。



 その時、空から無数の白い光が辺りを照らすーー堕天使の動きが止まる。


「はぁぁああああ!!!」


 空高く光を放っていたのは亜熊だった。


 その光はどうやら堕天使に効果的のようで、その場の全員の身体が溶け始めていた。


 それを見た叔父が疾風の如く、一人ひとりの心臓をモノの数秒で引き抜き、完全消滅に成功をした。


「はあ……助かった。これで堕天使は消えたか」


『どうやら天使になったのは亜熊さんの方みたいですね。星井さんはどこへ?』


 亜熊が地上に降り、さっきまでの出来事に簡単に説明をした。


「まあそれだけ星井ちゃんの中にいる天使てのはデカイってことか。まあしばらくは仕方ないか」


『しばらく私が面倒見ます。立派な天使にしますよ』


 変なやる気を出すサタナエル、そして次に気になるのが亜熊が天使の力を手に入れたことについて。


「絆の本ね」


『やはり私の仮説に間違いはない。高橋さんにはアダムの素質があるようですね』


「もういいよそれは。それより星井と明が気になるからうちに一回戻ろうぜ?」


「そだな。本の片付け、終わってるといいがな」


 僕と叔父はダルそうに喋りながら一旦店の方へと戻る。


 もちろんみんなも一緒にーーそして、まだ戦いが終わっていないことに気づかされてしまう。


 僕らの罠は太陽で生徒を殺すことでも、たくさんの堕天使で殺されることでもなかった。


 まさか、こんなことになるとはーー誰も気づけなかった。

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