天使編03-02
しばらく経ち、皆が落ち着いた頃に、僕らの情報も叔父には伝えた。
出会った経緯から今まで起きている状況の全てを叔父はメモし、台所へと向かう。
叔父が皆にアイスコーヒーを用意してくれたのだ。
砂糖のミルクをそれぞれがお好みに入れ、僕はブラックのまま一気に飲み干す。
「それで、これからどうすれば?」
僕が叔父に聞くと、タバコに火を付けながら答える。
「うぅん……まあお前が天使する準備はこちらでするさ。儀式みたいなもので直ぐなれる。あとなんだっけ、星井だっけ?あいつも天使に戻す」
「なんでだ!」
僕は不意に声を荒げてしまう。
「天使は多い方が有利だからだ。悪魔には2人には他にやってもらうこともある。それと、天使……ややこしいな、名前は?」
『サタナエルだ』
「長いなぁ、サっちゃんでいいな?サっちゃん、オレ、タカタカだけで堕天使のオリジナルに勝てると思うのか?」
「勝てるだろ、3人もいれば!」
『サっちゃん……』
僕は冷静と思えない口調で怒鳴ってしまった。
そんな僕に叔父は歯を食い縛る表情になった。
そして天使ことサタナエルが叔父のあだ名に嘆いていた。
「甘い……お前が思っているよりも堕天使というのは強い……力は多い方がいいんだ!」
「でも星井は関係ないだろ!」
「関係ないってことはないだろ?その現実逃避はいつまでも目をそらしていいもんじゃない!」
『サっちゃん……』
「ダメだ、星井は巻き込めない!」
「甘えんじゃねぇよ!!姉貴みたいに死んでもいいのか!!」
「母さん……!?」
『サっちゃん……』
「「いや、いいかげん空気読めよ!」」
『あ、失礼しました。ん、口論中ですがお客さんですよ?』
こんな時間に誰だろうとここにいる皆がサタナエルの指す方向を向いた。
そこにいたのは、星井操ーーどうやら僕らは長く話をし過ぎたようだ。
気がつけば、朝の7時を過ぎていた。
「何しに来た……」
「朝ご飯……作りに来たんだけど……」
「頼んでないよ……」
「私の独断だもん。それより、さ。私のこと、今何の話していたのかな?」
いつから星井がそこに居たのかは分からないが、僕は嘘をつく。
「……夏休みは星井と出掛けるよぉ、て話」
「へぇ……タカタカって嘘が下手だよね」
「……嘘じゃねぇよ」
「嘘よ。最近ずっと変なの知っていたもん。タカタカ、私を守ろうとしてるんだよね?何のことかは分からないけど、何かに巻き込みたくないんだもんね!」
「違う、僕はお前にそんな優しさを持ち寄ってるほど人間出来ていない」
「どうして……どうしてそんな嘘ばかり着くのよ!!!そんなに私のこと嫌いなの?タカタカ、前は笑ってくれてた……私のお弁当、素直じゃないけど美味しそうに食べてくれてた……なのにーー」
泣き崩れる星井ーー僕は……僕は……
「僕はお前なんかーー!!!」
バァアアッッン!!!
僕は叔父に殴られたのではない。
亜熊か?それとも悪魔が?
違ったーー僕を思い切り吹き飛ばし、本棚をめちゃくちゃにしたのは、バイトの明だった。
「あんた……何処から?」
「ま、まさか、こいつも、に、認識を……?」
驚く悪魔と叔父、冷静に天使があるところに気づいた。
『いえ、2階からそのまま来たみたいですね。まさかマンホールみたいに床が開く部屋でしたか。盗み聞きとは、趣味が悪いこと』
吹き飛ばされた僕は軽く骨折をした。馬鹿力だった……右腕がまったく動かなくなった。
「女の子を泣かすなんてサイテーですよ炊樫さん!謝って下さい!」
「…………ごめん」
「うんうん!星井さんもいいですよね?」
「え、えぇ……」
「はぁーい♪仲直り完了♪」
「い、いやぁ……まずバイト、お前がオレに謝れよ」
「はわぁっ!?ご、ごめんなさーい!」
店はめちゃくちゃとなり、同時に朝日がとても眩しく輝きだした。
朝の8時、もうそろそろ登校しないと遅刻するな。




