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女子高生は悪魔or催眠術師?  作者: 名無 無垢
戦闘準備の回ー天使編ー
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天使編01-03

 僕らはテレビで探偵である天空寺湯乃のインタビューを最後まで見届け、結局お客は星井だけで今日のバイトが終わった。


 そして今日もバイトの彼女にまかないを振る舞おうと思っていた。


「シャッター閉めるから先に部屋に行ってろ。飯、食うだろ?」


「はい!」


 返事と同時に飛び散るヨダレ、相変わらず品性だけはなかった。


 僕は長い棒を使い店のシャッターを閉めようとすると、後ろから誰かの気配を感じた。


『こんばんは、高橋さん』


「お前は、天使か」


 振り向くとそこにいたのは、今日屋上で戦い和解を得たばかりで、堕天使に唯一対抗出来る存在である天使その人がいた。


 白い髪色に澄んだ瞳、死んだ人間のような肌色が店から漏れる光で映していた。


「どした?本でも買ってくれるのか?」


『いいえ、私がここに来たのは用件があったからです』


「用件?」


『……星井さんのことで。それと堕天使の攻略について私なりに助言をしようと思いましてね』


 僕は何故か星井というワードに動揺する。


 天使の記憶について話されるのではないかと、不安が過ったからだ。


『まず星井さん、彼女に期待するのは止めました。貴方たちの今日の行動を見ましたが、どうやら星井さんに相当肩入れしてるみたいでしたのでね』 


「見てたのか」


『人間の干渉も天使の仕事ですからね。戦闘の際には星井さんの代わりを用意しようと思います』


「宛があるならそれに越したことはないがな」


『どうも貴方は素直じゃない。星井さんが好きならそう言えばいいじゃないですか』


「何が言いたい?」


『……アダムとイヴの話、ご存知ですか?』


「人類最古の人間だろ?」


『そこじゃない。貴方は愛や恋からどうも遠ざける思考をお持ちのようだ。私が言いたいのは、まさに貴方と星井さんがそうだと言いたいのです。彼女がイヴなら、差詰め貴方の方が(アダム)となる』


「逆だろ?土の僕が何を実らすんだ?」


『……堕天使』


「!?」


『今起きてるこの現状、私が思うのはエデンの園で起きた事件に似ているということ。追放されたアダムとイヴがエバを生む……エバとは、堕天使を指しているようでならない』


「それは昔の話を重ねているだけだろ?それに僕は人間だぞ」


『そう人間……人の認識、見たものを書き換える能力を持つ人間。その力、どこで手に入れました?』


「……知らないな」


『本音でしょうね。もしも、元からその力が貴方自信持っているのなら……貴方が男性唯一の天使だと言うことになりますがね』


「……はっ、バカらしい。つまり僕が……星井の代わりとなる天使だと、そう言っているのか?」


『私は無駄なお喋りは嫌いでね。仮説が新説とやるのは時間の問題ですよ?』


「……」


『本当に星井さんを巻き込みたくないなら、貴方がやるしかないのです。それにも1つ、仮説をより真実味のある話するならば、悪魔を天使とする力のことです』


「絆の力か」


『都合よく悪魔も女性だ。もし悪魔や天使と言った人外者が種となるならば……』


「もういいか?僕はな、お前が思っているほど気が長くないんだ。長話もいいが、こちとらバイト後で腹も空いている」


『……わかりました。ではこの場は離れることにしますよ、高橋さん』





 気がつくと、僕の部屋にはバイトの岸辺明、そして天使がいた。


「高橋さん、お料理上手なんですよ?」


『それは楽しみです。私は本来食べる必要はないのですが、味覚を楽しむ……いわゆる娯楽ですね』


 食べることが娯楽とは、また変わった考えのようだ。


 僕は大きい皿にピーマンや豚肉を痛めた青椒肉絲(ちんじゃあろおす)を盛り付け、あとはご飯とインスタントの味噌汁を用意した。


 まさか、食費がこんなところで増えるとはな。


「はい、いただきます」


「いっだっきまーす」


『天におられるわたしたちの父よ、み名が聖とされますように。み国が来ますように。みこころが天に行われるとおり地にも行われますように。

わたしたちの日ごとの糧を今日きょうもお与えください。わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします。わたしたちを誘惑におちいらせず、悪からお救いください。アーメン』


 真面目か!と言いたくなる僕だが、彼女は一応に天使、仕方がないのだろうな。


 そもそも彼女がここにいるの自体、可笑しな話だろうからな。


『美味しい……これが美味しいという感情』


「美味しいは感情表現じゃないぞ」


『やれやれ高橋さん、やれやれなのですよ』


「語彙が無さすぎだ」


 目を輝かせながらに飯を頬張る天使、そして相変わらず品性の無い食べ方をする明だった。


「旨い旨い!」


「お前はゆっくり食え」


 僕も一口食べてみる――我ながら上出来だった。


『ごちそうさま』


「早っ!あ、皿空!?」


 僕はまだ一口しか食べてないのに……。


 味噌汁をご飯にぶちまけ、そのまますするように食べるしかなかった。


 この二人、某何でも吸い込む掃除機じゃないんだから飯くらいゆっくり食えないのだろうか。


「はぁ……ん?」


 ため息を着き、顔を見上げると身に覚えのない大きなカバンがあった。


 ギチギチと小さく音を立て、今にも荷物が弾けしまいそうだった。


「まさか……」


「もうどうせならいいかなと思いまして……えへへ♪」


「えへへ♪じゃねぇよ!いや、バイト代前倒して軽く渡したよな!?」


「そんな描写はこの小説にはなかったのです!」


「メタいこと言うな!えっ、てかまさか……」


「い、いやいやまだお金残ってますよ?ただ、何処もお家賃が高いし……せっかく汗水垂らしたお金を……ぐすっ……使うのがもったいなくて!」


「いや、泣けないから。汗水垂らすほど忙しくないし、今日だってテレビ見てたからなお前」


『イイハナシダナー』


「うるさい、だまれ!どいつもこいつも!あぁぁああ!」


 僕の精神は崩壊しそうだった。


 でも本心はそこまで怒っている訳ではなく、ただ……これ以上誰かと関わることに対して、少しの不安があったからだった。




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