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女子高生は悪魔or催眠術師?  作者: 名無 無垢
戦闘準備の回
36/49

天界編05-05

 僕らは屋上の水道タンクの裏に隠れて待機していた。


 恐らく天使、または堕天使が現れることを祈って、悪魔の気配ならば釣れるのは天使のが断然可能性があるはずなのだから。


「こ、この気配は……!」


 悪魔が何かの気配を感じた。


 その気配の先は、屋上の出入り口だった。


「既に学園内!?」


「あ、いや……そうじゃないな」


 扉が開く音と共にみんなが凝視すると、そこに現れたのはいつもの顔ぶれの一人だった。


「あれぇ、タカタカ下駄箱まだだから屋上だと思ったのになぁ。まだ帰らないで何してるんだろ?」


「(ほ、星井!あのバカ、まだ帰らないでいたのか!)」


 僕は小声で焦ってしまう。


 このままでは星井を戦いに巻き込む可能性を感じたからだ。


 しかし今下手に水道ポンプから離れるのは得策ではなかった。


 待ち伏せの可能性があるーー悪魔が学園内で気配を出した以上はその可能性を向こうが持つのは当然である。


 姿を隠す力があるのか、それともそれ以上に早いのか、能力は未知だからこそ遠退く。


「(高橋、お前が星井を帰せ。お前は人間だし、無闇に奇襲などしないだろう)」


「(ちっ、仕方ないな)」


 悪魔の提案に僕はその場から静かに顔を除かせ、星井に話しかけた。


「よぉ、まだいたのか」


「それはこっちのセリフ。帰ろうよ、物騒な事件ばかりだし、怖いよぉ」


「何が怖いよぉ、だよ。顔が笑ってる」


「えへへ、いやぁこれに便乗して手繋いで帰れないかなぁて思っただけだよ」


「バカ言うな。先帰れよ、僕もそろそろーー 


 帰えるからーーそう言いかけた時に、何が近くにいる気配を感じ、星井の腕を咄嗟に僕のいるこちらへと引いた。


「っ!」


 アドレラリンで見える風景から星井の下半身から血が吹き出す瞬間が見えた。


 天使の方も手段を選ばなかったようだ。


 どうやら僕らが魔界人と接点があることは調査済み、という訳だった。


 だがこちらも、ただ何もなく姿を出したのではない。


「星井のいる場所は、お前が認知した場所ではない……そこにいたのは偽物だ」


『!?』


「星井自体には認知を変える力は効かないのは気づいていた。だから“僕らが星井を認知していない”ことにしたんだ。分かるか?」


『……』


「ようは僕らが見ていた星井は星井でない。お前が万が一、僕らをエサとして誘き出す可能性があったからな。勘違いした僕らの風景を、お前が勝手に見た幻だったのさ」


「そんなこと、コイツに言うてもわからないだろ。これでようやく捕まえたぞ。キューちゃん!」


「はいはーい♪血塊結界の陣!て名前らしいよ?」


 亜熊の体内から吹き出す血液が薄く、そして深く屋上の全体を張り巡らした。


 亜熊の精神力は吸いとった人間の数と、常に少しずつ貯蓄している容量で決まる。


 そして今結界として出している血は、元々は天使を捕まえるために、さっき抱きついた僕から抜き取った血だった。


「演技ながらに見せないとねぇ、天使相手なら尚更ね!」


『……』


「無口だな。お前の対策など出来ている。高橋、本を出せ!」


「命令はごめんだがな」


 僕は気絶した星井を置き、常に僕の腰に刺してある悪魔との絆から生まれた本を取りだし、魔力として連動させる。


 悪魔は徐々に白い羽を生やし、目の色も青白い瞳へと変わる。これこそ種族の転生。


『……同種族なら、私のが上だ』


「それは、こいつを受けてからいいな!さっき咄嗟に思いついたチート奥義だ!!!高橋との絆を受けるってことはなぁ、私にも認知を変える力があるってことなんだぜぇ!!!」


『!?』


「30000発は喰らいな!」


 懐から取り出しいつしか僕を射ったオートマティックの拳銃を2丁両手で構え、そのまま交互に連続で撃ち放つ悪魔ーー弾に切れなどない。


 悪魔は知っていたのだろうか。


 いや、あの戦闘においてバカな彼女がそんな子とに気付けたのが不思議だった。


 彼女はーー拳銃そのものに認知を変えたようだ。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァアアア!!!蜂の巣だ!!!」


『っうぐ!』


 天使がグラついた。


 どうやら弾にも何か特殊な魔力が込められているのたろうか。


 そんなこと、僕は知ったところでだから催促はしないがな。


「チャンス!」


 天使の姿を見た亜熊が結界を解き、その結界の血液を天使の身体で硬化させた。


 そのまま天使は捕まり、大人しくうなだれた。


「へへ、楽勝ね」


「絆の本……アナドレないな」


「さあ天使よ。大人しく言うことを聞いて貰おうか!高橋の中にいる堕天使を消せ!」


拳銃で天使の顔を押し付ける悪魔、天使は悔しそうに目で訴えていた。


『……そんなことしてみろ。世界が……滅ぶぞ』


「世界が、滅ぶ?」


『堕天使は今も……その人間の中にいるが、それを消すなどと簡単ではない。まず……彼女をこの世に解き放つ必要がある。その意味、わかる、か?』 


「一度外に……」


 つまり堕天使、悪友が再びこの世に現れる。


 出た瞬間、間違いなく我々に勝ち目だとある訳がない。


「しかし……高橋にも寿命があるならな」


『安心しろ。今すぐでなくてもお前らには協力する。まったく、最初からそう言えば攻撃なんかしなかったのに。無駄死になった彼も報われないなぁ』


「……」


『堕天使の降臨は……私の推測なら12月がリミットと見た。どうやら、向こうも向こうで思った以上に回復は遅いようだ』


「秋じゃ、なかったのか?」


『私が近くにいる影響もあるのか、サタンが天使になる力が生まれたからかは分からないが、前より弱まっているようだな。良かったな人間、寿命が伸びたな』


「よくねぇよ。悪友、いや堕天使は!」


『今お前らに出来ることは、今寝ている女……星井だったかな?そいつは天使の種族だからな。どういう経緯かは知らないが、彼女が天使として復活でもすれば、イーブンに戦えるだろうな』


「星井は巻き込みたくないのだがな……」


『天使の私が言うのもなんだが、寝言は寝て言え!としか言えないな』


「……」


『私はこの町にいるから、用がある時は「天使ちゃんマジ可愛い愛してる!」と叫びなさい』


「わかった」


『わかるなよ。天使と叫んでくれ。ではな、人間と天界人ども、人間界の命運は君らに委ねるよ』


 天使は静かに姿を消したままその場を去った。


 思った以上に僕らは天使を探すことを難しく考えすぎていたようだ。


 しかしこれで、悪友への対策も出来る。


 星井、お前の記憶で、世界の命運が変わるんだもんな。


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