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女子高生は悪魔or催眠術師?  作者: 名無 無垢
戦闘準備の回
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天界編05-04

 狭い部屋の中、僕はバイトと一緒の布団で寝ることにはなったが、彼女の寝相の悪さから僕はソファーの上で何とか一夜を過ごした。


 彼女はぐっすりと涎を垂れ流しながら寝ていた。


 とても品性を感じないそんな彼女を起こそうと僕は肩を揺らした。


「起きろ。朝ごはんだぞ」


「ご飯!」


「はっや……」


 ご飯の匂いに誘われるように寝癖も顔も直さず箸に手を伸ばそうとした。


 そんなダラしのない彼女に僕はため息しか出なかった。


「お前なぁ……」


「あっ、すみません。私としたことが!」


「ほっ、気づいてよかった」


「手を合わせてからですもんね♪いただき――」


「じゃないだろ!顔洗え寝癖直せ!ったく、朝から叫ばすなよ」


「叫ばなきゃいいじゃないですかモグモグっ……」


 僕の説教も虚しく彼女は既にご飯を食べていた。


 しかも床にボロボロとご飯をこぼす姿に怒りを通り越して呆れてしまう。


 なるほど、彼女がバイトの面接に落ちてる理由が何となくわかった。


「ごちそうさまでした!」


「はいはい、ごちそうさん。それじゃ着替えて学校に行くぞ」


 僕が制服に着替えようとすると、向こうも同時に僕の貸したジャージを着替えようと上着を脱いでいた。


「お前は向こう!」


 僕はシャワー室に指をさす。


「もう高橋さん、気にしすぎですって」


「お前が気にしなさすぎなんだって……」


 制服を持ち寄りシャワー室で着替えるバイト、僕も直ぐに着替えて簡単なお弁当を2つ用意する。


 何故彼女の分まで作るのか、彼女にはバイトを頑張って貰わないと天使の捜索が出来ないからだ。


 堕天使の復活までに見つけないとならない焦りもあるが、僕は冷静だ。


 相手は腐っても悪友だから--僕が、僕らが負けるはずがないのだから。


「着替えました!」


「よし、行くぞ」


 元気いっぱいの彼女に僕も少しだけ元気をもらう。


 こんな純粋な子もいるのだから、この世はきちんと守らないとな。





 学園前に着くと、僕はカバンに入れた弁当をバイトに渡す。


「いいんですか!」


「あぁ、どうせないのだろ?」


「はぁわわぁ……ここに転校してきてよかったぁ!」


「今日もちゃんとバイト来いよ?」


「はい!」


 元気に走り去る姿を見届けて、僕も下駄箱へと向かおうとすると、後ろから肩にポンっと手を置かれる。


 誰なのかと振り向くと、頬に指が当たる。


「おはよう高橋くん?」


「なんだ亜熊か。おはようさん」


「見てたよぉ今の。なになに、こっそりそういうことしちゃうわけ?」


「そんなんじゃないよ」


「星井が見たら悲しむわよね?」


「なんでアイツが悲しむんだよ。それにあれはただのバイトだよ」


「へぇあんたんとこ、バイトなんか採るんだ」


「まぁな」


「……ふーん」


「何だよ?」


「別にぃ?」


 ニヤニヤと顔を歪ませながら笑う亜熊と僕は校舎へと入る。


 そして校舎に入って直ぐのこと、教室の前がザワザワと人が集まっていた。


 それに何だか血生臭い、まさかとは思った。


 いや、そのまさかが既に起きてしまったのだ――人が、死んでいた。


「……!」


「もう、栄養蓄える範囲がここまで来た、てことかしら?」


「どうゆうことだっ!?」


「昨日のあなたの話からするに、堕天使は卵を産むように増殖してるんなら、本体は何もせずに動かないのは何故かしらね」


「……分身は本体に栄養を送っている、と」


「女王蟻のように、子は王のためにエサを運ぶ……そして生まれるのが秋頃ならば、万全の状態で現れるのが得策でしょ?」


 悪友は徐々に警告しているに違いない。


 そして早くも犠牲者が出てしまった。


「僕の、せいで……」


「何を言ってるのよ。悪いのは堕天使でしょ?」


「でもっ!」


「冷静になりなよ。あんたらしくない」


 目で怒りを訴える亜熊に僕はただ、悔しくて悲しくて、怒りで溢れた。


 これ以上犠牲者が出ることは許されない。


 だが今下手に動くのも得策ではないだろう。


 僕らは現場を無視し、教室へと先に入ると、悪魔が待ち構えていた。


「お前らも見たな?」


「あぁ、見たさ」


「そうか。いい情報を持ってきた。天使の居場所が掴めた」


「なに!?」


 僕らは驚きをあらわになった。


 こんな短期間で天使の居場所を特定することが出来たことには驚きだった。


「天使はここの学生だ。山をかけて一瞬だがな、気配が分かった」


「山をかけた……どこかで待ち構えていたのか?」


「あぁ、お前らが見た現場があるだろ。あれな、私なんだよ」


「はっ!?」


 僕はその言葉を聞いて複雑な気分になった。


 そして亜熊も苦虫を噛むような顔で悪魔を見つめていた。


「どういうこと、なの?」


「天使とあれば悪魔の気配があれば本能的に動くだろうと山をかけた私は、適当な生徒に私の血を巡回させて、気配をおもむろに出すようにエサとして歩かせたのだ。そしたら案の定、生徒は一瞬にして血溜まりになった。姿までは見えなかったがな」


「お前がっ……殺したのかっ!」


 僕は悪魔の服の胸元を掴み、軽く身体を持ち上げたが、直ぐに力は抜いてしまう。


 悪魔の目は悲しみで溢れていた。


 苦肉の策だったのかもしれない。それを思えば、仕方がなかったのだ。


 一人の犠牲で世界が救われるのならば、綺麗ごとなんて、僕らにはなかった。


「そう、それでいい高橋。本当に世界を救いたいのなら、私ら悪魔に魂を売るべきじゃないのだからな。必要なのは方法じゃない。結果、それはお前が一番分かっているのだろ?」


 あの日見た死のビジョンに比べれば、僕らが起こした犠牲は無駄ではない。


 亜熊は僕を軽く抱きしめた。


 辛いさ、あぁ人間の僕からしたらこれほど辛い気持ちになったことは初めてだ。


 だから僕らはこれからも戦うんだ。


 悪魔とも、亜熊ともに一緒に。


「ありがと亜熊、もう大丈夫だ」


「そっ、よかった」


「探すぞ、天使の行方。悪魔、その天使は今どこにいるんだ?」


「今は学園の外だが、恐らく直ぐに現れるだろ。恐らく経過を見に来るだろ?」


 この日、学校は一日閉鎖となった。


 集団催眠に続いて今日の殺人事件とあってか、警察が妙に大きく動いていた。


 当然証拠など現れないだろう。


 僕らは屋上で待機をし、天使が来るのを待つことにした。



 「……この気配は!」



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