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女子高生は悪魔or催眠術師?  作者: 名無 無垢
戦闘準備の回
33/49

天界編05-03

 期末テストまで残り一週間、時間がない中で僕らは図書室で勉強をする。


 丁度悪魔もバイトがないみたいで皆でテーブル席に座り分からない点を集中的に覚えさせた。


 悪魔も焦ってはいたものの、割りと適応力があるためか、苦戦はしないまま過去問を解いていた。


 だが亜熊の方はーー


「(~~~!)」


「(いや、だからね?ここをね、こうして、ここの公式を使って……)」


 星井に教えられてはいるが苦戦しているのが分かった。


 というか、悪魔に催眠術をかけて勉強出来るようにしてもらう、なんて事もありなのかとも思った。


 そんな僕の考えは、今後の亜熊のためにも案を出さないことにした。


「(ここを、こう?)」


「(そう……じゃなくて!!)」


 小声で怒りを出す星井とは裏腹に、僕らの方は勉強は順調に進み、過去問がどんどん終わる。


「ふぅー」


「お疲れさま。悪魔の方は大丈夫そうだな」


 答え合わせをするまでもない。


 悪魔は人間以上に知能はあった。


 それに比べてーー


「(んで、ここは、こう!)」


「(えぇ~!?)」


 こうして亜熊は一日勉強詰めとなり、夜7時まで勉強をした。


 僕も途中から星井と代わり勉強を教えるが、中々頭に入らないようで、この日はあまり進まなかった。





 僕はみんなより先に帰り、店に戻ると忘れかけていたバイトが叔父と話しをしながら仕事をしていた。


 そう、ついに僕がバイトをしなくて済む日がやってきた。


 正直、このままだと時間もお金も録れないと不安だったため、僕としては助かるのだ。


 叔父のバイト料がパチンコの勝ち負けに左右されていたのでは、僕としても困るだけだし、それに今は天使の捜索もしないとならない。


「あ、炊樫さん!」


 バイトがこちらを見て軽く微笑む。


「レジ打ちは教えたから、後は頼んだぞ」


「今日も行くのか?」


「いや、ちょいと親戚に用があるんだ。何でも余命宣告みたいで……ま、うちは年寄りの親戚多いからな。そんな訳でな、しばらくは帰らないかもしれん」


「まじか」


「他の連中も危ないらしいからな。もう若いのはお前の親父とお前くらいだぞ?そんじゃ、店頼んだわ」


 叔父は少し大きめのカバンを持って家を出てしまった。


 となると、叔父が帰って来るまでの学校の平日は店を閉める事になる。


「炊樫さん!よろしくお願いします!」


「あ、あぁ……」


 バイトが可愛らしく敬礼のポーズをとる。


 そしてずっと笑顔を絶さない彼女はまるで天使のようにも思えた。


 だが彼女からは何も感じるものがない。


「それじゃ、新刊の雑誌の品出しでもやろうか。明日から叔父がいないなら前日には出さないと」


「はい!私、頑張ります!」


 とにかく元気いっぱいだった。


 少しだけ僕も元気になりそうな、そんな回りを笑顔にしそうな彼女が何故、こんなところでバイトをするのだろうか。


 僕らはレジ近くにあるビニールの固まりをカッターで切り、その中にある本を取り出した。


「古い本と入れ換えて」


「あ、あの!」


「はは、声が大きいな。どした?」


「古い雑誌、貰えますか?」


「(……なるほど、コンビニの残り物を貰うみたいなやつか)」


 確かにこんな本屋なら渡しても困らないからな。


 古い本は捨てるか店に並べたりするくらいのものだから。


「好きな雑誌でもあるのか?」


「いえいえ!本なら良く燃えますから!」


「……え?」


 僕は耳を疑う言葉を聞いてしまった。


「も、燃える……?」


「私、家がないから野宿なんですよ。火起こすのに紙は必要ですからね」


「お前、まさか……」


「はい、家出少女というやつでして!」


「……」


「どうしました?」


「あ、いや……今日、仕事終わったら残れ」


「えっ?」


 僕は彼女の笑顔が何か違うものなのかと疑ってしまう。


 彼女が転校をして来ていつから家を出たのか、そして貧困の中で生活をして来たのだろうか。


 僕は彼女が可愛そうにしか思えなかった。


 同情というやつだった。


 こうして僕らは閉店くまで仕事をし、彼女を待たせてもらうのだった。

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