天界編04-02
翌日、険悪なムードのままの星井と亜熊が離れた席で不機嫌な表情を浮かべていた。
案の定といえば想定していた通りの絵に、僕は教室に入るのを拒んだ。
それでも入るしかない。
僕が仲裁しないと今後の学園生活に支障を来すのは僕だからだ。
席が近い……遠くに行きたかった。
歯を食い縛るように席に座り、僕は警戒しながら二人が喧嘩するのを待った。
その方が、仲直良く出来る機会を作れそうだからだ。
「おはよう高橋君。みかん食べる?」
亜熊が谷間からみかんを取り出す。
僕は思わず“それ”を見てしまったが、直ぐに目を逸らすーーその目先に星井がいて、僕は若干の冷や汗をかいた。
「おはようタカタカ、バナナ食べる?」
同じく谷間からバナナを取り出した。
それは流行りなのだろうか、僕はまた目を逸らそうとするが、どこに逸らしていいのか分からず、悪魔のいそうな三階の天井を睨んだ。
「(助けて……悪魔!)」
心の声など聞こえるはずもなく、僕は選択されてしまう。
「(みかんか、バナナか。これ、僕の選択次第で……いや、ひどくないかこれ?僕は二人が仲良くなる方法を考えていたのに、なにこれ?僕のせいでどちらか険悪になるに決まってるじゃんか!)」
天秤が頭の上に浮かぶ。
これは僕だけが認知しているものだ。
時間が止まったように思えたその一瞬、亜空間の飲み込まれたような感覚を覚えた。
「え……びな……さい」
遠くから聞こえる女性の声、この感じは新たな魔界人なのか。
いや、だとしたら事前に悪魔が気づいているはずなのに、それはないようだ。
「選びなさい。これは、貴方の運命を左右する試練なのです」
天高く光を帯ながら舞い降りてくる女性。
背中には大きくて白い翼を小さい羽を舞いがら飛び、黒いワンピースを来た金色の髪をしたそれを、僕は天使に見えた。
でも黒い服装から見るに、堕天して来たようにも見えた。
「私の名前は####」
「えっ?」
聞き取ることが出来なかった。
彼女は今、名前を言ったのだろうか。
「高橋炊樫、選ぶのです。魔界の住人を取るか、それとも天使を取るのか」
「天使?お前のことか?」
「いいえ、そこにいるのは紛れもなく、天使ロキ様でございます」
天使ロキ、堕天使の目先にいたのは、紛れもなく星井操であった。
彼女の言うことを鵜呑みには出来ない説明だった。
「星井は、人間だろ?」
「いいえ、彼女は天界の頃の記憶を持たないだけで立派な天使なのです」
「星井が、天使……」
僕の運命はあの日から、変わってしまったのだろうか。
悪友との後、僕の人生は死に進んでいる。
それも紛いもない事実だが、今目の前の選択を強いられている事は、僕の死は近い。
選択をしなければならない。
『星井を選ぶ』
『亜熊を選ぶ』
この2つに1つが正解なのだろうか?




