天界編03-02
僕と悪友はチェス部、クイズ研究部、裁縫部、料理研究部、科学部、パソコン研究部、美術部と次から次へと勝負をしては部の権利書と看板を奪い回る。
心が痛いけど、彼女は望んでいる。
僕は複雑ながら最後の部室へとやって来た。
「麻雀部、か」
麻雀部ーー名前の通りプロ雀師を目指す部活なのだが、実はこの部活は文化系にしては実績を取っている部活だった。
中学の部にしてプロ顔負けの実力で全国でもベスト10に入るくらいだ。
まさかと思うが、僕はこれからその人たちと戦うというのだろうか。
「頼もうぉ!」
「あら、生徒会長さん。ごきげんよう」
そこにいる部長と思われる女子生徒、黒髪に赤いリボンと鋭い狐目、彼女もまた有名人だった。
なんせ生徒会選挙で推薦されていたぐらいだ。
だが部長は断った。
プロ雀師を目指す彼女にとっては時間の無駄だったのだろう。
「部の権利をかけて勝負して」
「……私たちの利益は?」
「うーん、勝ったら私たちを煮るなり焼くなり好きにして良いわよ」
「ふーん。会長さんと、そこの僕をね」
僕は子供扱いのようだーーやれやれ。
その条件に理論はないようで、会長を僕をにやにやと見つめていた。
勝負は受けると、一目で分かるアイコンタクトだった。
「面子はどうするんだ?」
「大丈夫、奥に二人いるわ」
僕はこれからプロ同様の実力者と打つ訳だが、僕も父から麻雀は教わっている。
ただ僕の麻雀は、独学的なものだと自負している。
勝つか負けるかは、やれば分かることだ。
「さ、始めるわよ」
3対1不利な勝負だが、どうやら悪友は参加する気はないようだ。
「半荘一回でいいのか?」
「んな訳ないじゃない。悪いけど、そちらは現金をかけて貰うわ」
「まあ釣り合わない勝負はしないだろうとは思ったが、まさかの違法麻雀かよ」
「お互い様でしょ?点棒の数字そのままにかけて貰うわ。財布の中身見せて?」
僕は財布の中身の6万円を見せた。
お小遣いは人より多いのだ。
そんな僕のお金に悪友は再びニヤニヤした。
「終わったらご飯行こう♪」
「あぁ、勝ったらな。負けたらオケラだからな」
「それしゃ、始めるわよ」
僕に負けはないだろうが、ほんとにこのまま勝っていいのだろうか。
勝てば部長諸とも部は廃部となる。
そんなことに、何の意味があるというのだろうか。
☆
東一局、親は部長からだ。
サイコロを降り山を決め、その山の人がサイコロを降る。
今回は南家に座っていた部員の山から始まった。
「(こちらは3人、それに比べて野郎は1人。泣きまくって早上がりし続ければいいのよ)」
麻雀に置いて私語で相手に牌を教えることが出来ないが、サインと呼ばれるものがある。
手の動きや会話の中に欲しい牌を暗号として伝えることで、欲しい牌を味方に捨てさせるーーこれをサイン、またはローズと呼ぶ。
部長が髪をクルクルと人差し指で数回巻いている。
「(サインだろうな。それくらい、朴にも分かる。ならーー)」
6巡目、部長は二回のチーをした後にテンパイする。
「(ダブ東三色チャンタドラ2で親のハネ満ね)」
部長が不要の牌を捨てるなり、僕は牌を前へ倒す。
つまり、手が揃い上がったのだ。
「ロン!タテチン一通ドラ3、倍満だな」
「なっ!」
そっちが3人なら、僕は3倍卑怯な手を使うまでだ。




