天界編03-01
昔の事だが、僕高橋炊樫にも友達はいた。
いや、悪友と呼ぶに相応しいだろう。
僕は悪友を悪友とそのまま呼び、そして周りもそう呼ぶようになった。
そのお返しなのか、彼女もまた僕の事をタカタカと、今で言うところの星井のように勝手にそう呼ばれていた。
そんな彼女の事を僕は嫌いじゃなかったんだ。
その時までーー確かに僕は彼女が好きだったのに。
僕は彼女にヒドイ事をした。
そして彼女も僕にひどい呪いをかけた。
そんな事を僕は店の留守番しながら思い出すのだった。
☆
地元にいた頃、中学3年生の秋頃のことだった。
僕は誰よりも先に進学先が決まっていた。
推薦が綺麗に収まり、周りがまだ勉強をする中、僕は本を読む時間が増えた。
それが僕にとってどれほど嬉しいことか、優越感に浸りながら本をここ数日間読み続けた。
そんなある日のことだ。
僕の悲劇は既に始まろうとしていた。
昼休み、僕は生徒会室に悪友に呼ばれた。
悪友の見た目は金髪でミニスカートなのだが、こう見えて生徒会長。
いわゆるアイドル的人気で勝ち取ったもので、風紀は乱れている。
それでも許されるのが悪友、もちろん他の生徒には厳しく、周りは清楚でなくてはならない。
そんな彼女に僕は過去告白を受け、それを断ったのが数日前だった。
だから正直会いたくなかった。
それでも卒業くらいは綺麗にお別れしたいとやってきた。
「ねぇ、私のお願い、聞いてもらえるかな?」
僕は彼女が嫌いじゃないんだ。
「付き合う、以外なら」
「……これなら、文化系の部活を廃部にするの」
「は、廃部にする!?」
ただこの、女王様みたいな喋りと態度が嫌いなだけなのだ。
「なんでそんなことを。もう卒業前なのにわざわざ」
「邪魔だから。どうせ大した記録もないんだし、いいじゃん?」
悪鬼、僕は悪友をそう思った。
気の向くまま我がままに、彼女は可愛い姿とは反対のまさに「悪魔」だった。
悪友は部屋を出て僕を連れて来させたのは、将棋部だった。
「頼も~う」
「か、会長!?」
「生徒会長!?なんでここに!?」
完全に厄介者の扱い、一緒にいる僕も辛かった。
だがもっと辛い役目を任されてしまう。
「タカタカ、あんた将棋打てる?」
「まあな」
「じゃあタカタカが勝ったら、ここ廃部ね」
「「「えぇ!!?」」」
部がざわつく。
僕も心がざわつくばかりだった。
「マジでやるのか?」
「勝ってね?負けたら殺すから」
冗談に聞こえないその言葉に、僕は部長と思われる人と戦うことにした。
僕の父親は元棋士師、僕にとって部長を倒すことは直ぐだった。
5回目、僕には勝利が見えてしまった。
「王手、飛車、金取り」
「んっぐ!」
思いの外部長が弱かった。
いや、僕が強すぎたのだろうか。
部室には賞状のようなものがズラリとあるのが見えた。
僕はこれで良かったのだろうか。
「やったぁぁあああ!!!」
悪友に抱き付かれた僕はとても喜べず、静かに席を立った。
「はい廃部!は・い・ぶ!」
「そ、そんな……」
部の権利書を奪い部屋から立ち去った僕ら。
そのまま次の部室へと向かい、部を潰しに進むのだった。




