遊夢編04-04
「うぉりゃぁぁあああ!!!」
悪魔が全力で殴りかかる。
亜熊が華麗に避け、空振りとなった拳は床を弾き飛ばし、破片が辺り一面に飛び散る。
反撃に回し蹴りを顔の横に喰らい、そのまま壁側まで吹き飛ばされ、悪魔は痛みに耐えながら立ち上がる。
「情けない。サタンの片鱗も感じない。あんたはそう、昔から弱いくせに強がる」
「うる、さい……」
「サタンの名前だけで生きてるだけの悪魔擬き。私と一緒だって思われるだけでも、虫酸が走るのよ!!」
顔を上から踏まれ、そのまま何度も地面へと叩きつけられる。
抵抗もできぬまま血反吐を吐き、段々と意識が遠退く。
悪魔は悔しさのあまり、気がつけば涙が出ていた。
このまま何も出来ないのかと、諦めかけていた。
そんな時のこと、扉を開ける大きな物音に亜熊が振り向く。
「あ、あんたは……!」
そこにいたのは星井だった。
悪魔はこの状況を最悪と感じた。
嫌な予感に連動するように、亜熊の顔付きも変わった。
「なんで……なんで意識があるのよっ!?」
学校全員の意識を催眠にかけたはずの亜熊からすれば意外な光景だった。
悪魔もそのことには同情した。
人間であるはずの星井が、何故抵抗できる力を持っているのか。
しかしそんなことよりも、既にやばいと感じたのは、そのことに殺意を増加させていたことだった。
踏んでいた悪魔かと足を退かし、星井の元へと歩く。
その現状に悪魔はダメージの余り、止めることが出来なかった。
「逃げ、逃げるんだっ……!」
「うぅるさい!」
右手から青白い炎の玉を放たれ、このまま痛みを逃がすようにのたうち回る。
悪魔は意識を失い、そのまま寝転んでしまう。
「な、なんなのこれ?」
「そんなことはどうでもいいのよ。あんたが高橋を、高橋と一緒なのがむかつく!それだけよ、今すぐ殺してあげるからさ」
「な、ナメるんじゃないわよ!あんたが何者なのかは知らないけど、私はーー」
啖呵を切り、何かを言い方時には、長い爪が星井の心臓を突き破っていた。
星井がその状況に気づいたのは、気絶する寸前のことだった。
手は震え、自分の胸元を確認する。
「えっ……あっ……」
「うるさいよ、ほんとにもう」
続けて喉と頭を刺され、星井は無抵抗に倒れた。
そこに立っていたのは、亜熊一人だけだった。
「はあ……静かになった」
亜熊はニッコリと笑い、倒れる星井を吊るすように持ち上げ、意識を確認した。
「漏らしてるね、色々と……」
全体を舐め回すように見通す亜熊、そのまま死体を悪魔のいるところへと投げつけた。
その衝撃を受け、悪魔はうっすらと意識を戻す。
「(つ、強い……流石は全校生徒の精力を集めただけのことはある……この場を制するには、高橋から能力を……返してもらわないと)」
もはや動けるだけの力はない。
この場を制するには高橋と合理しか方法はない。
だから悪魔は死体となった星井の血を、音をたてないように吸い上げていた。
亜熊がこちらに気づかれない内にと、緊迫の眼差しを向けながら、ゆっくりと回復をする。
「早く来ないかなぁ、高橋♪」




