遊夢編04-03
悪魔が学校へと向かい数分後のこと、僕は悪魔から奪った能力を解放し、小さく翼を広げながら学校へと向かう。
人間の身体とあってか、スピードは悪魔ほどはないが走るよりは速かった。
しかし今は一刻を争う時、使えるものは使うしかない。
「……あれは?」
学校近くまで距離を縮めたと思えば、ゾンビのようにヨロヨロと男子生徒の群れがこちらに向かっていた。
行き先を塞ぐように狭まる道、僕は持っている本を広げ、悪魔の違う能力を解放させようと目を泳がせる。
「筋力増強、これで上空へ飛ぶか」
封印した本は黒く光を浴び、僕はバネのような感覚を足にいれた。
そのまま全力で飛び上がり、近くの電柱を踏み込み、そのまま滑空するように学校へ身体を傾けた。
「……」
上空から見下ろす限り、学校全員の男子という訳ではないようだ。
おおよそでクラス一つ分の数しかいない。
それに女子生徒の姿が見えない。
まるで世界の終わりのような風景のまま、僕はグラウンドへと着地した。
能力を解除させ、周りを見渡すが誰もいない。
下手に静かなのが気持ち悪かった。
「きゃぁぁあああ!!」
その時、女性の悲鳴が聞こえた。
聞こえてきた先は学校から、それにこの声にはか聞き覚えがある。
「星井?星井ぃ!!」
僕は再び羽を生やそうとしたが、人間の身体ではそう何度も能力を使うことは出来ないようだった。
僕は両足を動かし、学校の中へと向かう。
嫌な予感が頭を過る最中、今度は学校の中から女子生徒の群れが集まり、一部の生徒には手には包丁と金属バット、差し詰め家庭科室と野球部からだろう。
「なっ!」
さらに状況は最悪の展開、さっき逃げてきた男子生徒も学校へと到着し、ハサミ討ちの形となる。
「ど、どうする……!」
万事休す、流石の僕も今回ばかりは白旗なのか。
しかしこのままでは星井が危ない。
あの悪魔の様子も見当たらない。
「……はぁぁあああ……」
大きく息を吐き、上着を脱ぎ捨てる。
これは決意の表明、戦うことへの。
「人間死ぬときは死ぬからな。だったら、僕は僕らしくもなく星井のために死んでやるよ」




