遊夢編04-02
学校へ真っ先に着いた悪魔は登校する生徒を上空から眺めていた。
いつものように正門を抜けて進む生徒達には、共通して可笑しい点があった。
それはとても単純明快なものだった。
「……男子生徒がいない?」
そしてその違和感に女子生徒が気付いていない。まるで集団催眠にあったように学校へと入っていく。
「もしや!」
悪魔は学校本館よりも違う箇所に目を見つけた。
人がたくさんはいる学校以外の建物、それは体育館しかなかった。
恐らく、既に男子生徒は既に中にいるはずだった。
屋根付近にあるガラス張りの窓から中を覗く、思った通りの光景に驚愕する。
「男ばかりを餌にする悪魔なんて、あいつしかいないじゃないの!」
悪魔は力を解放し、両腕をおぞましい黒い肌へと変色させ、顔に赤い線を帯びさせる。
「くわぁ!」
悪魔は慌てるように力ずくでガラスを突き破り中へと入った。
そのまま地面へと着地すると、そこから見えた山のような塊、目の前にあるのは紛れもなく人間、それらが積み重なっていた。
「や、止めてくれぇっ!」
奥から声が聞こえる。
そこには担任と思える男、そして悪魔と同じく羽を生やしている女子生徒がいた。
「あなた、セクハラ紛いなことばかりしてるんでしょ?さぞ精力もお強いんでしょうね……」
「ば、化け物!」
「……この私が化け物?……どう見ても美少女だろうがっ!」
悪魔の目の前で女子生徒が教師の顔を粉砕した。
噴き出す血の噴水を浴びるように飲んでいた。
「あぁ、最・高♪」
「相変わらず悪趣味ね、キューちゃん」
悪魔が距離を積め、その見慣れた光景に悪魔は冷静にその姿を見ていた。
「やっと会えたわね。役立たずのサタンさん?」
顔を振り向くと、正気の沙汰ではない顔付きで悪魔を睨んだ。
今にも白目になりそうな瞳孔、その目付きに悪魔は呆れるように答えた。
「黙れ雑種。インキュバスにもサキュバスにもやれない中途半端が私の事を言う資格はないのよ」
「……てか何のよう?あんたが遅いから私から始めちゃったんだけどさ、どうこの魔力!これだけの男の精力吸えば世界征服も楽じゃん!?」
自慢気に溢れんばかりの魔力を放出させる。
大量に吸い上げた精力はサタンの娘である悪魔よりも格段に上だった。
それに今の悪魔は半分ほどの力しかない。
「私は世界征服などしない」
「……あっ?」
悟るように小さく呟いた。
「私は人間に仮がある。だからさ、私は人間側に付いて魔界を復讐するのよ」
「高橋炊柏……だろ?」
「わかったのね」
「あれはダメよ。だって私の好みだもの!世界を制したら私、プロポーズしちゃうんだから!」
「なら、私は彼のために死ぬしかないかな?」
悪魔は今持っている力を全て解放した。
一回り大きく翼を広げ、身体の筋肉を増幅させ、顔の赤い線は全体へと伸びていく。
「へぇ、サタンの割には少し期待外れかな?」
「あんたは、これで十分なのよ!」




