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お父さんのパンツと私の下着、分けて洗ってよね

東屋巻です。

・・・・・


……筑波山を分け見まほしき御心はありながら、端山の繁りまであながちに思ひ入らむも、いと人聞き軽々しうかたはらいたかるべきほどなれば、思し憚りて、御消息をだにえ伝へさせたまはず……


・・・・・


年頃の女の子にとって、父親というのは得てして疎ましいものだ。そんなの、誰にとっても、私・橘ゆかりにとっても同じことだった。絵に描いたような話だけれど、父親の着ていた服は本当に臭くてたまらなかったし、一挙手一投足に腹が立った。


だけど、この家の場合、そんな思春期のワガママとは少し事情は違うようだった。


「……ど田舎……!」

散々歩かされて私が辿り着いたのは、ど田舎としか表現しようのないど田舎だった。

「ど田舎ではありません。常陸です。」

もう何度言われたかわからない訂正を、またしてもマロ眉にされる。はいはい、常陸ね。常陸。要するに茨城県あたりのことらしい。

現代ーー今まで私がいた時代に比べたら、そんなものどこもかしこも「ど田舎」どころか「焼け野原」「最果ての地」くらいが適当な勢いなのだけれど。それにしたってこの「常陸」は本当になにもなかった。


ああ、自分の家に帰りたい。

おそらくは『源氏物語』宇治十帖と思われる世界にやって来てからというもの、私は気が休まる暇もない。これは夢だから、目が覚めたら元通り!と思いながら毎晩眠るのに、一向に覚める気配はないまま……。


私は一体どうなっちゃうのよ~!


……なんてお決まりの台詞を脳内再生したところで、私はまだ常陸にいるわけで、あーあ、せめてイケメン貴公子でも迎えにきてくれないかしら。


「浮舟さん。縁談ですよ。」

義理の父・常陸介の家でボーッと過ごしていると、母上が声を掛けてきた。

縁談。浮舟にとっての縁談といえば!お迎え来ちゃう感じですか?!

「薫さん?!」

「バッ……!あなた何言ってるの!そんな訳ないでしょう!身の程を知りなさい!」

あれっ。怒られた。どうやら、薫様とのお話がスタートするのはもう少しあとのことみたい。母上は、声を潜めながら続けた。

「……確かに貴女は、他の娘たちに比べて器量よしだけれど……。」

そして、隣の部屋にいる私の異父母きょうだいたちをちらりと見遣った。


私……というか浮舟の本当の父親は、薫の最愛の人・大君(姉)とその妹で匂宮の妻である中の君(妹)。私はその二人と異母姉妹にあたる。お母さんが違うのだ。

私の実の母上は、常陸介っていうオジサンと再婚した。常陸介っていうのは、茨城県庁の人ってことで、なにかの役職らしい。

そして、今私が母上と住む常陸介の家には、「お父さんの前の奥さんとの子」と「お母さんの再婚相手との子ども」が私以外にたくさんいるってわけ。

しかも、この再婚相手の常陸介というのが厄介で……。


ドタドタドタドタ!

大きな地鳴りがお屋敷に響く。来たようだ。

私の義理の父親、常陸介。

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