彼と1つの布団の中で〜ドッキドキのアピールタイム〜
昼間をなんとかやり過ごしてようやく今日も夜が来た。
平安の夜は、暗い。現代の田舎より、暗い。
その代わり、月も星もそのぶん明るく輝いて見えている気がする。
女子高生をしている時には、夜空なんてほとんど気にしたことがなかったのに、今は月の様子を見るのが毎日の日課になった。
この時代の人たちは、星には関心がないみたいで、私が「流れ星!」だの「夏の大三角!」だの騒いでも、「星がどうかしたのか、騒がしい。」とあしらわれてしまう。そりゃあ、月のほうが大きくて目立つけど、他の国でも他の時代でも、星だって人気あるのよ?
わかんないなぁ、平安の価値観。私は霜だの露だののほうが理解できないよ。ちょろっと植物に付いてるだけなのに、すぐ和歌の中に入れて詠んですぐ泣くじゃん。一生に流す涙の量は決まっているんだから、あんまり泣くと早死にするよ。
ギシ……ギシ……。
そうこう考えを巡らせていると、廊下が軋む音が聞こえてきた。
まさか、薫様が来てくれたのかしら!
来るなら来るで、昼間から来てくれたら良かったのに。まぁ、いっか。早くも「気になる彼を振り向かせる10のヒケツ」を試すチャンス到来ね。結局三つしか思い出せなかったけれど!
話し声がしたあと、隣の部屋の明かりがふっと消される。どうやら薫様が指示したようだ。
息を潜めていると、軋み音は徐々にこちらへ近づいて、私の部屋の前へ。
隠れんぼなんかでもそうだけれど、こっそり様子を窺いながら隠れるってどうしてこんなにワクワクするのかしら。ここにいるのは相手にはわかっているのに、少しずつ相手が近づいてくるのを待っているのは、なんだか小さな頃を思い出させた。
もはや軋みではなく、衣擦れの音と足音に変わったその人の気配は、私の前で止まる。ふわっと広がるいい匂いが、私を包み込んだ。ああ、素敵な匂い。
でも、いつもの薫様の香りとは少し違っているような……?なにか変えたのかしら。まぁ、私はどちらも好きだけれど。
匂いの主は、私の眠る布団の中にもぞもぞと入ってくる。よし、使うぞ!モテテク!




