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あなたは私を抱きながら私ではない女を思い、私は全てを知っていながら身を任す

話が違うよ!

安心して話してていいんじゃないの?!

部屋に勝手に入ってきたよ?!


「そんなに怯えないで。」

隣にそっと寄り添う薫様。


なにこの展開!女房たち今頃大歓喜だよ!絶対あの人たちこっそり様子見てるし、そもそもこの家隙間しかないから全部筒抜けだよ!


勝手に固く緊張する身体。緊張のせいなのか、手足がうまく動かず、逃げることもできない。

薫ルート薫ルート薫ルート薫ルート薫ルートに乗るぞ薫ルート薫ルート薫ルート薫ルート薫ルート薫ルート薫ルートに乗った方が浮舟は幸せになれるだから落ち着け私……!


薫様は、そんな私の頬に触れる。掌から優しさが伝わってくる。


そう、たしかに優しさは伝わる。……でも。

もっともっと、私に流れ込んでくるものがあった。


薫様は囁く。

「貴女のお姿をちらりと拝見したその時から、ずっとお慕い申し上げておりました……。」

掌から、瞳から、言葉から、優しさから、薫様を構成する全てのモノから感じ取れる。


違う。この人が見ているのは、私ではない。


「本編」を知ってるとか、そういう次元ではない。知らずとも、私は……浮舟は、薫様の心の所在なさを痛いほど感じるに違いない。それほどまでに、薫様は「今」を見ていなかった。


「浮舟」の向こう側の、大君に、薫様は語りかけている。今目の前にいる私ではない。


「こんなにも心が惹かれてやまないのは、全て前世からの宿縁によるものでしょう……私たちは、結ばれる運命にあったのです。」


薫様は、大君と結ばれる運命にあったのかもしれない。でもそれはもう、一生叶わない「運命」だ。「結ばれない運命」を、二人は選んだのだ。


一生叶わないんだよ。

私は、大君じゃ、ないんだよ。


教えてあげたい気もする。

教えるまでもない気もする。

教えたからなんだ?とも、思う。


私の頬を撫でる掌は震えていた。

「僕の愛しい人……。」

涙の混じる声。


薫様は、私にそっとキスをした。そうして、ゆっくりと私の身体を寝かせ、着物を一枚一枚丁寧に脱がせていく。


その所作を、なんと言い表したらよいのだろう。優しく、とは違う。丁寧、とも違う。まるでツクリモノを取り扱っているような。お人形遊びをしているような。そんな仕草。

緊張しているのか、加減がわからないのか、ぎこちない動きで、確かめるように、私の全身をくまなく触る。


抵抗できなかった。嫌だとか、やめてとか、そういう気持ちも起こらなかった。ただただ、空虚な気持ちで、抜け殻のような状態になってしまっていた。


私は黙ってそこに横たわり、ただただ、薫様に抱かれていた。


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