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大事な用件のときにふざけたスタンプだけ送られてくると腹が立つ


「姫、お客様でございます」

弁の尼が、私のところへやって来て告げる。

「え、私直接出なきゃだめなやつ?」

「姫に直接お会いしたいと……。」

「えー、まじかー。」


「まじかー。」とか言っても、平安時代では「謎の異国の言葉」なので通じない。ということに気づき、普通に使う私。平安生活にも馴染んできたな、我ながら。


なんで客に対して「まじかー。」だなんて言うかというと。顔を見せるのも声を聞かせることも滅多ないない「お姫様」は、お客の対応なんて滅多にしないからだ。


客が来たところで、大抵の場合は私が対応しなくていいのは、この時代のいいところかもしれない。

取るに足らない客なんかのときは、女房が全部対応してくれる。直接話をする必要もない。なにか言いたいときには、女房に「これ伝えて!」って言うと言ってくれる。

平安のコミュニケーションツール・和歌だって、女房たちが代わりに詠んでくれるから楽ちんだ。


和歌って、今の時代だとなにかなぁって考えてたんだけれど(なにしろ暇だからね)。

私が思うのは、メッセージアプリの中の「スタンプ」。

テンション上がったり、下がったり、とにかく「感情を伝えたい!」って思ったらポンッとスタンプを送ると一発じゃない。

で、友達がスタンプ送って来たら、まぁコメント返すこともあるけど、私なんかはスタンプを送り返すことのほうが多い。そっちのほうが、同じテンションだよって伝わるかなぁと思うから。


これが、「和歌の贈答」と通じるところがあると思うんだよね。自分の気持ちとか、その時の場にあったスタンプを即座に送れるとドヤッ!ってなる。私だけかな……?

あれと同じで、この時代の人はみんな普通に和歌スキルっていう「スタンプ」を持っていて、それがうまく使える人もいるし、下手くそな人もいるわけ。


これ、個人的にはかーなーりいい例えだと思うんだけど、なにしろ平安時代でこの話をしても誰にも伝わらない。現代に帰ってから、岩崎ちゃんあたりにでも聞いてみるしかないなぁ。


おっと、とにかくそんなわけで、私は和歌も詠むことなく、お客の相手もたいしてせず、平安の世を生きてきたわけなのだけれど。ありがとう、「深窓の令嬢」制度よ。

なのに、なんで今回こんな夜更けの客の相手を私がしなくちゃならないの。眠いんだけど。


「客というのは、どなた?」

私は聞いた。直接会うくらいなのだから、よっぽどの用事が、よっぽどの人物か……。


「薫様でございます。」

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