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義理のお兄さんとイケナイことをしたい私って、不埒でいやらしい女ですか?

気付けば、匂宮様のことばかりを考えていた。


この部屋で偶然匂宮様に出会ったあの日のことばかりが、私の心を締め付ける。声も、言葉も、掌も、唇も、ついさっきまでここにあったかのように鮮明に思い出すことができて。またあんな風に触れられたい……。


わー!ばかばかばかばか!


頭の中に駆け巡る嫌らしい妄想たちよ、しーずーまーれー!

あれは「綺麗なヤリチン」だよ?!何でわざわざ女好きってわかってる男と関係をもたないといけないの!いや待てそもそも、「ヤリチン」とか以前にあの人は異母とはいえお姉さんである中の君の旦那様!姉の!旦那!義理の兄さん!義兄さん!つまり、「綺麗な義兄さん」……ってこれじゃあただの褒め言葉!


と、に、か、く!

えっちなことはダメ!義理の兄さんで女好きは、ダメ!

そんなことが許されるわけない!そもそも最初は浮舟の三角関係に終止符を打とうとしてたのよ?!もっと触られたいだなんて!ましてや、その先もだなんて、そんなの、ダメッ!

匂宮ルートはなし!倫理的になし!薫様と生きていく!そうする!


でも。

私の心の奥に、あの甘えた声音が蘇る。

でも、たまに少し、お話をするくらいなら、いいよね?義理とお兄さんなんだし、……それくらいはいいよね……?

また、いつか会えるかしら。「前世からの運命なら」、と彼は言っていたけれど……。ううん、ここは匂宮の家なのだ。会えないわけがない。

そして、次会うときには、きちんと名乗ろう。私の名前は浮舟です、と。


…が、しかし。

事態はそんな簡単には進まなかった。



「引っ越します。」



「……え?」

「引っ越しますッ!」

「え、……な、なんでっ?!」

「なんでもです。」

母はきっぱりとこう言って聞かなかった。

「こんな不埒な家にいつまでも置いてはおけません……ぼろ家ではありますが、小さな邸があります。そちらへ引っ越します。いいですね。まったく、せーっかく、薫様からの求婚があったばかりというのに、浮舟に傷をつけられたのではたまりませんわ……!」


ふ、不埒な……。

言うまでもない。匂宮様と私との間に何があったかを、母は聞いたのだ。

ぼろ家かぁ。いや、それよりも。ここを離れてしまうと、匂宮様にはもう会えない。「薫ルート」真っしぐら、ってわけか。

でも、そっちのがいいんだろうな、とも思う。「私」にとっても、浮舟にとっても……。


二条院を離れる寂しさを胸の奥に燻らせる。

これでいいのだ。

そう言い聞かせている自分を隅に追いやりながら、追いやっている自分から目を背けながら。


私は、「五条」というところにあるぼろ家へと転居した。


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