冴えない男のなんの進歩もない自嘲自虐を延々と聞かされ続ける全ての女に幸あれ
「あー、もうほんと好き。超好き。どうしたらいいの?なんでこんなに好きなのかなぁ?この気持ちどこへぶつけたら良いと思う?毎日毎日本当につらくて、頭がどうにかなっちゃいそうだよ。あーあ、あのとき、中の君を匂宮に渡すんじゃなかったな!……なーんてね、冗談冗談☆しっかし今や君も一児の母、匂宮もお父さんだもんなぁ!時の流れは残酷だよね!でもさ、やっぱり僕の中の時間は、宇治のあの時で止まっちゃってる……そんな気がするんだ。大君しか、僕の妻にはありえないってね。はは、おかしいだろう?でもそう思わずにはいられないんだよ。大君こそが僕の永遠の……って、中の君!聞いてるの?!」
「えっ?も……もちろん聞いているわ~。薫様の、お姉様への想いを……。お姉様も薫様にそこまで熱く愛されて、きっと心から嬉しかったに違いないです。」
「そうだよね、僕もそう思う……きっと僕たち運命きょ」
あああああああああああああああああ
は-やーくー、帰らないかなぁー。
もう何分?何時間?中の君は薫がどれくらい大君のことが好きか、そしてそんな自分は狂ってるだろ?ははっ(自嘲)の流れを聞かされていた。
言うまでもなく、中の君はもう飽き飽きしていた。姉の大君が亡くなってからというもの、顔を合わせればこの話が延々続くのだ。
若君がお腹の中にいるときには、襲われそうにもなった。「大君の妹」だから。
どうしてこんなにも、もうすでに亡くなった大君に対して情熱を傾けることができるのだろう。……きっと、結ばれなかったことで、気持ちが増幅されてしまったのだ。二度とは更新されない思い出になってしまったことで、薫の中の大君の像は輝きを増しているように思えた。
だからといって、それを妹の私に向けられ続けるのも困ったもの。話は聞き飽きたし、また宮様に勘ぐられるようなことがあってもいけないし……。
……!
そうだわ……。
「薫様、秘密のお話があるのです。」
中の君は、声を潜めて薫に言った。
「実は、今このお屋敷にいるのです。……お姉様の――大君の、そっくりさんが」




