同刻
アルゴが水を汲みに行っていたとき。
子ども達の何人かはすでに目を覚ましていた。
普段は起きたらアルゴがすぐ近くにいるのだが、今日は違った。
アルゴがいない。
「アルゴ兄ちゃん……?」
子ども達は寝ぼけ眼でアルゴを探し始めた。
「アルゴ兄ちゃーん!」
「…………」
どんなに大きな声で呼んでも返事がない。
「ううん……」
子ども達の声でルーテは目を覚ました。
「何……? 一体どうしたの……」
「アルゴ兄ちゃんがいないんだ!」
「アルゴが……?」
ルーテはがばっと起き上がり、子ども達と一緒に探し始めた。
施設の隅々まで探した。机の下や洋服を入れる棚の中、トイレも探した。
しかし、アルゴはいなかった。
「どこに行ったんだろう……」
すると、いつも迷子になる男の子が言った。
「もしかしたらさ、クロンさんのところじゃない?」
「あー!」
ルーテと子ども達はクロンの部屋へ走った。
クロンがベッドで手袋を編んでいると、廊下からドタドタといくつもの足音が聞こえ、ドアが開いた。
ルーテと子ども達が部屋になだれ込んでくる。
「クロンさん!」
「なあに? そんなに慌ててどうしたの」
ルーテと子ども達は何かを探すように、部屋を見回した。
そして、ため息をつく。
「ここにもいない……」
「誰か迷子にでもなったの?」
クロンは聞いた。
「アルゴがいないんです。クロンさん何か知りませんか?」
ルーテが困った様子で言った。
「まあ、アルゴが……?」
クロンがそう言った瞬間、森がある方角から爆音と閃光が。
部屋が光で包まれ、その後に烈風が遅れてやってきた。
紅い光だった。
「アルゴ……?」
クロンの胸に、懐古の想いが広がった。




