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私の好きな人

作者: 真雪






今日、私の好きな人が結婚する。

だから私は彼から離れるために家を出て、遠くで一人暮らしをする。



彼に出会ったのは私が小学6年生の時だ。

彼は中学3年生で私とは3歳差だった。

一目惚れとは稲妻が走ったかのような衝撃があると聞くが、まさにそれだった。

彼を見た瞬間、今まで感じたことの無い程胸がドキドキして目が離せなかったのだ。

それが私の初恋だった。

彼の事を知るほど、優しくしてもらうほど、私は彼のことが好きになった。

だがそれと同時に苦しくなっていった。

苦しくなったのは、彼が私を妹とのようにしか見てくれないと分かっていたからだ。

仕方ないと頭では理解していたが、心までは理解できなかった。


彼に彼女ができたと知ったときは、死んでしまいたいほど悲しくて、殺してしまいたいほど彼の彼女が羨ましかった。

一日中泣いても目は腫れず、これなら泣いた事に誰も気がつかないだろうと思った時に限って、彼だけが気づいてしまうのだ。

そのせいで私は馬鹿みたいにまた彼を好きになってしまう。

彼が彼女と別れても、いつ新しい彼女ができてしまうのかと、苦しくなる事が多かった。

何度も諦めようと思った。

でもすぐ近くにいるのに諦められるわけが無い。

どうして好きになったのだろうと何度も何度も考えた。

答えなど出てくる訳もない。

私は彼でなくては駄目だったのだ。

いっそ他の人のものになる前に泣いて告白でもしてしまおうか、優しい彼なら付き合ってくれるかもしれないなどと馬鹿みたいな事を考えた夜もあった。

そんなことをしていたら、彼と私の関係はもう元には戻らないだろう。

馬鹿みたいな期待をする気持ちを持ちつつも、それをきちんと分かっていた私は、彼との関係を壊してまで気持ちを伝える勇気なんて持ち合わせていなかった。



今日結婚する彼女を彼が紹介したときも、辛かった。

それでも笑ってみせた。

絶対に彼に心が透けないように。

でも簡単に彼を譲るなんて無理だから、彼にはこんなお荷物な女の子がいるんだよっていっぱいアピールした。

それでも彼女は嫌な顔一つせず、もはや彼よりも私を甘やかしているのではという程、我儘ばがりの私に優しかった。

そんな彼女といるうちに、アピール全てが馬鹿馬鹿しくなり、そしてそんな事をしている自分が嫌になってやめてしまった。

それに今まで見たこともないほど幸せそうに笑う彼を見たら、認めるしかなかったのだ。


そして彼は彼女にプロポーズをし、私の初恋には遂に終止符を打たれてしまった。

でも彼女となら彼は絶対幸せになるのだと思ったから、悲しくはなかった。

いや、それは強がりかもしれない。

でも心から2人を祝福できた、これだけは本当だ。



ふと時計を見るとバスが来る時間が迫っていることに気づき、私は荷物を手にする。











































「好きだったよ……お兄ちゃん」


そうして私は、彼と10年も過ごした家を出た。







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