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RISE OF HEROES  作者: BRAVE
ACT1:NEW BEGINNING
2/6

Chapter 1: First Encounter (初めての出会い)

アメリカンヒーローはアメリカの映画を見てから夢中になりました


そういった作品に影響されて考えた小説です

文才はないけど温かい目で読んでくれると嬉しいです

『大変だー! 強盗だー!』

『命が惜しけりゃさっさと金庫を開けてこい!』

『大変です! 強盗達が銀行を襲ってきました! 警察を呼んでも間に合いません!』

『よし、逃げるぞ。お前も一緒に来い!』

『きゃああ助けてー!』


 ある5歳ぐらいの少年は、お爺さんと一緒にテレビを見ていた。

 2人が見ている番組は、銀行強盗が一般市民を人質に取りながら脅迫しているシーンである。そしてたった今、強盗は少年を人質に取ったのだ。


「……ねえ、ヒーローはまだなの?」

「これからいいところだよ」


『ハッハッハ、皆さんもう安心です! 私が来ました!』

『貴様は……レッドハート!』


「来たー!!」


 銀行が強盗によって騒ぎになっている中、赤いスーツとヒーローマスクを着けた筋骨隆々な男が現れた。そしてトレードマークとして、スーツの胸の部分には角張ったハートの様なシンボルがあった。


『来るな! 撃つぞ!』

『やめたまえ。強盗するならまだマシも人を殺すと一生、人生を棒に振ることになるぞ』

『うるせえ、ここのパンピーの命が惜しけりゃ俺の要求に応えろ!』

『た、助けて……』

『仕方ない……君達の要求は何だね?』


 レッドハートは戦いの構えに入っていたが、銀行強盗が子供を人質に取っているのを見ると、彼は両腕を下ろした。


「えー? 戦わないのー?」

「まあ、下手に動くとあの子が危ないからね」


 折角登場したヒーローが戦わずに強盗の言いなりになっているのを見てガッカリした少年であった。

 5歳の子供からすればヒーローが現れて、戦わずに悪人の要求を受け入れるシーンはつまらないだろう。

 そんな彼にお爺さんはフォローを入れた。


「ほらミツキ、ここからがいいところだよ」



 ◇



「おはよう」


 茶髪で青い眼をした少年は着替えてから下へ降りていった。

 彼の名はミツキ・コウサカ。14歳。グランゲイズ・セントラル中学校に通う日系のアメリカ人である。

 ミツキが降りてくると、食卓にはトーストと目玉焼き、そして焼いたハムが置いてあった。そして茶髪の大人の女性とミツキに似た黒髪の少年が座っていた。


「おはよう、ミツキ」

「おはよう、母さん、アラタ」

「兄さん、おはよう」


 ミツキが挨拶すると、テーブルの2人も挨拶を返した。

 ミツキに似た少年はアラタ・コウサカ。新と書いて「あらた」と読む。ミツキの1個下の弟である。

 そしてミツキの茶髪の大人の女性はマリー・コウサカ、ミツキとアラタの母親なのだ。


「父さんは?」

「もう仕事に行ったわ。ミツキも早く食べなさい」

「はーい! いただきます」


 ミツキは座ると、母が用意した朝食を自分の皿に盛り始めた。こうして家族の朝食が始まった。


「うん、美味い!」

「……ねえ、昨日の夜この街でまた火事があったらしいわよ」

「え? また火事があったの? 知らなかった……」

「そういえば消防車のサイレンが鳴ってたよ。家の周辺じゃなかったから見に行ってなかったけど」

「あ、アラタは起きてたんだ」


 朝食の最中、母親が近所で聞いた昨日起こった事件について喋り始めた。

 最近セントラル区では色々な家に火事があった。調査によれば火災の原因に当たる物が焼け跡で見つかる事はなかった為、放火によるものだと思われた。そして昨夜もまた、放火魔の仕業とに思われる事件が起こったのだ。

 あの夜、ミツキと母はサイレンの音に反応しないぐらい寝入ってたが、アラタはサイレンの音によって少し起こされていた。


「それで、家の中の人はどうなったの?」

「助かったらしいわよ」

「へえ、助かったんだ」

「また噂の『悪魔』が助けに来たらしいわよ」

「え? 本当!?」

「そうなんだ……」


 家族内で昨日起こった火事の事で話し合っていた中、ミツキは『悪魔』という言葉に反応した。


「うわぁ、見たかったなぁ……」

「駄目よ、火事の現場なんて近づくものじゃないわ!」

「あはは、兄さん相変わらずだなぁ」


 その『悪魔』を見る機会を逃して残念そうだったミツキに母親は関わるものではないと注意し、弟は苦笑した。


「じゃあ、行ってきます、母さん!」

「行ってくるよ!」


 ミツキとアラタは朝食を終えると家を出ていった。今日は月曜日、学校へ行く日なので、2人はバス停へ歩いていった。


「はあ、その人見たかったな……」

「ははは、残念だったね」

「いや、だって街に起こる危機から人を救ってるじゃないか。ヒーローだよ。ていうか『悪魔』呼ばわりは失礼だろ」


 2人は歩きながら昨日の事件に出てきた『悪魔』の話をしていた。

 大都市グランゲイズ。アメリカの中で最も大きな都市で全米有数の経済都市である。しかし犯罪が多い街でもある。

 特に最近は能力者(メタヒューマン)による犯罪が目立つようになり、警察も手を焼く様になっていた。

 その時代に謎の女が訪れたのである。全てのではないが、この街に事件が起こる度にヒーローマスクを着けた謎の女性が現れ、一般市民を事件から救っている。そして彼女の招待は不明であり、事件以外では彼女の姿を見る事はない。

 彼女の一番の特徴は、背中に大きな翼が生えていることである。翼が蝙蝠の様な形をしていたからか、誰かが面白みで『She(シー) is(イズ) a() DEVIL(デビル)!! (彼女は悪魔だ!!)』とネットに書き込んだ影響で彼女を『悪魔』と呼ぶ人が出るようになった。人を助けているのに悪魔と呼ぶのは正に皮肉である。

 人を救う姿勢から彼女を英雄視している者がいるが、本気で文字通り『悪魔』と批判している者もいる。


「あ、ケビン!」

「お、ミツキとアラタ! おはよう!」

「おはよう!」


 2人はバス停にたどり着くと金髪の白人が他の生徒と共に待っており、ミツキとアラタは挨拶をした。彼はミツキと同い年のの友達、ケビンである。ミツキとはよくテレビゲームで遊ぶ仲である。


「よ、ミツキ! 週末どうだった?」

「良かったよ。ゲームしてた、クエスト」

「ゾンビハンター? 俺が進めた奴じゃねえか」

「うん。買ってみたけど面白かったよ。ただフォルスの森の事だけどさ……」

「ああ、あそこは……」

「あ、バスが来た」


 ミツキが友達とテレビゲームについて語り始めた。その間、アラタはスクールバスが来たのを伝えた。



 ◇



 ミツキ達はバスに乗ってグランゲイズ・セントラル・アカデミーにたどり着いた。既に多くのバスが到着しており、生徒達が学校へ向かっていた。


「よしっと……」

「それじゃあアラタ、また放課後でね」

「うん、また後で」

「あ、彼女が来たぞ」

「え?」


 ミツキは弟と別れると、ケビンの方へと向いた。すると、女の子の声が聞こえた。


「おはよう、2人共!」

「よ、ウェンディ!」

「あ……おはよう……」


 ミツキとケビンの前に茶髪のポニーテールに、赤い眼鏡をかけた白人の少女が現れた。彼女はウェンディ、ミツキとケビンの友達である。


「…………」

「ん? ミツキー? どうしたー?」

「おーい、顔赤くなってるぞー」

「…………」


 この時、ミツキはウェンディを見て、言葉が出なくなっていた。

 何も変わらない只の日常だが、彼からの視点では、ウェンディからはキラキラとしたオーラが見えており、ミツキの心臓はドキドキとしていた。そしてこの時の彼は他の事は何も聞こえず、ボーっとしている状態になる。


「――ミツキー?」

「ほらミツキ、早くしないと授業遅れるよ!」

「はっ! ちょっと待って!」


 ケビンとウェンディの掛け声で我に返ったミツキは、授業に遅れないように二人の後を追った。これがいつもの日常である。



 ◇



 しばらくして授業が終わり、昼食の時間となっていた。そしてミツキとケビンは食堂にいた。

 ミツキはいつも2人と同じ席でランチを食べている。ウェンディは今、購買の列にまだ並んでおり、先にケビンと一緒に食べていた。


「それでさ、スペース・ウォーズの映画、今週の金曜日で公開されるんだよね?」

「ああ、アレか……正直、前作が評判悪かったし俺はレンタル待とうと思っている」

「うん、確かに前作は評判悪かったけど……見るに越したことはないかと思ってさ……」

「まあ、土曜日なら別に予定ないから一緒に見てもいいけどさ、他の映画ならどうだ?」

「じゃあ、他の映画でもいいよ。土曜日の何時がいいかな?」


 ミツキは今週に公開されるSF映画『スペース・ウォーズシリーズ』の最新作を一緒に見に行かないかとケビンに聞いていた。

 ケビンはその映画を見るのは乗り気ではなかったが、一緒に映画を見に行く事自体には賛成だった。

 それでミツキとケビンは二人で何の映画を見ようか話し始めた。


「お待たせ~!」

「よ、ウェンディ!」

「あ……ウェンディ……」


 話し合っている内にウェンディが席に来た。ケビンの反応と違い、ミツキは少し緊張したような口調で返した。


「二人とも何の話してたの?」

「ああ、今週の週末にどっか一緒に映画見ないかって話してたんだよ」

「あ、うん……」

「映画? 良いじゃん! 私も行っていい?」

「……え?」

「それ、いいな!」

「……え?」

「良いじゃねえか! 三人で行こうぜ!」

「行こう!」

「あ、そうだね。皆で行こう」


 ミツキがウェンディが一緒に来ることに驚きつつも3人の会話が進んだ。そしてその結果、今週の土曜日は3人で映画を見に行くことになった。因みにケビンの提案でスパイ映画『エージェント777』にする事にした。



 ◇



―6:37p.m.―



「……」


 時は過ぎ、土曜日を迎えた。そしてミツキは一番乗りにバス停の前で待っていた。ここでケビンとウェンディと一緒にバスで映画館へ行く予定だ。

 集まる時間より30分ぐらい早いのだが、それでも早めに着いたミツキであった。

 実を言うと、土曜日当日にケビンからメッセージが来ていた。


『ごめん、ミツキ。

 急用ができて来れなくなった。

 映画は二人で観てくれ。』


 ――というわけで、ミツキはウェンディと話し合い、二人きりで映画を観に行くことになったのだ。


「早すぎたかな……」


 早目に着いたミツキは暇つぶしにスマホを弄り始めた。

 しばらくしてからミツキはスマホの中の画像を見つめていた。その画像は、引き出しの中に隠してあるカードの画像である。


「やっぱ格好いいなぁ……」

「ミーツキ!」

「! あ、ウェンディ!」


 バス停に着いてから10分後、ウェンディが来た。ミツキはスマホを閉じ、ウェンディに挨拶した。


「ごめん、待った?」

「いや、大丈夫。待ってないよ……」

「そっか。映画楽しみだね」

「そうだね。ケビンが来れなくて残念だったね……」

「仕方ないよね、二人で行けばいいじゃん」

「そうだね……あ、バスが来た」


 ミツキとウェンディはバスに乗った。バスに乗ってる最中、ミツキの携帯にケビンからのメッセージが届いた。


『行けなくて悪いな。ウェンディとのデート楽しんで来いよ』


「もう……」


 メッセージに驚いたミツキはメッセージを送り返した。


It’s(イッツ) not(ノート) a() date(デート). (デートじゃないよ)』



 ◇



「じゃあ、観ようか」

「……ねえ、ミツキ。これにしない?」

「ん?」


 映画館に辿り着いた二人。ミツキは話し合っていたスパイ映画を観ようとしていたが、ウェンディが違う映画にしないかと提案してきた。

 ウェンディが指したのはラブロマンス映画『FLOWERS(フラワーズ)』である。


「へ、へえ、この映画か……」

「うん、面白いって友達から聞いたんだよ! ケビンもいないし」

「ロマンチックな映画か……」


 スパイ映画を提案していたケビンがいなくなったので、ウェンディの言う様に違う映画を観てもいいだろう、この映画はまた別の機会でケビンと一緒に観に行ってもいいだろう、と思ってきた。

 この映画はミツキも予告だけは見たぐらいで、ネットの評価でも8割ぐらい良い評価だという事は知っている。


「いいね! 映画にしよう!」

「『FLOWERS』のチケット1枚お願いします!」

「僕にも1枚お願いします!」


 ミツキはラブロマンスよりもアクションやSF系が好きだが、今回はウェンディが観たい映画にした。

 2人はチケットを買い、映画館へと入っていった。この時の彼は学校の時の様にドキドキしていた。



 ◇



「嫌ああぁ……」

「いいから脱げよ……」


 日が暮れ、グランゲイズは夜を迎えた。そんな中、路地裏では一人の女性が銃を持った中年の男に脅されていた。

 彼女が脱がなければ命はない、脅されている彼女は男の言いなりになるしかなく、服を脱いでいく。


「ううぅ……」

「へへへ、いい体してるじゃねえか……」


 男が脱いでいく女の体を眺めながら君悪い笑い声を出していく。


「それがお前の選択肢か」

「!?」


 そんな時、男も背後から声がした。男は驚いて後ろへ振り向くと、そこには黒いスーツとフルフェイスのマスクを着けた何者かがいた。

 その姿はまるでフィクションに存在する物、現代風に描かれた忍者のような姿をしている。

 その忍者のマスクからは目の部分から赤い光が滲んでいた。


「誰だお前は……ぐおっ? でっ!?」


 中年男はその何者かに動揺し、銃口を向けた。しかし、一瞬で忍者に銃を握った手を掴まれ、手刀が手首に当たり、銃を落とした。

 忍者は男を離し、その様子を見ている。


「て、てめえ……」


 男は怒ってポケットからナイフを取り出し、忍者に殴りかかる。

 しかし、忍者は平然と軽く横へと躱し、男の両肩を掴み、膝で男の腹に打撃を与えた。


「ぐほぉ……」

「ひぇっ……」


 忍者は打撃で悶えた所に間髪入れず、男の首に手刀を送った。男は失神して倒れた。

 男に踊らされていた女は今度は忍者に驚いていた。

 悪漢から助けて貰ったとはいえ、忍者の眼差しは女の恐怖感を唆っていく。


「……もう大丈夫だ」

「えっ……?」

「見張っておくから早く服を着たまえ。それからタクシーを呼ぶといい」

「は、はい……」


 忍者の眼光は薄っすらと消えていた。そして彼は煙幕を撒き、煙幕が消えると忍者はその場にいなくなっていた。

 とりあえず彼女は服を着て、タクシーを呼んだ。





「おおぉ……」

「ほおぉ……」


 映画の展開に見惚れている二人。ラブロマンスに興味のないミツキだったが、ウェンディと語り合うことになるかもしれないので念入りに観ていた。

 そして観ていく内に映画が終わった。


「いやあ、面白かったね」

「うん。こういうのあまり観ないけど中々良かったよ。特に……」


 遅くなったので、観終えた二人は映画について語りながらバス停へと歩いていった。

 そしてこの時のバス停の周辺には、二人以外誰もおらず、二人はベンチで座って語り合っていた。

 ケビンが来られなかったのは残念であったが、ミツキは内心ではここにケビンが居なかったことを感謝していた。

 この時はミツキにとって楽しいひと時であった、そう思っていた時である。


「よお、お二人さあぁん?」

「「!!?」」


 いきなり二人の背後から声がし、後ろを見ると鼻と耳ににピアスを着けて髪の一部を金髪に染めた妙な男がいた。


「だ、誰……?」

「ゴクッ……」


 目つきが怖いというか可笑しいというか、とにかく怪しい男にしか見えない。そう思った二人はベンチから離れ、距離を取った。


「な、何ですかいきなり……?」

「いやあ、ただ二人とも可愛いなあってね……お兄ちゃんと遊ぼうよ?」

「ち、近寄らないでください! 警察を呼びますよ!」

「逃げよう、ウェンディ!」

「きゃっ!?」


 ここにいたら何をされるか知りたいものではない。ミツキはこの場を離れようとウェンディの腕を掴む。

 そしてウェンディも警察に通報しようと携帯電話を手に持ったが、その瞬間、背後からより図体がでかい男が彼女の上を掴んだ。

 そしてまた別の男がもう1人現れ、ミツキを掴んで二人を引き離す。二人は三人の変質者に狙われてしまったのだ。


「へへへ……」

「離してえぇ……」

「ウェンディ!」

「やめてえぇ! 私達子供だよ~! 」

「いいね、俺のタイプだよ~♪」

「うっ……ううぅ……」


 大男はウェンディの体を見ると、欲情したような表情を浮かべながらウェンディの頬を触っていく。ウェンディと大男の力の差は明らかで、ウェンディは離れる事ができない。

 この男達は間違いなく児童に性的嗜好を持つ者、即ちペドフィリアに違いない。

 それを理解したウェンディはこれから何をされるのか想像がついてしまい、怖くて泣くしかなかった。


「やめろ、彼女から離せ!!」

「ほら、お前も一緒だよ~」

「ぼ、僕は男なんだけど……」

「いいね、ボーイ♪ 君もタイプだよおぉ……へへへ」

「ひえっ……」


 どうやらこのペドフィリア達は男もいける口らしい。このままではウェンディだけでなくミツキも危ない。ミツキも彼女と同じく怖くなってきた。


「や、やめろ……」



Fight(ファイト) For(フォー) Justice(ジャスティス)!! (正義の為に戦え!)―



 そんな時、ミツキは自分が眺めていたカードに書かれている事を思い出した。



―怖がっている場合じゃない! 怖いのはウェンディも一緒だ! 男なら女の子を守らなくちゃ駄目だ!―



「――やめろ!」


 この時のミツキは『ウェンディを守るべきだ』という使命感が彼を動かした。

 ミツキは何とか体に力を入れて、彼を掴んでいた男から離れる事ができた。


「……はいやっ!!」

「ぐふっ!?」


 ミツキは正拳の構えに入り、そして思い切り背後の男を殴った!その正拳はフォームがよく、顔面へと綺麗に直撃した。


「はあ……はあ……空手習っててよかった……」


 実は、ミツキは小学5年生の頃から弟と一緒に毎週空手教室に通っていたのだ。

 その為、彼は空手の腕はそれなりにあり、力強くパンチすることができたのだ。


「いてえぇ……」

「ミツキ!」

「よ、よし、いける……彼女を離せ!」


 喧嘩した事はないが、幸い空手教室での経験がこの状況で活きるとは思わなかっただろう。

 空手の達人でなくとも格闘技の基礎は極めている。それに対して相手は格闘技を習った経験は無さそうだ、少なくともミツキはそう判断した。

 つまりいける、ミツキは不良より――


「痛い目に遭いたくなぐあっ!?」


 ――強くなかった。金髪の男がバットで喋っていたミツキの背中を殴り、彼は倒れた。

 現実は甘くなかった、流石に中学生が空手が出来るぐらいでは凶器を持った大人に勝てるわけなかった。


「ミ、ミツキーー!!」

「あ、あぁ……痛い……」

「何調子乗ってんの? 女の子の前で格好つけたかったの? 可愛いねぇ……」

「んぎぎ……」


 怖くて泣くしか出来なかったウェンディも、ミツキを見ると彼の身を心配せずにいられなかった。

 抵抗してきたミツキを気に入ったのか、リーダー格らしき金髪のペドはバットによる痛みで悶絶するミツキに合わせてしゃがんで喋りかけてくる。


「いってえな……」


 殴られた方の男は立ち上がるとバットを拾った。


「いいけど頭はやんなよ?」

「わかってるよ……」

「ううっ……(このままじゃウェンディも……こうなったら……)」


 相手は仕返ししようとバットを持ち上げた。

 このままではまた殴られてしまう。そして自分も彼女も酷い目に遭う。

 自分だけならまだマシも、彼女が酷い目に遭うのを見たくない。

 そう思ったミツキは奥の手を使うかのように右手が薄っすらと輝き始めた。


「……」

「何だその目は?」


 ペド達はミツキが何をしようとするか気づいてないらしく、ミツキはその好機を利用し、体を転がして反撃に入ろうとする。


「がふっ!!」

「えっ?」

「な、何だ!?」


 その一瞬の出来事だった。バットを持っていた男が殴り飛ばされ、倒れた。今起こった事ははミツキによるものではなく、金髪の男が何が起こったのかと振り向くと、そこには黒い何者かがいた。

 黒いフルフェイスのマスクとスーツを着ており、その姿は創作物に出るような現代風の忍者を思わせる。

 そしてその忍者マスクからは悪党に裁きを下すかの様に赤い眼差しが放たれていた。


「ひ、ひいいぃ!」

「……に、忍者?」

「だ、誰だ……」


 突如現れた謎の男、これがミツキの初めての出会いである。

アメリカにおける豆知識


【スクールバス】

アメリカにおける学校への移動用のバス。

日本でも登校にバスを乗る者もいるが、アメリカはそれ以上に広く、都市近郊から遠く離れた地域の生徒の運行を目的とした車両。

大きさや外観が異なったりするが、連邦統一安全規格にの決まりで車両は黄色で統一されている。

乗降扱い中は、運転席上部のライトが点滅、車両側面から『STOP』と表記された赤い八角形のサインボードが出て、子どもがむやみにバスの前を横切らないよう遮断バーが前方に飛び出す。

この時、後続車はたとえ片側に何車線あっても追い越しを行なってはならない。

また中央分離帯がない場合は、対向車も停止しなければならないことになっている。

このため、アメリカで自動車を運転する場合は、特にスクールバスに対する注意が必要となる。



【学校制度】

日本とアメリカの学校制度は異なっています。

日本の学校制度は全国的にほぼ以下の様に固定されている。


小学校⇒6年制

中学校⇒3年制

高校⇒3年制



アメリカの学校制度は基本的に以下の通りだが、州によって異なるところもある。


小学校⇒5年制

中学校⇒3年制

高校⇒4年制



因みにアメリカでは小学〇年生や中学〇年生とは言わず、小学校~高校に当たる年間で呼ばれる。

つまり14歳のミツキはアメリカでは8年生(中学3年生)になる。

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