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一二三(ひふみ)の壺のはなし  作者: ぽすしち


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本物は一本きり


「 ああ、ここの梅のはなしをもらしたのはあのお殿様じゃあねエよ。 いいかい、こういうはなしってのは、まあ、 ―― もれてあつまるところがあるんだよ。だから、梅干しがいくらで買い取られているのかもこっちはわかってる。 さあ、どうするね?その倍はらおうっていうんだ。文句はなかろう?」


 男は土間に箱をおろし、勝手にはなしをすすめようとしている。



「 ―― なんのことだか、わかりませぬ。たしかにこの村はたくさん梅を植えて、梅干しをつくってそとへ売っておりますが、《天女の梅》などとは、 」



「 《天女の梅》の実は芽をださねえ。 あんたのじいさんか、ひいじいさんあたりかい?挿し木をしてふやすとは、かしこいねエ。 だが、本物の天女の梅は一本きりだ。実のかずも決まってるいるし、挿し木した木からとれる梅の実とは、味も効能もまったくちがうはずだ」



「 どうしてそれを・・・ 」



「 いっただろう?こういうはなしがあつまるところがあって、そこのはなしを、あたしはひろってこられるんだよ。そこで薬になりそうなものがあるとわかれば、あしをのばしてさがしだすのさ。 たいていのものは、うまいぐあいに『いい薬』ってのになるからねエ。 あたしはねエ、そういう薬の注文を金持ちから受けて、あつらえて売っている《薬売り》なんでございますよ。 ―― そうそう、この《天女の梅》の実も、ずいぶんと人気がありましてねエ。だから倍の値もつく。いや、なんならさらに色をつけてもかまわねえな。 いくら天女のはえさせた梅の木だっていっても、毎年実をつけてちゃあ、そろそろ寿命だろうよ。今年の実はすこし少なくなってなかったかい?だとしたら、梅の木もそろそろ終わりのはずさ 」



「 おわり!?そ、そんな・・・ 」



 《薬売り》はうれしそうにわらった。

「 だからねエ、もうお殿様のほうを『おそれながら』と断って、のこりをぜんぶこっちへ売ってくれねえかネ。あんただって、毎日梅干しをかかえて城にとどけるなんて、めんどうでしょうがねえだろお?」





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