ひい ふう みい
数を数える男を年寄りの女がのぞき、はなすうちにおもいだす。。。。というはなし。
『人魚のはなし:のあやしい《薬売り》と、『ネコマタを 』の婆さんがでてきます。。。。。
一、
ひい ふう みい
数はそこまでしか数えられない。
ひい ふう みい
もう一度かぞえる。
ひい ふう みい
そこまでで、また、はじめにもどる。
ひい ふう
「 だれぞ おるんか 」
しわがれた声がして、すこし光がさしこんだ。
「 ―― あ・・・ 」
ひさしく数えることのほか、声を出していない。それに、ここをのぞくようなものなどいままでいなかった。
「 ・・・か、かぞえて・・・おりまする・・・」
「 かぞえて? あけていいかの? 」
「 あいや、その、・・・・どうかご勘弁を・・・・ 」
すべてあけられてしまったら、この姿をさらさなければならなくなる。
「 ふん。なにをかぞえてなさる? 」
しわがれたその声は、どうやらとしをとった女のようだ。
「 その・・・。梅を・・・梅の実をかぞえております・・・ 」
「 そうだとおもうたわ。なぜ、数えなならん? 」
なぜ?
はて、なぜだったか・・・・。
「 ・・・あ。 ああ、そうだ、そうじゃった。 その、梅を、梅干しにして、いちにち三粒を献上せねばならぬので・・・ 」
「 ほお、どこぞの殿様にか? 」
「 とのさま・・・あの殿様は・・・さて、どこのお殿様だったか・・・ともかく、お殿様がどこぞでうちの梅のはなしをお耳にされて、わざわざおつかいのかたがみえられましての、うちでつくった梅干しを、日に三粒所望されたいと・・・ 」




