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ジゴク ト ゼツボウ

今日も今日とて、人生に疲れた社畜がため息から始まる朝。29歳、童貞、彼女なし。


そんな俺のささやかな楽しみは、通勤中にソシャゲのログインボーナスを掻き集めることだ。

実家の心配性な母からの連絡に頭を悩ませつつ、いつも通り満員電車に揺られるはずだった。


だが、その日を境に、俺の日常はカオスへと変貌する。


突如背中を押され、線路へと突き落とされた俺を待っていたのは、まさかの異世界転生と、自らを『神』と名乗るご都合主義な存在だった。しかも与えられた能力は、世界そのものを書き換える『因果律の操作』というチート級。『世界を楽しめ』と一方的に言い放つ神。

静かに暮らしたいという俺の願いは叶うのか? それとも、チート能力を押し付けられ、怪異が跋扈する和風異世界で奔走する運命なのか?


これは、元陰キャ童貞が、不本意ながらも異世界で因果を紡ぎ、

怪異を解決しながら、新たな人生と居場所を見つけていく物語――。


ただし、童貞は継続中かもしれない。

 白い光に包まれた直後、紡の視界は一変した。土煙が舞い、血と鉄錆の臭いが鼻腔を突き刺す。

地面に足が着いた瞬間、彼の目は信じられない光景を捉えた。死体……。


 無数の死体が、そこかしこに転がっていた。それは、つい数分前まで生きていたであろう人間たちの成れの果てだ。

管理局の隊服をまとった者もいれば、私服姿の者もいる。身体は無残に引き裂かれ、抉られ、原型を留めていないものも少なくない。

ある者は内臓をぶちまけ、ある者は首が不自然な方向に曲がり、またある者は身体の一部を欠損して横たわっていた。

辺りには血だまりが広がり、肉片が散乱している。まるで、巨大な肉食獣が暴れ回った後のようだ。

アスファルトはひび割れ、近くの建物は焼け焦げ、鉄骨がむき出しになっている。


 そこは、人間が築き上げた文明の痕跡が、暴力的に破壊され尽くした後の姿だった。


「う、ぅお……っ」

紡は、胃の奥からこみ上げてくる吐き気を抑えきれず、その場に膝をついた。喉がひくつき、胃液が逆流する。

昨夜の夕食が、酸っぱい臭いを伴って口から溢れ出した。視界が歪み、世界が赤く染まっていくように感じた。


 地獄絵図。


 まさにその言葉が相応しい光景だった。彼は、怪異と戦う覚悟を決めたつもりだったが、これは彼が想像していたどんなものよりも悍ましく、おぞましい現実だった。


「杜野さん! 大丈夫ですか!?」

烏賀陽の声が耳に届くが、紡は応えることができない。ただ、目の前の惨状にただただ嘔吐することしかできなかった。

彼の震える手足は、もう自分の意思では動かせそうになかった。


 その時、一際巨大な影が、彼の視界の端をよぎった。顔を上げると、そこには先日彼が戦った禍獣よりも、はるかに巨大で禍々しい怪異が立っていた。

しかし、その姿は彼が想像していたような「獣」ではなかった。それは、人の形をしていた。


 その怪異は、身長が三メートルを超えようかという巨躯を持ちながらも、驚くほど人間のような流麗なシルエットをしていた。

しかし、その「人間らしさ」が、紡の恐怖を一層煽る。全身を覆うのは、漆黒の、しかしどこか滑らかな皮膚。

まるで深海魚の鱗のように微かに光を反射するそれは、見る者に異様な生命力を感じさせる。


 顔は、人の形をしているはずなのに、のっぺりとしていて、目鼻の器官が一切ない。

その代わり、頭部の中心には、まるで血のような赤黒い光を放つ一つ目と、そこから下へと不自然に裂けた異常なまでに大きな口が、ニタニタと嗤っていた。

その一つ目は、常に周囲をゆっくりと見回しており、その視線が向けられるたび、空気の温度が数度下がるような錯覚を覚えた。


 腕は異常なまでに長く、指は鋭い爪を持つ。しかし、その爪さえも、まるで人間が手入れをしたかのように整えられ、まるで装飾品のようだ。

それは、暴力のための道具というよりは、美意識に基づいて造られたかのような、禍々しい美しさを宿していた。

足は、重心が低く、地面に吸い付くように立っている。まるで、いつでも獲物に向かって跳躍できるような、肉食獣のそれだった。


 その姿は、人間と怪異の不気味な融合体であり、紡の脳裏に「恐怖」という二文字を強く刻み込んだ。

そして、その怪異の前に立っていたのは、一人の男、石凝室長だった。



 しかし、その姿はあまりにも痛々しかった。彼の左腕は肘から先が完全に失われ、血が噴き出している。

隊服はズタズタに引き裂かれ、全身に深い傷を負い、その顔は土と血で汚れていた。

彼は満身創痍だが、しかしその瞳にはまだ、強靭な意志の光が宿っていた。地面には、彼のものと思われる、肉塊と化した左腕が転がっている。


「ハァハァ……。なぜ……、こんな事をする……、答えろ!」

石凝の問いに、怪異はまるで人間のように、しかしどこか歪んだ、乾いた笑い声を上げた。

その声は、男性の声のようでありながら、どこか機械的で感情が抜け落ちているように聞こえる。


「なぜ、だと? ふふ、愚かなる人間よ。お前たちが我らを滅ぼそうとすることと、まったく同じだろう? この一帯の人間を根絶やしにすることは」

その言葉に、紡は背筋に冷たいものを感じた。怪異は、自分たちの虐殺を、まるで遊びとでも言うように「同義」と表現したのだ。そして、人間を「おもちゃ」と見なしているのか?

その冷酷な一つ目が、一瞬紡を射抜くように感じられ、彼は反射的に身を震わせた。


「お前たち人間は、我らを根絶やしにしようと躍起になっている。ならば、我らがお前たちを根絶やしにするのも、至極当然の道理ではないか?」

怪異の言葉は、その恐るべき知性を誇示するかのように、淀みなく紡がれた。

その声音には、憎しみも悪意も微塵も感じられない。ただ、淡々とした事実の羅列が、かえって恐ろしさを際立たせていた。


 その間にも、複数の調査員が怪異に果敢に立ち向かっていった。

彼らは、石凝の苦戦を見て、自分たちが加勢しなければならないと直感したのだろう。


「やめろ!退がれ! お前たちでは……!」

石凝が叫ぶが、彼の声は届かない。調査員たちは、それぞれが持つ能力を発動させ、怪異へと突進していく。

しかし、次の瞬間、怪異の巨大な爪が一閃した。それは、あまりにも速く、紡の目には残像しか映らなかった。

調査員たちは瞬く間に切り裂かれ、血しぶきが舞い、彼らの身体は軽々と宙を舞い、無残な塊となって地面に落ちる。一瞬の出来事だった。


 微かな希望の光は、あっという間に消え去った。


 怪異は、その光景を満足げに見下ろし、陽気に言葉を吐きながら、動けない石凝にとどめを刺すべく、ゆっくりと歩み寄る。

「さて、そこの壊れた人間よ。そろそろ終わりにしてやろう。もう少し、遊んでやりたかったが……」


 その言葉と同時に、怪異が石凝に向けて腕を振り上げた、その瞬間だった。

怪異の動きがピタリと止まった。まるで透明な壁にぶつかったかのように、その巨体がわずかに後退する。


 怪異の動きが止まった瞬間を見逃さず、烏賀陽が腰から音叉を取り出し、それを一閃させた。

刹那、耳をつんざくような音の衝撃が、一帯を吹き荒れた。

空間が歪み、怪異の体が大きく吹き飛ばされる。地面を数メートル滑り、周囲の瓦礫に激突してようやく動きを止めた。


 紡がハッと顔を上げると、彼のすぐ後ろに、朔月が立っていた。彼女の白い隊服は、周囲の惨状とは裏腹に、全く汚れていない。

その瞳には、強い決意の光が宿っていた。その手には複雑な装飾が施された、銀色の杖のようなものが握られている。


「朔月さん!?」


「ツムくん! 烏賀陽さん! 無事ですか!? 緊急事態の知らせを聞いて、急ぎ参りました!」

朔月の言葉は、凛としていた。彼女は、すでに能力を発動させているようだった。

その杖で、彼女が能力を使い、怪異の動きを止めたようだった。


 朔月の声を聞くやいなや、烏賀陽は即座に石凝の元へ駆け寄った。彼の顔には、安堵と同時に、新たな覚悟が浮かんでいる。


「室長! 大丈夫ですか!? 今、手当を……!」

烏賀陽の腕が石凝の身体を支える。石凝の顔色は蒼白で、意識を保っているのが奇跡に思えるほどだ。

左腕の断面からは血が滴り落ち、隊服のそこかしこが黒く変色している。素人目に見ても分かるくらいに

 満身創痍の石凝だが、その目はまだ死んでいなかった。

燃え盛る炎のような光が、その瞳の奥で揺らめいていた。


「烏賀陽、遅いぞ! お前は私と共に奴を食い止めろ! 朔月!君は俺たちの戦闘補助を頼む! そして杜野!お前は隙を見て、怪異を消失させろ!」

石凝は、途切れ途切れの声で指示を出した。その言葉には、一切の迷いがなかった。

彼の声は、身体の損傷とは裏腹に、鋭い刃のように紡の胸に突き刺さった。


「そして、他の調査員は、近隣住民の避難を最優先だ! これ以上、被害を出すわけにはいかない!」

満身創痍であるにもかかわらず、石凝は烏賀陽の肩を借りて、自ら戦線に復帰しようと、その場に踏ん張った。

彼の背中からは、管理局の室長としての圧倒的な責任感と、部下や市民を守るという覚悟が、重くのしかかっているように感じられた。


 その姿は、まるで折れてもなお、立ち上がろうとする古木のようだった。

烏賀陽と朔月も、即座に行動に移ろうとする。烏賀陽は石凝の脇を固め、朔月は杖を構え、いつでも動きを止めれるよう構えをとった。


 しかし、紡だけは、その凄惨な現場にまだ慣れることができず、指示を理解はするものの、身体が鉛のように重い。

彼の頭の中は、パニックと恐怖で満たされていた。目の前の死体、血の臭い、そして怪異の圧倒的な力の前に、彼の全身は震えが止まらない。

脳裏に浮かぶのは、故郷の平和な日常と、今目の前で繰り広げられている悪夢とのあまりのギャップだった。


 それぞれが石凝の指示を遂行するために動き出した、その刹那だった。

先ほど吹き飛ばしたはずの怪異が、まるで空間を捻じ曲げたかのように、石凝と烏賀陽の目の前に、瞬間移動した。

まるで、これまでの一連の攻撃で体力を使ったなどというそぶりは微塵もない。


「無駄な抵抗はするな……、まずはその腕のない奴から、壊す」

怪異の冷たい言葉が、場に響き渡る。その瞬間、石凝の頭を、怪異の巨大な爪が掴んだ。

まるでリンゴを潰すかのように、一瞬にして頭部を握り潰した。血しぶきが遥か高く舞い上がり、石凝の身体は、まるで糸の切れた人形のように、ゆっくりと地面に崩れ落ちる。


「室長!?」

烏賀陽の悲痛な叫びが響く。


 烏賀陽は即座に音叉を発動させようとするが、それよりも早く、怪異のもう片方の腕が彼に振り下ろされた。

その爪は、精密機械のように正確に、左肩から心臓にかけて抉られるように食い込み、烏賀陽の身体は一瞬で血に染まる。

彼は、ほとんど声も上げることなく、その場に倒れ込んだ。その口からは、最後に血の塊がごぼりと溢れ、瞳からは微かな光が失われていくのが見えた。


 あまりにも唐突に訪れた、凄惨な状況だった。

管理局のトップであり、あの強靭な石凝室長が。そして、冷静沈着な烏賀陽が。

あれほど強かった二人が、瞬く間に、まるで粘土細工のように殺されてしまった。


 紡は、あまりの出来事に、ただ驚愕することしかできなかった。

彼の思考は停止し、身体は硬直したまま、呼吸すら忘れて、その場に立ち尽くしていた。


 怪異の巨大な瞳が、呆然と立ち尽くす紡を捉えた。

「さて、これで残りはお前だけか。ふむ……。最後まで残ったお前は、どうにも面白くなさそうだな。」


 次に自分が殺される。その確信が、紡の脳裏を駆け巡る。命の恐怖が、彼の全身を支配した。

彼は、ただただ声にならない悲鳴を上げながら、無我夢中で逃げ出した。足がもつれ、何度も転びそうになる。


 しかし、怪異は躊躇することなく、紡を殺そうと追ってくる。その巨大な足音が、地面を揺らしながら迫ってくる。

だが、その巨体は、どこか動きが鈍いことに気づいた。地面には、怪異の足元から、淡い光を放つ文様が広がっている。

その文様は、怪異の動きを縛り付けるかのように、脈動していた。


「ツムくん! 今は逃げて!!」

朔月の声が聞こえた。彼女は、まだ倒れていなかった。石凝と烏賀陽を殺された後も、彼女は意識を保ち、必死の形相で、杖を怪異に向けている。


 杖の先から、微かに光の粒子が放たれ、地面に描かれた文様がさらに強く輝く。

彼女が能力を使って、怪異の動きを鈍らせ、紡を守ろうとしてくれていたのだ。その顔には、極度の集中と、紡への強い想いが浮かんでいた。


 だが、怪異は朔月の能力に縛られているのを気にする様子もなく、まるで僅かな抵抗など意に介さないとばかりに、動きを止めることはなかった。

「ほぅ、お前が動きを鈍くさせていたのか、人間らしく小賢しい事をしてくるな」


 その一つ目が、朔月を獲物として捉え、冷酷に輝いた。じりじりと朔月に近づいていく。


「朔月さん、逃げろ!!」

紡の叫び声が、その場に虚しく響く。しかし、彼の声が届くより早く、怪異の巨大な腕が、朔月の身体を無慈悲に貫いた。


ブチッと、肉が引き裂かれる悍ましい音が響いた。


 朔月の胸を貫いた怪異の腕が、さらに奥へと深く食い込む。彼女の身体は一瞬で硬直し、ゆっくりと、まるでスローモーションのように傾いた。

白い隊服が瞬く間に鮮血に染まり、地面に赤い水たまりを作り始める。


 その瞳は、最期まで紡から離れず、そこに宿るのは、恐怖を超えた、恋情にも似た深い悲しみと、

紡に『生きて……。どうか、生きて……!』と、魂の底から懇願するような絶望的な輝きだった。


 彼女の唇が、最期の言葉を紡ごうと微かに動いたが、喉から溢れた血沫がそれを阻む。

息絶えるその瞬間、彼女の顔から生命の光が完全に失せ、ガクリと膝を折って、血溜まりの中へ倒れ伏した。



 目の前で、次々と周囲の人が怪異に殺されていく。石凝室長、烏賀陽。そして朔月。紡は、そのあまりにも残酷な光景に、膝から崩れ落ちた。

地面に顔を伏せ、声もなく涙を流す。彼の周りには、もう誰もいない。残されたのは、血と死の匂い、そして怪異の存在だけだった。


 その間にも、怪異は残された調査員たちを次々と屠っていた。すでに息絶えた身体を、無意味に切り刻んでいる。

血の臭いが濃くなり、肉の焼けるような異臭が鼻を刺激する。絶望的なまでに、生命の温かさが失われていくのを感じる。


 やがて、全ての殺戮を終えた怪異が、紡の前に静かに近づいてくる。その巨大な足音が、地面に転がる瓦礫を踏み砕きながら、ゆっくりと迫る。


「ふむ。残りがお前しか残っていないな。これでは、すぐに飽きてしまう。つまらないな」

怪異は、飽き飽きしたような声で紡を見下ろした。その一つの目には、もはや興味すら感じられない。


 抵抗する気力も、逃げる気力も、もう残っていなかった。紡は、ただただ死を待つしかなかった。

彼の脳裏には、走馬灯のように、平和だった転生前の世界が蘇る。家族の顔、友人との他愛もない会話……。

もう、それら全てが、手の届かない場所へと消えていく。


 その時だった。


「ワンワンッ!!」

力強い吠え声が響き渡り、怪異の前に、一匹の犬が立ちはだかった。紡がゆっくりと顔を上げると、そこにいたのは、留守番させていたはずのカイだった。


 彼の小さな身体からは、怪異に向かって闘争心を剥き出しにした、猛々しいオーラが放たれていた。毛並みは逆立ち、牙を剥き出しにして、巨体に怯むことなく吠え続けている。

紡を守ろうと、たった一人で、巨大な怪異に立ち向かおうとしているのだ。


「カイ! なんでここに!? お前じゃ無理だ!逃げろ!!」

紡の叫びも虚しく、怪異は、そんなカイを一瞥しただけだった。その一つ目には、何の感情も宿っていない。


「ん?なんだこの犬は? 鳴き声が、少しばかり、耳障りだな」

怪異の巨大な脚が、容赦なくカイを蹴り飛ばした。その一撃は、まるで小石を蹴るような軽い動作だった。

カイの身体は軽々と宙を舞い、地面に叩きつけられる。ゴンッという鈍い音と共に、カイの身体が地面にめり込み、ほとんど音もなく息絶えた。


 カイの体からは、一筋の血が流れ出し、地面の血溜まりに吸い込まれていく。その瞳は、最期まで紡を見つめていた。

そこには、主人を守りきれなかった悔恨と、深い愛情が入り混じっていた。


 石凝も。烏賀陽も。朔月も。そして、カイまでも。


 何も守れなかった。何もできなかった。


 紡は、自分のあまりの無力さに、情けなさと絶望で打ちひしがれた。彼の喉からは、感情が千切れそうな、しかし音にならない嗚咽が漏れた。


(俺は……なんて無力なんだ……!)

(チート能力を与えられたって、何の意味もなかった……!)

(どうしようもない人間だ……!)

(転生したことが……間違っていたんだ……!)

声にならない、絶望と自己嫌悪の叫びが、彼の心の中で木霊する。身体はもはや、全く動かせない。全ての希望が、彼の前から消え去った。


 怪異は、そんな紡の様子を見て、くすくすと笑った。その笑い声は、彼の耳には、まるで嘲笑のように響く。

「何を叫んでいる? 哀れな、人間よ。さあ、そろそろ、お前の番だ」


 巨大な腕を振り下ろした。その爪が、まるでギロチンのように、ゆっくりと紡の頭上へと迫る。紡は、死を覚悟し、ぎゅっと目を閉じた。



 しばらく目を瞑っていたが、痛みを感じることはなかった。怪異の爪が彼の肉を裂くはずの感触も、死の恐怖も、そこにはない。不思議に思い、恐る恐る目を開ける。

そこは、見慣れた白い空間が広がっていた。床は真っ白で、壁も天井もどこまでも白い。無機質で、どこか安らぎを感じさせる空間だ。


 そして、彼の目の前には、あの忌まわしい神が、いつもの能天気な笑顔で、白いソファにゆったりと足を組んで座っていた。



 その表情は、まるで全てを見通しているかのように、どこか楽しげだった。

てとまるです。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。


さて、色々と物語が進みました。

少々惨い表現が多くなってしまい、すみません。

ちょっとネタバレになりそうなので、今回の後書きは多く書きません。

次回をお待ちいただけると幸いです。


それでは、よろしくお願いいたします。

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