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第五話 魔法創作と下級魔法使い試験

ようやく、街に出かけられます。

転生直後は赤ちゃんだから、成長するまで、なかなか外に出かけられない問題。


「『加速魔法』!」


呪文を唱えると白色の魔法陣が出て来て、『加速魔法』と唱えると、魔法陣が強く光ってから消え、小石が砕け散りながら遥か彼方に吹っ飛んだ!


「魔力を込めすぎですよ。今回は成功しましたが、新しい魔法は暴発の危険があるので、少しずつ魔力を込めてください」


予想以上の効果に私が唖然としていると師匠が注意してくれた。


「すみません。興奮していたようです」


「その気持ちはわかりますが、まさかあんなに飛ぶとは私も思っていませんでした。近くの小石だったからでしょうか?」


付与する系の魔法は基本的に魔法をかける物体が遠くにあればあるほど、魔力効率が悪くなる。

逆に言えば、近ければ近いほど、威力が高くなるのである。


「多分、そうだと思います。砕けたのは一点に力をかけ過ぎたせいかと」


「それでは、次は込める魔力量に注意しながらやってみましょう」


「はい!」


私は近くの小石に先程の魔法よりも込める魔力を少なくするように気をつけながら、呪文を唱えた。


「『加速魔法』!」


すると、今度は小石は砕ける事なく放物線を描き飛んでいった!


「成功しました!」


「二回目で成功させるとは流石ですね。それでは、行きますよ」


「どこへですか?」


「魔法協会ですよ」




◆◇◆◇


魔法協会、それは魔法使いの資格の認定をしたり、魔法使いの育成をしていたり、魔法の等級を決めたりと魔法に関する事を色々としている組織である。

そんな魔法協会には新魔法を発表する学会としての役割もあるのだ。

魔法協会で新魔法を発表すると報奨金が貰え、現代で言うところの特許権のような物も与えられ、知名度が上がり、研究資金を集めやすくなる為、大抵の魔法使いは魔法を開発したら協会で発表するのである。

勿論、なかには魔法を開発しても秘匿する魔法使いもいる。

魔法使いの名家に伝わる一族秘伝の魔法とかがそれにあたる。

私たちは今、そんな魔法協会に行くため馬車に乗っている。


「初めて街に来ました」


そう、私は転生してからずっと屋敷にいたため、街に行くのは初めてなのである。

いや、行くという表現は間違っているか。

屋敷はこの街、アシュトンフォードの一等地にあるため、屋敷から出るというのが適切か。


「人の多さに驚いていますね?」


私が馬車の窓から外を眺めていると、師匠がそう聞いてきた。

私が驚いているのは、前世も含めて初めて見るヨーロッパ風の街並みと街を囲む城壁にであり、人の多さではないのだが。

そもそも名古屋の田舎に負けているような人口のどこに驚く要素があるのだろうか?


「あれが城壁ですか?」


「そうですよ。あれのおかげで街には魔物が入って来られないのですよ」


知識としては知っていたが、やはりこの世界は危険なのだなと再認識した。


「街を拡大したくなっても、城壁があると拡大出来ませんね」


「それが城壁の欠点ですね。まあ、この街が拡大の必要性に迫られる事なんて、なかなか無いと思いますが」


「もしかしたら、私が大人になる頃には大都市になっているかもしれませんよ?」


「そうなったら、いいですね」


私たちがそんな会話をしていると、窓に大きな教会が写った。


「あれはオーツ教の教会ですか?」


「そうですよ。この国で一番大きな宗教です。まあ、腐敗が進み過ぎて、いい噂は聞きませんけど」


他にも街を見ていて、疑問に思った事を色々と師匠に質問していると割とすぐに魔法協会に着いた。


「ここが魔法協会ですよ」


馬車から降りて、魔法協会を見上げた。

そこには大きな「魔法協会」と書かれた看板を掲げたとても大きな建物があった。

私は先導する師匠の後をついて行き、少しだけ緊張しながら中に入った。

中には如何にも魔法使いという感じのローブを纏った人が何人もいた。

三角帽子を被っている人もいる。

堂々と受付に進んでいく師匠の後を私は若干、オロオロしながらついていった。

なんか、魔法使いの親についてきた子供として見られている気がする。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「この子の下級魔法使いの試験と新魔法の登録をお願いします」


「失礼ですが、まだ四、五歳にしか見えないのですが」


受付嬢さんが私を困惑しながら見つめてくる。

当然、そうなるよね。

でも、中身は十五歳なんだから。

転生後も含めたら合計十九歳か。

ん?もうすぐ、二十歳じゃん!


「大丈夫ですよ。この子、天才なので」


「師匠、恥ずかしいのでやめてください」


「まあ、とにかく大丈夫なので」


「はぁ、かしこまりました。では、こちらの書類にご記入ください」


受付嬢さんが書類を取り出して机の上に置いた。

勿論、羊皮紙である。

本のおかげで見慣れているが、やはりこういうところにファンタジーさを感じる。


「私が代筆しましょう」


と言って師匠が代筆してくれた。

私では身長が足りないからである。

その様子を見て、ますます受付嬢さんが心配そうな顔になった。


「書けました」


「では、試験料をお支払いください」


「私の口座から引き落としておいてください」


そう言って師匠は懐から黒色のプレートのような物を取り出して渡した。


「かしこまりました。では準備が整い次第、お呼びいたしますので、少々お待ちください」


私たちは次の人の邪魔にならないように壁の方に移動した。


「師匠、今日は魔法の登録だけではなかったのですか?」


「登録するには、最低でも下級魔法使いの資格が必要なのです。それに四歳で下級魔法使いの試験に合格すれば、箔がつきますよ」


「せめて事前に言ってくださいよ。驚いたじゃないですか。あと、試験料を払ってくださりありがとうございました」


「それは気にしなくていいですよ。後で伯爵様に経費として請求するので」


そんな会話をしていると、すぐに呼ばれた。


「下級魔法使いの試験の方!第二訓練場までお越しください」


驚いた。この世界にスピーカーが既に開発されていたのか。

前世でスピーカーがいつ発明されたのかは知らないが、少なくとも中世にはなかったはずである。

異世界だから、当たり前と言えば当たり前だが、文明の発達の仕方が違うようだ。


「お嬢様、行きますよ」


「あっ、はい!師匠」


私は勝手知ったる様子で先導してくれる師匠の後について行き、「第二訓練場」と書かれた看板が掛けられている扉を開け、中に入る。


「ようこそ、ティファニーさん。俺は試験官のアルスだ。よろしく」


そこには魔法協会職員の制服でもある瑠璃色のローブに纏った中年ぐらい男の人がいた。


「ティファニーです。よろしくお願いしますアルスさん」


「私は付き添いのエリザです」


そう言って師匠は壁際に移動する。


「では、試験内容を説明する。ルールは単純だ。下級魔法を使い、制限時間内にあの三つの的を全て破壊すれば合格だ」


そう言われて、私はその的を確認する。

的の距離は屋敷で訓練していた時よりも短い。

だがしかし、私が使える下級魔法の攻撃魔法は土属性の『石礫(ストーンバレット)』しかない。

あれは詠唱があるし、狙わなければいけないからな。

魔力弾(マジックバレット)』なら三つ同時破壊もできるのにな。

『加速魔法』で破壊したら駄目かな?

駄目だよな。

あれはまだ等級すら決められていないからな。

『加速魔法』なら、狙いを定めるのがとても楽なのにな。

一応聞くか。


「下級魔法じゃないと駄目ですか?」


「中級や上級でも使えるならそれでもいいよ。要は初級魔法以外ならなんでもいいんだよ」


「ありがとうございます。言質は取りましたからね」


やはり、駄目元でも聞いてみるべきだな。

アルスさんの気が変わらない内にさっさと詠唱するか。

そう思い、私は早口で呪文を詠唱した。

呪文はその意味を理解していると高速詠唱ができる。

つまり、開発者である私は超早口で詠唱できる訳だ。

ちなみに、意味を理解せずに適当に早口で詠唱すると魔法が発動しない事もある。

最悪の場合は暴走する。


「『加速魔法』」


私がそう唱えると左の的が砕けた。

込めた魔力量はちょうどよかったようだ。

アルスさんの方をチラリと確認すると、唖然としているようだった。

まあ、四歳の子供が知らない魔法を使ったら、こうなるよね。

そこまで考えて、私は時間制限は大丈夫かなと思い、また高速詠唱をした。


「『加速魔法』」


今度は右の的を砕いた。

にしても、『加速魔法』って、完全に名称詐欺だな。

最後ぐらい下級魔法使うかと思い、私は『石礫(ストーンバレット)』の詠唱をした。

あまり慣れていないため、高速詠唱はやめておいた。


「『石礫(ストーンバレット)』」


石の礫が真っ直ぐに飛んでいき、最後の真ん中の的が壊れた。

そして気がついた。

離れた所にある的の場合、『加速魔法』よりも『石礫(ストーンバレット)』の方が楽かもしれない。

楽しようとしたのに楽できなかった。


「アルスさん?」


未だに呆けているアルスさんを師匠が呼んだ。


「あっ、はい!合格です!」


こうして私の下級魔法使いの試験は終わったのであった。

『加速魔法』を早速、破壊に使っている件。

名称詐欺でしかないけど、名前を変える予定はありません。


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