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第四十話 不正?粛清

過去一簡潔且つ要点を押さえたエピソードタイトル。


「なっ!なんだ貴様は!?」


「私はティファニー・フォン・ヘクセである!このヘクセ領、領主の役目を国王陛下より賜り、馳せ参じた!よって、これよりこの領の経営に関する引き継ぎを行いたい!領主代理はどなたか!?」


「なっ!白銀の聖女だと!?あの受付が言っていた戯言は本当だったのか!?」


「いや、待て!偽物の可能性がある!」


「と言うか、うわさの超有名貴族様がこんな質素な服を着て現れる訳がないだろ!?絶対に偽物だろ!」


「そうだそうだ!こんな小娘が……」


ハゲオヤジの一人がそう言い放った瞬間、部屋中に私の魔力が充満した。

いわゆる『威圧』である。


「何か、言いましたか?」


「いえいえ!何も!何も言っておりません!」


「そうですか、それはよかったよかった。もしも変な事を言っていたら、うっかり殺すところでしたよ。それで、領主代理はどなたですか?」


「領主代理は王都に!」


「そうなんですか!?では、領地の経営はどのように!?」


いやー、領主代理が王都にいるなんて、初耳だなー(棒読み)


「ここにいる五人でやっておりました!」


「そうなんですか!?本来、何の権限もないはずのあなたたちが経営していたのですね!」


「いや、その、なんと言いますか、権限はありませんが、領主代理不在と言う非常事態なので!」


いやね、それは王都に訴え出ればいい話でね。

君たちが好き勝手に経営してもいい理由にはならないんだよ?


「まあ、貴方たちが勝手に領地経営をしていた件はひとまずおいておきましょう。さて、取り敢えず昨年度の帳簿を出したもらいましょうか。どこにありますか?」


「あ、はい!こちらです!どうぞ!」


そう言ってハゲオヤジが薄い冊子を差し出してくる。

うん、薄いね。学生の勉強用ノート並みに薄い。

最後に使ったの十年以上前だけど。

この時点で偽物確定案件だけど、一応は歳入の欄も確認する。

途中で寄った村の村人曰く、去年の小麦は豊作だったらしいからね。

さぞかし税収入も豊かに違いあるまい。


「それで、もう一冊の帳簿はどこに?」


私は村からの税収入について記載されたページを開きながらそう言った。


「いや、その仰っている意味が……」


「だからね?裏帳簿も出せと言っているの。聞こえない?殺すよ?だいたい、改竄が下手過ぎるのよ。何でこんなにあからさまな改竄した訳?豊作だったのに不作だった事になってるし、接待費とかあからさまに多過ぎるし。『街道整備費』って何よ?あのガタガタ具合でどこを整備しましたって言うのよ?どうせ見せる事なんてないからって適当にやったんでしょ?馬鹿なの?新しい領主が来るって聞いていたわよね?せめてその間に証拠隠滅ぐらいしなさいよ。えっ、何?殺されたいの?自殺願望でもあるの?」


ここまで酷いとは、流石に呆れる。

こういう物って、村に直接赴いて納税額を確認してこっちの帳簿と合っていないぞ?さては改竄したな!ってやるもんでしょ?

普通は。

何で、一見しただけでわかるのよ………。

やるなら、もっとちゃんとやろ?


「「「………」」」


「はあ、もう一度だけ言うよ?帳簿はどこ?」


「「「………」」」


ドォッゴォーン!

沈黙が三秒ほど続き、唐突に沈黙が破られた。

とあるオークが突然壁にめり込んだ音である。


「私から近い順にこうなるよ?」


「はい!出します!出すので許してください!」


そう言って街長は机の鍵付き引き出しを開け、本を取り出した。

と思いきや、その引き出しの底を取って、そこから帳簿を出してきた!

まさかの二重底。

なんで、改竄はあんなに杜撰なのに、そこだけしっかりしているの?


「これです!どうぞ!」


私は渡された裏帳簿をパラパラとめくる。

なるほど、なるほど。


「こっちも杜撰ですね」


「いや、そんな事は!?」


「出費の表記が雑なんですよ。なんですかこれ?こことか工事費用、大金貨百枚って。何の工事かもわからないし、どこに依頼したのかもわからない。もしかしてこっちも改竄しています?」


私は適当に流し読みし、目についたページでめくるのを止めてそう言う。

いやー、にしても禁書を限られた時間で大量に読む為に培った速読技術がこんなところで役に立つとは。


「いや、はい、なんと言いますか、その……」


「下手に誤魔化そうとすると、殺します」


「はい!少しだけ改竄しました!」


「お前!何で喋る!」


「私がこの中で一番、横領額が小さいからだよ!」


「貴様、裏切るつもりか!?」


「黙ってくれる?それとも黙らせられたい?」


「「「………」」」


「いいかい?君たち?帳簿ってのはね、バレないように脱税する為にあるの。裏帳簿ってのはね、上手に経営する為にあるの。それがどっちも杜撰って、君たちは何がしたかったの?」


「「「………」」」


「はあ、もういいよ。ここまで酷いと逆に横領額の把握も困難だから、取り敢えず関係者全員問答無用で全財産没収した後に奴隷堕ちね。異論は認めないよ」


「いやいや、待ってくだされ!私は全て喋ります!何でもするのでそれだけはご勘弁を!」


「お待ちください!こいつは一番横領していた奴です!私こそが信用に値します!」


「いやいや、私こそが!」


ドォッゴォーン!


「私、醜い物を見るのが嫌いなの。だからね?言いたい事はわかるよね?」


「「「………」」」


「素直でよろしい。それじゃあ、私は大掃除してくるから。師匠、ここは任せてもいいですか?」


「ええ、もちろんです」




◆◇◆◇


役所を後にした私が最初に向かった先は神殿であった。

勿論、目的は差し押さえである。

扉を蹴り飛ばし、教会のローブを着ている人物を軒並み魔法で拘束していく。

まあ、一部の修道女見習いとかあからさまに関係無さそうな人は見逃しているが。


「貴様、教会に狼藉を働いてただで済む……、グハァッ!」


「うるさい、黙れ、ハゲ」


「こんな事、女神様がお許しになりませんよ!」


偉そうにしていたハゲデブを蹴り飛ばしたら、なんか小さな修道女が出てきた。

この子は、横領関係者では無さそうだな。


「君、ここの教会の金庫はどこ?」


「この強盗!」


小さいな修道女はそう叫びながら、魔力を手に込めて殴りかかってきた。

圧倒的な実力差を前に立ち向かってくる勇気は素晴らしい。

が!

今の私はとても忙しい。

早くしないと、横領した資産を隠してくる輩が出かねないからね。


「事情を説明している暇はないの。だから少し眠っていてね。『睡眠(スリープ)』」


さて、金庫は奥の方か、地下かどっちかな?

ん?闇魔法連発しながら教会に殴り込むって完全に悪役の所業。

まあ、いっか。




◆◇◆◇


次に向かった先は商工組合である。

尚、先程捕えた教会関係者は全員、引き摺ってきている。


「貴様!後ろのそれはなんだ!?」


豚です。


「貴様!我が商工組合に……、グハァッ!」


「金庫はどこだぁ!?」


あっ、気絶してる。強く蹴りすぎた。

まあいいや、代わりはいるし。

お、ちょうど目の前に良い感じの子がいる。


「そこの君、横領の関係者として処罰されたくなかったら、金庫の場所を教えなさい」


「はいッ!」


本当にやってる事が強盗。




◆◇◆◇


ここまでくると慣れてくるもので、私はとてもとてもスムーズに襲撃していた。

尚、襲撃されている側は憲兵団である。

教会と商工組合で捕らえた奴らは引き摺って来ている。

次々と襲いかかってくる兵士を一撃で気絶させながら、詰所の中で一番豪華な部屋に向かって走る。


「貴……、グハァッ!」


もはや一単語すらも喋らせない早技。

強盗は強盗でも神業の強盗だな。




◆◇◆◇


最後に残った冒険者ギルド。

ここはあまり敵対したくないので、正面から()便()に行こうと思う。

ちなみに、捕らえた奴らは制圧した憲兵団の牢屋にぶち込んでおいた。

狭すぎてぎゅうぎゅう詰め状態だったが、まあ問題はないだろう。

そんな事を考えながら、冒険者ギルドの扉を()()()()


「誰だぁ!テメェ!」


これが厄介なんだよな。

冒険者ギルドって他のところと違って、関係の無い一般人がいるから片っ端から薙ぎ倒すと問題になるんだよな。

まあ、邪魔してくるなら容疑者を匿ったとか、公務を妨害したとか言って潰すか。


「冒険者ギルドヘクセシア支部ギルドマスターが領地の資金を横領していた為、これより捜査をする!邪魔する者は横領に加担したものとみなす!」


「んだと!?テメェ、意味のわからん事、いってんじゃねぇ!死ねぇ!」


なるほど、ここは冒険者ギルド。

理解する頭の無い残念な奴がたくさんいる訳か。

仕方がない、手っ取り早く気絶させていくか。

と考えるている間にも五人程気絶させている。

思考よりも先に体が動く早わ……。

ん?なんか、魔力反応が。


「『氷礫(アイスバレット)』!」


お、如何にもな格好をした女性が魔法使ってた。

すごいよ君。私に反撃できた人第一号だよ。

でもね、残念。相手が悪過ぎたね。


「テメェ!どこ狙ってやがる!」


「ごめんなさい!何故か狙いが逸らされるんです!」


「何故か、じゃないよ。『加速魔法』って言うの!良かったら魔法協会で閲覧して私にお金落としていってね!」


完全に晒す目的で使っておいて何が『加速魔法』だよと思うが、それはそれ。

って訳で気絶しなさい!


「死ね!この糞餓鬼!」


「奇襲するなら静かにやりたまえ」


そう言いながら、魔力を打ち出して相手の剣を粉砕し、勢いそのまま革鎧も粉砕し、壁に叩きつける。

が、少々威力を込め過ぎたようで壁を貫通し、そのままギルドの外に放り出してしまった。


「少し、やり過ぎた」


あれ、実は囮の攻撃で本命の魔法を控えていたんだけど………。

あ、魔力反応。魔法か。


「『岩槍(ロックランス)』!」


「『風刃(ウィンドカッター)』!」


「君たち、私に傷を負わせたいなら最低でも上級魔法は使わないと無理だよ」


いや、師匠なら中級魔法で特級魔法並みの威力を叩き出してくるからな。

一概には言えないか。

ちなみに、私がそんな事を考えたいる間にも次々と魔法が詠唱され飛んでくるが、そんか魔法たちをまるで鬱陶しい虫を追い払うかの如く適当に手で払っている。


「こいつ!なんで魔法が効かないんだよ!」


「魔力の密度と思念の込め方がなっていないからこうなるんだよ、三流」


「なっ!言ったわね!なら受けてみなさい私の最きょ……。ギャーッ!」


「喋ってる暇があるなら詠唱しろ、四流」


「おい、合体魔法撃つぞ!息を合わせろ!」


合体魔法じゃないでしょ、簡易版儀式魔法ね。

あれ、効率が悪いからおすすめしないけど。

にしても見るに堪えない。いい加減終わらすか。


「まだ意識のある魔法使い諸君!君たちには私の新作魔法を受ける権利を与えよう!但し!拒否権はないッ!」


私はそう宣言し、詠唱を始める。


「そんな権利いらねぇー!」


「気をつけろ!何かやばい魔法が来るぞ!」


「させるかッ!」


「おい、魔法使い!あのやばそうな魔法陣をどうにかしろ!」


「キャーッ!」


「どこ狙ってやがる!」


ん?なんか、三流魔法使いが雑に魔法を放ったせいで大混乱になってる。

この魔法撃つまでも無い気がするが、ここまで構築してしまった以上撃つか。

殺傷能力の無い魔法だし。


「『反魔力魔法』」


そう唱えると、私を中心に展開されていた魔法陣から魔力のような何かが溢れて出し、冒険者ギルドを包み込んでいく。

そしてそれと同時に冒険者たちは次々と気絶していく。


「うわー、ほんの少しだけとは言え、私の魔力まで消滅させられてる。しかも魔力の多い冒険者はまだ意識あるし。んー、要改良」


私のやった事は単純明快。

教会の神聖魔法『聖光』から着想を得て、魔力を打ち消す魔力を作ったのだ。

『聖光』の効果は『邪悪なる魔力を打ち払う』という物だったのだが、ここで私は思ったのだ。

『邪悪』とはなんぞや?と。

魔族や魔物の魔力と人間の魔力に大した違いは無い。

となると、『聖光』を弄れば対人用にもできる筈と考え出来たのがこの魔法。

尤も、術者自身を巻き込むという欠陥魔法だが。


「さて、カウンターの後ろでビクビクしている受付嬢さん?わざわざ君だけは魔法の効果から保護してあげたんだからさっさと出てきなさい」


私はそう言って、既に先程のカウンターを乗り越えて隅っこを見ると、そこには恐怖のあまり失禁してしまったであろう新人受付嬢がいた。


「ヒィッ!」


「君、なんかごめんね」


私は目を逸らしながらそう言った。

がしかし、聞きたい事は聞く。


「横領に加担していたと思われなくないなら、偉い奴ら、全員呼んできなさい」


私がそうにっこりと告げると、受付嬢は気絶してしまった。


「すみません。その子は新入りでして、まだ荒事になれていないのです」


私が振り向くと、そこには受付嬢の制服を纏った綺麗な女性の人が立っていた。

手加減していたとは言え、あの魔法を受けてもまだ気絶していないとは………。


「貴女は?」


「私はここの副ギルドマスターのエレオノーラです」


「受付嬢ではないのですか?」


「ここは年中、人手不足なので兼任しています」


「そうですか。貴女にも横領の嫌疑がありますので、ご同行願えますか?」


「はい、わかりました」


にしても、この惨状どうしよう?

私は荒れに荒れた冒険者ギルドのホールを改めて見てそう思うのであった。

ある日の作者の日常 〜図星編〜


友達「お前の作品、登場人物名が全然無いよな」


作者「名前が出過ぎると分かりにくいだろ」


友達「でもさ、主人公のお母さんの名前すら未登場ってやばいと思うよ」


作者「な、何故バレた!?」


友達「いや、普通にバレるだろ」


作者「クッ!」


友達「さてはお前、名前を考えるの面倒くさがってるだろ!」


作者「そんな事は無いッ!」


友達「じゃあ、名前を考えるのが苦手なのか」


作者「グハァーーーーーーーー!」




ティファニーのお母さんについてはもう少し先に出ます。

乞うご期待!


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