第三十八話 これって屋敷にあってもいいものじゃなくない?
『飛行魔法』と『飛行』が混在しているという事に気がつきました。
書いている時にどっちがいいかな?と考えていたらいつの間にかどっちも書いていたようです。
申し訳ございません。
正しい方は『飛行魔法』です。
順次修正中ですが、間違えている話を見かけた方、教えてくださると助かります。
何故、気がつかなかった?
どこから迷宮化していた?
思えばいくら怨念が残っているとは言え、あの数と強さのアンデッドはおかしかった。
更に思い返せば、屋敷に入った瞬間に何か違和感を感じたような気がしないでもない。
あまりの屋敷のボロさに霞んでしまっていたが。
「まさか、屋敷自体が迷宮?」
「街の中心に迷宮があるだなんて大騒ぎどころの話ではありませんよ!?」
いや、確かにそうではあるが、これはチャンスでもある。
あそこの領地と言えばこれ!と言えるものが存在しない我が領にとって迷宮の出現は喜ばしい事だ。
街中でスタンピードしないかは心配の種にはなり得るが、兆候が現れたら即座に迷宮内の魔物を一掃すれば未然に防げるし、そもそもこの程度の規模の迷宮がスタンピードを起こせられるとは考えにくい。
まあ、どうするのか考えるよりも先にだ。
「破壊するなり、機能を停止させるなり、利用するなりどうするのかは後で考えて、取り敢えず急ぎます!」
私はそう言って階段から飛び降り、『飛行魔法』で一気に駆け降りた。
一瞬で最下層まで辿り着き、ふわりと着地する。
すると、そこにいたのは。
「あっ、御主人様!見てくださいよ!この美味しそうな魔石!」
私よりも大きな魔力の結晶体とそれを食べたそうにしているヒェロナだった。
と言うか、これって食べられるの!?
「ヒェロナ、それは魔石じゃないからね!普通の魔石はこんなに複雑な魔法陣が刻まれていたりはしないから!」
そう、ヒェロナの指差す先には複雑怪奇且つ立体的な魔法陣と膨大であるにも関わらず精緻に制御された魔力を内包している魔力の結晶体があった。
絶対にただの魔石ではないのは一目瞭然であり、何故これを食べようという気になるのか本当に気になる。
くだらなさ過ぎる冗談はさておき、この魔石だが一見しても魔法陣が読み取れない。
偽装がされている訳ではないようなのだが、普通に難しすぎて解読できないのだ。
とは言え、迷宮の核が一瞬で解析できるとは元から思っていないし、時間をかけてやればいい訳なのだが。
「食べていいですか!?」
「絶対に駄目!後で肉ならあげるから、これだけは食べちゃ駄目だからね!」
貴重な研究資料までヒェロナのお腹に消えさせてたまるか!
と言うか、魔石の味ってどんな感じなの!?
「お嬢様、ヒェロナ!」
私たちが振り返ると、そこには全力疾走してきたであろう師匠がいた。
「エリザさん、魔法は使わなかったのですか?」
「ヒェロナ、あんなに狭い空間を飛び降りられるお嬢様がおかしいだけですからね」
いや、『魔力感知』を併用すれば障害物を避けつつ超高速移動が出来る筈なんだけど。
そもそも師匠って魔法戦の時は何百と魔法を放っても華麗に避けているよね?
そんなに要領、違わないと思うんだけど。
「それよりも師匠、この魔力の結晶体、迷宮核であっていますか?」
「私が昔に見た物よりも大きいですけど、間違いなく迷宮核ですよ。まさか本当に屋敷の地下に迷宮核が存在しているとは。ここ、屋敷としては色々とおかしいですね」
「荒れ果てた庭、アンデット、物騒な地下室、そして迷宮核付き。立地以外、本当に不良物件ですね」
「それで、お嬢様はこれをどうするおつもりで?」
「破壊するには惜しいですからね。有効活用しましょう」
「ですが、どうやって制御するのですか?」
「少し前に王城の禁書庫で迷宮に関する本を閲覧しましてね。おそらく制御できる筈なんですよ。まあ、暴走しそうになったら問答無用で破壊するのでご安心を」
私はそう言いながら核に歩み寄り、手を触れた。
そして魔力を流し込んだ。
無論、ただの魔力ではない。思念を込めた魔力である。
すると直ぐに応答があった。
『ひぃー!殺さないで!』
実際に聞こえる訳ではないのだが、あちらの魔力の思念を読み取っているのだが、だからこそと言うべきかだろうか。
頭の中まで響いてくるようでうざい。
仕方がない事ではあるが。
『殺されるか、私に従属するか、どっちを選びたい?』
『はい!喜んであなたに従います!』
『それじゃあ、この契約書にサインを』
私は懐から取り出したスクロールを核に押し付けた。
ヒェロナとの契約の時にも使った物である。
ちなみに、私お手製のスクロールでもある。
スクロールは核に接触するやいなや、魔法陣を輝かせてから塵となって消えた。
それと同時に迷宮と私の間に繋がりが出来た。
「随分と呆気なかったですけど、終わりましたか?」
いや、呆気なかったのはこの迷宮の精霊の長い物には巻かれろ精神すぎたせいだと思うけど。
「一応は終わりましたが、まだ迷宮の操作方法が不明なので今日は泊まり込みで解析しようかと」
私はそう言いつつ、核に魔力を流し込んで動かし方を探る。
今のこの感覚を例えるなら、あれである。
買ってきた家電に取り扱い説明書がついていなかったから、取り敢えずボタンを押しまくる的な感じである。
しかも、やたらと使い道が不明なボタンがある感じ。
『適当に魔力を流すのやめてくれない?気持ち悪い』
別にどうでもいいけも、気持ち悪いって言われると少し悲しいなー。
気にしていないけど。
『いやー、どうやって動かせば良いのかなってね』
『はあ、私が教えるから』
『よろしくお願いするね』
『まずはここの迷宮についての説明からするね。そもそも迷宮ってのは魔力の濃いところに発生して魔力を地上に放出して濃度を正常に保つ為の存在なの。本来なら大地の魔力の流れである龍脈の上に発生するんだけど、ここは少し特殊でね。どこぞのアホが魂を魔力に変換しまくった残滓から発生したのよ』
まあ、そりゃあれだけの濃度の魔力を作っていたら迷宮が発生してもおかしくはないよね。
『んでね、奴が死んだ後になってから私が発生したせいで私の存在は誰にも知られないままだったのよ。一応は奴の息子が上の屋敷に住んでいたけど、奴は息子に地下室の存在を教えていなかったのよ。つまり、誰も私の迷宮に入ってこられなくなったのよ』
『迷宮の防衛という観点からすれば良い事なんじゃないの?』
『防衛するだけならね。でもね。迷宮は成長する為に魂を吸収する必要があるの。つまり、人が入ってこないと私はいつまで経っても成長できないのよ!』
『でもさ、君の核って結構大きいよね?』
『そうなのよ。考えに考えた私は奴の息子が殺されてから、迷宮の領域を地上の屋敷まで頑張って広げたのよ。そして肝試しに来た子供たちにゴーストをけしかけたのよ』
『殺したの?』
『脅かしただけよ。殺すのが一番魂を吸収できるのだけど、脅かすだけでもある程度は吸収できるのよ。まあ、そんなこんなで子供たちを脅かしている内にここは街一番の心霊スポットになって、夏になると子供たちがこぞって肝試しにくるようになったのよ』
なにその新手過ぎる迷宮!ただのお化け屋敷じゃん!
テーマパークかよ!
肝試しに来た子供たちが主な収入源ってテーマパークにしてはあり得ないけど。
『大人たちが来た時はやり過ごして、小さな子供が来た時は脅かしてってやっていたら、いつの間にかこんなサイズまで成長していたって訳。あ、ちなみにあんた達がほとんど全戦力で襲われたのは私のせいじゃないからね?』
『それじゃあ、どうしてなのよ?』
『あんたのせいよ。あんたが聖なる魔法を使う気配を撒き散らかしているから、アンデッドは救いを求めて群がるのよ』
私、まさかのアンデットほいほい。
後で対策を打っておこう。
『この迷宮の成り立ちはわかったから、次は操作方法を教えてくれない?』
『私も感覚的に動かしているだけなのよね。だから、やりたい事があったら私に思念で伝えて』
『わかったよ。それじゃあ、送り込むね』
私はそう伝えてから魔力に思念をのせて核に流した。
『止めて!多い!情報が多い!しかもこんな規模、私の力だと無理!と言うか、よくもまあ精霊石も無しに魔力にここまで思念をのせられるね!ほとんど限界値じゃん!』
どうやら核の情報処理能力を超えてしまったようである。
この程度の規模も無理なのか。結構、低スペック疑惑。
一層百haが百層あるだけなのに。
しかも、内装は無し。
それは後から考える。
『どうしたら構築できるの?』
『一応、こんなんでも今の私でも出来なくはないんだけど、物凄く時間がかかるよ?しかも維持に必要な魔力だけでキャパオーバーしかねないから迷宮経営が不可能になるよ』
『んー、それじゃあ、取り敢えずは五層だけでいいから。内部の細かいところは後回しにして空間を広げるのを優先して』
『それじゃあ、作り始めるね』
核からそう思念が届くと、部屋が揺れ核が輝き始めた。
なるほど、なるほど。
あの迷宮の意思が核内部の魔法陣の操作に必要な箇所に魔力を流しながら魔法陣の空白部分を内容に応じて上書きしているのか。
今回であれば核の魔法陣の中でも拡張を司っているところを動かし、空白部分に座標を入れているのか。
理解は出来ても自力で動かすのは難しそうではあるが。
ハードウェアをソフトウェア無しで動かすような物か。
ん?それってほぼ無理じゃん。
いや待てよ。魔法の無詠唱発動のように慣れたら意外といけるか?
まあ、どのみち今は無理だし餅は餅屋にと言うし構築は迷宮に任せて私は構築が一段落するまで魔法陣の解析を進めよう!
迷宮の魔法陣も通常の魔法陣と同じく精霊語で書かれているため、ある程度は読める。
だがしかし、読み進めていくと知らない単語が出てきたり、構造が立体的過ぎるせいで次はどこを読めばいいのかわかりにくい。
「師匠、この単語の意味はわかりますか?」
「前後から考えてこう言う意味なんじゃないでしょうか?いや、でもそれだとこっちが矛盾してしまいますし」
「あのー、エリザさんと御主人様、私は帰ってもいいですか?」
「ヒェロナって一応はドラゴンだよね?」
「一応じゃなくて、ちゃんとしたドラゴンです!アースドラゴンです!」
「ドラゴンがドラゴン同士で話す時に使う言語は精霊語らしいですよ」
「あ、なんか嫌な予感が………」
「ヒェロナ、精霊語辞書になってくれるよね!」
「やっぱり!やなのです!小難しい話は嫌いなのです!」
「そうなんだね、わかったよ!」
その後、ヒェロナは辞書になりました。
現在、この迷宮の精霊の名前に悩んでいます。
下書きの段階では名付けを後回しにしたせいで名無しになっておりました。
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