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第三十三話 返せない程の借金、ダメ。ぜったい。

二章開始です!

学園編をやるつもりが領地編になってしまった。

何故だろう?

それと、感想で教えてもらったのですが、ティファニーのフルネームがティファニー・ファン・ヘクセになっていました。

誤字です。ファンではなく、フォンです。

何故か、「ふぉん」をカタカナに変換しようとすると、「ファン」が最初に出てくる現象。

教えてくださった方、誠にありがとうございました。

私は領地に向けて、三人旅をしていた。

今は馬車に揺さぶられながら、本を読み、ゆったりと移動している真っ最中である。

実に平和、平穏、幸せ。

時折り吹いてくる風が実に心地良い。

なのに、『魔力感知』に反応が三十ほど、前方三kmに。

おそらく、商隊だろう。そうだと願いたい。

しばらくして反応まで数十mのところまで来た。

どう考えても賊だが、きっと山賊のように休憩しているだけでの商……。


「金目の物と女を置いていいけぇー!」


山賊である。

何をどう考えても山賊である。


「気分、台無しなのです」


「そうですね。どうしますか、お嬢様?いや、子爵様?」


「師匠、揶揄わないでください」


「おい、おめぇら。サッサっと降りて来い!」


「はあ、飽きてきたな。この展開」


実のところ、今回の旅だけで、盗賊の襲撃を十回は既に受けている。

流石に飽きてくる。


「それでどうしますか?」


「どうするもなにも、気分を台無しにさせた報いを受けてもらうだけですが?」


「殺しましょう!」


「ヒェロナ、殺してはいけません。半殺しです」


「わかりました!ご主人様!」


「親分、こいつら、全員、上玉ですぜ!売れば小金貨は堅いですぜ!」


「いや、その前に俺様が味……」


その瞬間、山賊のリーダーらしき男が()()()

比喩ではない。文字通りに弾けた。


「師匠、普通に殺しましたね」


「不穏な事を口走ったので」


抗魔(レジスト)を無理矢理突破して、内部から魔法で破裂させたのか。

なかなか、エグい事をするな。


「に、にげろぉー!」


山賊たちが一斉に逃げ出そうとするが、見えない壁にぶつかり転倒する。

私が『結界魔法』で封鎖しているせいである。


「なんで、逃げれねぇー!」


私は馬車から降りて、慌ててはためく山賊たちに近づく。


「死ねぇー!」


錯乱しながら、剣で襲いかかってくるやつの剣を粉砕し、さらに残りの賊の剣も次々と魔法で砕く。


「投降してくださいね?じゃないとこうですよ?」


ヒェロナが山賊の一人を尻から串刺しにした。

結構えげつないな。


「「「ひぇーー!」」」


私はにっこりと微笑みながら、どこで売り払おうか、算段をつけていた。




◆◇◆◇


時は遡り、叙爵式が終わり、王都の屋敷に帰った頃。


「ティファニーよ、あれはどう言う事なのだ!」


お父さんが怒鳴っている。


「何がでしょうか?」


「とぼけるな!お前が独立した貴族になる事だ!」


「国王陛下がお決めになった事なので、私も何がなんだか」


恐らく、ドラゴンスレイヤーの力を一つの家が持つ事によって、パワーバランスが崩れるのを恐れたのだろうが。


「分離独立なら分かる!何故、独立と言う扱いなのだ!」


そう、お父さんは私が子爵位を授けられた時、私は分家という扱いになるのだろうと考えていたのだ。

それが蓋を開けてみたら、完全に独立している扱いなのだ。

いや、寧ろ、実質的にはアシュトン家が分家のような物だ。

何故なら。


「それになんなのだ!これは!?」


お父さんはそう叫びながら、書類を見せてくる。


「借用書ですね」


「そんな事は見れば分かる!何故、我が家がお前にこんな額の借金を負っているのだ!」


「公共工事の費用は私が出していますからね。それにその書類はお父さんのサイン入りじゃないですか?」


「書類なんて、いちいち、中身を確認しないだろ!と言うか、書類上は工事費用はお前が払っている事になっているが、お前のどこにそんな大金があった!」


「魔法協会からの収入とオーツ教から差し押さえた資金、冒険者たちから受け取った治療費、悪徳商会から差し押さえた資金、などなどを投入し、足りない部分は借金しました。あっ、安心してください。オーツ教からの支援金はアシュトン家に入っているので」


流石にオーツ教からの支援金まで私名義の口座に入れてしまうと横領になるからね。

そう言えばいつぞや、借金するとぼったくられると言ったが、あれは返せる見込みが薄い場合に限る。

今回はその資金はさらに伯爵家に又貸している為、暴利を貪られずに済んだのだ。

まあ、若干脅したけど、それはノーカンノカーン。


「微塵も安心できないし、そもそもなんでこんな事になっているのだ!」


「こうすれば、お父様は私に逆らえないでしょ?」


「なっ!お前、何を企んでいる!」


「元々は、政略結婚を断る為に力をつけるのが目的だったのですが、それは独立で果たせましたからね。どうしましょうか?」


「今すぐにこの借金を消せ!」


「返済すると?」


「違う!帳消しにしろと命じている!」


「誰に向かって命令しているのですか?」


「お前以外にいないだろう!?」


「独立した以上、()()()()()()()に命令される言われはありません」


「ふざけるな!」


「では、借金、ちゃんと返済してくださいね?じゃないと土地、差し押さえますよ?ちょうど、我が領は貴領のお隣ですので!」


私はそう言い残して屋敷を出た。

なんか、後ろから「勘当するぞ!」とか「この恩知らずめ!」とか聞こえてくるが、そもそもだ。

確かに育ててもらった恩はあるが、だとしてもあの引きニートの収入がアシュトン領から巻き上げた金である以上、恩があるのは引きニートではなく、アシュトン領だ。

恩返しをするとしたら、アシュトン領にすべきである。


「お嬢様、終わりましたか?」


「はい、アシュトン家と縁切りしてきました」


「それで本当に大丈夫なのですか?」


「何がですか?」


「借金です。幾らしたのですか?」


「白金貨三十枚です」


「は!?」


白金貨とは一枚で大金貨百枚の価値を持つ硬貨である。

つまり、白金貨三十枚の借金とは大金貨三千枚の借金なのである。


「正気ですか!?」


「大丈夫ですよ。伯爵家に白金貨五十枚貸し、内二十枚は自腹でなんとかしたので」


「伯爵家が返済できなくなったら、どうするのですか?」


「領地を差し押さえますが、何か?」


「それを売って借金返済するのですね!」


「あっ、いえ、私の借金は白金貨十枚()()()()()なので、大丈夫です」


「意味がわかりません」


「残りはなんとかして稼ぎます」


「盗賊狩りでもしますか?」


「予定としては下賜された領内に存在する全ての盗賊と犯罪者を捕まえ、奴隷として売り飛ばします。その次に不正行為を行なっている商会を片っ端から差し押さえます。ここまですれば、借金はなんとかなります」


「そんなに荒っぽい金策、初めて聞きました。それでいつ、領地へ出発なさるのですか?」


「明日からと言いたいところですが、やるべき事があるので、それを片付けてきます」


「何をするのですか?」


借金返済(踏み倒し)に」


「はい?」




◆◇◆◇


私はお金を借りた商会の内、本拠地が王都に存在する大商会を訪れていた。

尚、色々と黒い噂の絶えない、俗に言う悪徳商会としても有名である。

いや、こういう時は悪名高いと言うべきか。


「すみません!商会長にお会いしたいのですが!」


私はそんな商会に如何にも田舎から出てきた何も知らない少女を装って門番にこう言った。


「アッ?お前みテェーなチビに会う程、旦那は暇じゃねぇーんだよ!かぇんな!」


ちなみに今の私は超有名人である為、変装している。

質素な服に、魔法で変えた金髪。

誰がどう見ても私だとはばれまい。


「お願いします!」


「しつけぇんだよ!」


門番の男はそう言って、私を()()()()()


「はい、不敬罪&暴行罪!」


「は?」


その瞬間、男は守っていた扉と共に店の奥へと吹き飛んだ。


「なんだ!何が起こった!」


奥からわらわらと屈強そうな男どもと魔法使いらしき人が現れてきた。


「貴様らには貴族家の当主に対する襲撃に関与した嫌疑がかけられている!よって、これよりヘクセ家当主ティファニー・フォン・ヘクセの名において、捜索する!邪魔する者は襲撃に加担したとみなし、斬り捨てる!」


我ながらとんでもない言い掛かりである。

だが、何も間違っていないし、法律的にも問題はない。

通常、貴族が裁く事が出来るのは領地の中だけでだ。

だがしかし、どこでも貴族家の当主は事件に遭った場合、その場で裁く事が出来るのだ。

無論、刑罰は王国法の範囲内に限られるし、後から適切な対応であったか審査が入るが、問題はない。

貴族家当主に対する襲撃は関与する者は全て一族皆殺しであると定められている。

つまり、私はこいつらを殺そうが、借金を踏み倒そうが微塵も問題がない状態なのである!


「こいつ、巻き上げ姫か!」


「いや、髪の色も違うし、魔力量が全然違う!」


奥の魔法使いがそう叫ぶが、残念。

魔力は隠蔽しているだけだ。

あと、巻き上げ姫とか言った奴、不敬罪。


「貴族の名を騙る奴は一族皆殺しらしいぞ!こいつを殺せば、本物から恩賞を貰えるかもしれねぇ!やれ!」


男たちが剣を抜き、一斉に襲いかかってくる。

これでは、襲撃幇助ではなく、襲撃だな。

助かる、助かる。


「『重力魔法』からの、『麻痺(パラライズ)』」


はい、お終い。

魔法、二連発。

たったそれだけの事だが、相手からすれば未知の魔法。

対処法を考える間もなく、気絶した。


「さて、商会長は上かな?」


私は崩壊した階段を魔法で悠々と登るのであった。

二章初っ端から全体的にカオス。

次の次ぐらいから一般的(?)な領地経営編になります。


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― 新着の感想 ―
中世ヨーロッパには強盗騎士という職業があってね…… 第一王子のケツ蹴っ飛ばさないの?
爽快。独立したからもう政略のコマにされなくて済むんですね。 ヒェロナは何を使って盗賊の尻を串刺しにしたのでしょうか?剣か魔法か素手か…
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