第三十一話 討伐を終えて
ヒェロナの鳴き声に関しては、違和感を覚えられても、気にしないでください。
私は目を覚ますと、医務室にいた。
「目を覚ましましたか?」
「師匠。アースドラゴンはどうなりましたか?」
「逃げたようです。私たちが駆け付けた時には、気絶したお嬢様と荒れ果てた森しかありませんでしたから」
「そうですか」
おそらく、人目につかない場所で隠れているのだろう。
私との繋がりは切れていないようだからな。
「にしても、無茶をしましたね。一人でアースドラゴンを追い払うとは。発見がもう少し遅れていたら、死んでいたかもしれませんよ?」
「そうなんです!なんで増援が来なかったのですか!?」
「送ろうにも、送れなかったのですよ。ワイバーンの群れが来ましたね、そいつらが邪魔で行けなかったのです。そもそも、実力のある魔法使いがほとんど儀式に持っていかれたのが原因ですね」
「おかげで死にかけましたよ」
「ちなみに、街ではお嬢様は英雄扱いですよ。一人でドラゴンに打ち勝ったとか、千の魔物を滅したとか、戦場の聖女とか、色々言われていますよ。遊撃しながら、怪我人の治癒を行なった結果ですね」
「そうですか」
そう言って私はベットから降り、立ち上がった。
「もう少し、寝ていて欲しいのですが」
「ただの疲労困憊で倒れただけなのに、大袈裟ですよ」
「普段からその手の疲れに慣れているお嬢様がそれで倒れるのは十分に大事なのですが」
「魔力は全回復しているので大丈夫です」
「はあ、せめてこれを飲んでください」
「それ、まずいからあまり好きじゃないのですよね」
こうして、私は師匠謹製ゲロまずポーションをカブ飲みさせられてから病院から出た。
味、酷くなっている気がする。
ちなみに、服や装備は新しい物になっていた。
服はそもそもドラゴンクラスとの闘いを想定していないから仕方がないが、魔法銃が折れたのは痛手である。
王都の大通りに行くと、戦勝パレードが開かれていた。
冒険者たちは至る所で酒を飲み、騎士たちも酒を飲んでいる。
繁華街のお姉さんたちも稼ぎ時だと言わんばかりに客引きをしている。商魂、たくましい。
そして、吟遊詩人が第一王子の英断と私の尊い犠牲を美化に美化を重ねて、歌っていた。
確かに一人と多数なら、多数を助けるのが英断なのだろうが、私がドラゴン退治に失敗して、街にドラゴンが来たらどうするつもりだったんだ?
にしても、第一王子だったのか。
ふーん。呪おうかな?
私は途中で師匠と別れ、冒険者ギルドへ向かった。
私が扉を勢いよく開けると、中にいた奴らが全員、こちらを向いた。
「金巻姫!生きていたのか!」
冒険者の一人がそう言った。
「誰が金巻き上げ姫だ!?」
入って早々になんて失礼な奴なのだ!
「白銀の聖女様(笑)!」
なんか、後ろに余分なやつがついている気がする。
「戦場に咲く一輪の花だろ!」
「おい、吟遊詩人のあの恥ずかしい歌を歌うな!」
「戦場の悪魔だろ!特級魔法を連発していたらしいぜ!」
「白銀の乙女(笑)って呼ぼうぜ!」
「白銀の魔女が一番、しっくり来るだろ!」
「そうだぞ!こんな奴を乙女なんて呼んだら、乙女に失礼だろ!」
「違いねぇ!」
私は杖(師匠から貰った)を取り出した。
その瞬間、全員黙った。
「聞き分けが良くてよろしい。それで?負傷者の治癒はどこでやっているの?」
「まだ、治癒する気かよ!怪我人ならもういねぇぞ!」
「まだスタンピードが終わってから、一日も経っていないでしょ?」
「おいおい、白銀の魔女ともあろうお方が寝ぼけか?お前がドラゴンを追い払ってから、三日も経っているんだよ」
「えっ?私、そんなに寝ていたの?」
「そうだよ!」
「戦場の乙女(笑)様にも可愛らしいグェ!」
何かをほざいたやつの股間に『石弾』がミラクルヒットした。
全員が「容赦がねぇー」と言いたげな顔をしている。
それに対し、私はにっこりとしながらこう言った。
「こうなりたくなかったら、変な名前で呼ばないでね?」
「こりゃあ、渾名に股間スマ、グハぁ!」
冒険者ってアホなのかな?
「おっ!白銀の乙女(笑)じゃないか!」
取り敢えず、『石弾』。
「おいおい、地味にえげつない事をしようとするな」
だがしかし、ギルマスの股間は魔法でガードされた。
「ギルドマスター?相手が貴方でも容赦しませんからね?」
「悪かったよ。まあ、色々話したい事があるんだ。上まで来てくれ」
私はギルマスの後に続いて階段を登った。
そして、ギルマスの部屋に入った。
「ドラゴン退治、お疲れ様だった。なんで、魔力が尽きなかったのかは、詮索はしない。少なくとも俺は。だが騎士団や王宮魔法使いは間違いなく、聞いてくるぞ。今のうちにそれらしいストーリーを考えておくことだな」
流石にバレるよね。
まあ、それらしい言い訳なら既に考えているのだけれど。
「わかっていますよ」
「それでは、本題に入ろう。まずは謝罪させてくれ。
一人でドラゴン退治させる羽目になってしまった」
「詳しい経緯を聞いても?」
「俺が指揮をしていたら、第一王子のエリック殿下が来てな。陣頭指揮をすると宣言なされたのだ。そして迷宮のボスたちが一斉に出現したと言う知らせを受けると超級魔法の目標を魔物の集団に変更するように指示されたんだ」
「対アースドラゴン用に調整していた魔法を大規模殲滅魔法に変えろと指示されたのですか?あのタイミングで?」
「そうだ」
あの時点でも儀式は相当に進んでいたはずだ。
しかも、儀式魔法の基幹要員たる王宮魔法使いの精鋭たちは遠征中なのだ。
それなのに、土壇場で変えろと指示するとは、アホなのだろうか?
「はあ、私が退治に失敗していたら、どうするつもりだったのでしょうね?」
「その時は力を合わせて足止めし、ヴァンパイアロード討伐に向かった精鋭たちの帰還を待つつもりだったらしいぞ」
「ブレスの射程圏内をご存じないのでしょうか?」
「すまんかったな」
「ギルマスの責任ではありません」
「そう言ってくれると助かる。さて、叙爵おめでとう。まだ内示だが、子爵位を授けられるらしいぞ」
「騎士爵や男爵を飛ばしていきなり子爵ですか」
「しかも、領地を与えられるらしいぞ。余程、ドラゴンスレイヤーを取り込みたいらしい。縁談も大量に来るんじゃないか?」
「傍迷惑な。縁談は全て断りたいですね」
「多分、相手もこんな令嬢と婚約したくないだろうな。そう言えば、うちの息子が今十一なんだが、どうかな?」
「吹き飛ばしますよ?」
「それは勘弁してくれ。冗談だからな」
「では、そろそろ私は教会に行ってきます」
「おう、じゃあな白銀の乙、グハァ!」
こうしてギルマスとの面会は終わった。
冒険者ギルドから出た私は教会へ行った。
なんやかんや言って、王都の教会へ行くのは初めてだ。
教会に着き、中へ入るとリシアがいた。
「ティファニー!生きていたのね!」
「リシア!」
私たちはしばらく抱き合った。
◆◇◆◇
教会を後にすると、森へ向かった。
ヒェロナに会いに行く為である。
使い魔契約によって出来た繋がりを辿って、位置を特定していく。
未だに戦闘の影響が残っているようで、『感知魔法』は当てにならない。
よって、魂の繋がりのみを手掛かりに進んで行く。
しばらく歩くと、池が見えてきた。
魔法で出来たクレーターに魔法で出来た水が溜まったのだろう。魔力の残滓が大量に残っている。
その池には、一匹の亀がいた。
決して、口からブレスを吐いたり、巨大な尻尾で木々を薙ぎ倒したりは出来なさそうな一般的な亀だ。
とても可愛らしい至って普通の亀だ。
だが、反応はどう考えてもヒェロナだった。
「ヒェロナだよね?」
「かめぇ!」
亀はそう鳴くと、光の粒子を出しながら姿を変え、茶髪の少女になった。
裸だったので、私のローブを着せた。
一応はドラゴンなので、風邪を引くなんて事は有り得ないが、なんとなく着せた。
「文献では読んだけど、本当にドラゴンは人の姿になれるんだね」
「そうですよ。人にまだ居ると知られたら、面倒な事になると思い、亀に偽装してました」
「良い判断ね」
「それで、貴女の事は何と呼べばいいですか?」
「好きにすればいいけど、人前ではお嬢様って呼んで。そう呼ばれているから」
「わかりました。では、これから使い魔としてよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いするね」
「それで、この後はどうしますか?」
「そうね。取り敢えず、屋敷に連れて帰りたいけど、王都の結界を誤魔化して入るのは不可能だからね。あっ、いい考えが思いついた!」
これなら、間違いなく突破できるだろう。
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