第三十話 ドラゴン討伐
いつもよりも長いです。
二話に分けた方が良かったかな?
リシアたちが増援として駆け付けてくれてから、三日が経ち、スタンピードも落ち着いてきた。
闇魔法使いたち一人一人が凄腕魔法使いだったおかげもあり、順調に魔物を殲滅出来た。
そんな中、悲報が入った。
「ドラゴンがこの王都に向かって歩いて来ていると言う情報が入った。故に街に被害が及ぶ前に討伐する事になった。このドラゴンの詳しい説明はエルドに任せる」
私たちはギルマスの部屋で作戦会議をしていた。
メンバーはギュスターブさん、聖女三人組、ギルマス、魔法協会マスター、王宮魔法使い次席(主席は遠征中)の計七人だ。
「今回のドラゴンはアースドラゴンだ。まだ若いアースドラゴンだと推定されるが、アースドラゴンだからな。当然強い。知っているとは思うが、アースドラゴンは空は飛べなくて、足もとても遅いが、その分防御力がとても高い」
「儀式魔法で撃破するのは如何でしょうか?」
「いい案ですね。それで、儀式にはどれだけ時間がかかりますか?」
「丸一日ほど」
「ドラゴンのブレスの射程圏内に王都が入るまで、後半日程なのですが?」
「アースドラゴンの硬い甲羅を割り、確実に仕留める為には、儀式の省略は出来ません」
「では、私が時間を稼ぎましょう。特級魔法なら、気を引くぐらいの事は出来るでしょう」
「危険では?」
「空からやるので大丈夫です。アースドラゴンの対空攻撃はブレスか土魔法しかありませんからね」
私はにっこりとそう答えた。
◆◇◆◇
こうして、私はアースドラゴンの足止めをする事になった。
ちなみに単騎で、である。
空を飛べる魔法使いが私と宮廷魔法使いさんしかいない上に、宮廷魔法使いさんたちは連日の戦闘で魔力切れになっており、到底戦えない。
それ故に単騎出撃になった。
さて、アースドラゴンの見た目は動く東京ドームだ。
亀を超巨大にしたような見た目で、甲羅が小山程の大きさがあった。
しかも、甲羅は苔だらけ。
「どこからどう見ても、亀だな」
よし、あのアースドラゴンには亀と言う渾名をつけよう。
私は亀まで三kmの所で止まり、魔法銃を構えた。
中には魔石弾が既に装填されている。
サイズこそ小さいものの、宿っている魔力量は特級魔法十発分だ。
密度がとんでもなく高い為、下手な事をすると暴発する危険がある。
そんな魔石弾に魔力を込めて発射し、特級魔法並みの魔力を使い『加速魔法』をかけた。
魔法で目をいくら強化していようが、見えない速度で弾は真っ直ぐに飛んで行き、亀の足に命中した。
そして、四本ある内の一本の足が吹っ飛んだ。
「ここまで規模が大きいと、『崩壊』も派手に見えるな」
無論、他の特級魔法の方が派手だろうが。
『魔素精錬』を使いつつ、そんな事を考えていると、亀が怒った。
「がぁーーー!」
足を一本やられて、怒らない訳が無いよね。
にしても、そこは「かめぇー!」って言ってほしかったな。
あっ、ブレスが来る。
亀の口に目を閉じても感じ取れる程の魔力が収束していた。
邪魔をするべく、頭部を狙って乱射するが、効果は無い。
少しだけなら、削れているが、サイズが違い過ぎる。
相手は山、もしくは東京ドーム。
こちらは美少女。
亀の準備が終わったのか、口から極太ビームが放たれた。
急いで回避する。
後ろで森が吹き飛んでいるのが、魔法を使わずとも分かる。
ただのブレス。それで、この威力。
しかも、足もゆっくりだが再生されている。
見た目は亀でも、流石はドラゴンだな。
そんな亀は怒鳴り散らしながら、私に三本になってしまった足で突進しようとしてきた。
亀の足取りこそゆっくりだが、歩幅が凄まじく大きい為、割と速い。
まあ、空を飛んでいる私と比べたら、ゆっくりだが。
特級魔法の詠唱をする時間すらもある。
「『隕石』」
そこそこなサイズの隕石が落としたが、亀の甲羅から発射された岩の槍によって粉砕された。
『束縛樹』や『影縛り』などの拘束系を発動し、足止めを試みるが、亀を苛立たせる以上の効果はないようだ。
そして、私が射程範囲に入ったのか、『岩投槍』を連射してきた。
ざっと数えても、三百を下らない魔法陣の数だが、高速で飛行している私に当たる訳が無い。
と言う訳で、文字通りに殺到してくる岩の槍を無視し、亀の胴体の下に潜り込んだ。
そして、再生中の足に『光線』を撃ち込む。
大量に撃っても効果が無さそうなので、一本に全力を注いで撃ち込む。
そこまでしてようやく、足の防御力と再生力をぎりぎり突破できた。
やはり、最初に足を消せたのは不意打ちだったからのようだ。
にしても、なんで三本足でそんな器用に歩けるの?
亀は私に潜り込まれて、捕捉できなくなったのか、急に攻撃がいい加減になった。
魔力反応で捕捉しようとしても、魔法の残滓が多すぎるようだ。
「巨大だと、こういう状況で不便だよね」
私はそう呟きながら、亀の肛門に超特大『光線』を撃ち込んだ。
「がぁーーー!」
余程痛かったのか、亀が悲鳴を上げながら、足や尻尾を適当に動かして、私を追い払おうとしてくる。
もしも、足に当たったら、即死の可能性すらある。
流石に危険だと思った私は魔力を練り上げつつ、甲羅の上に回り込んだ。
「『崩壊』」
甲羅の上層が消え去るが、そこは一応はドラゴン。
肉までは貫通しない。
「儀式魔法はいつになったら、発動されるのかな?」
私は若干、ため息を吐きつつ、再び魔法を連射した。
◆◇◆◇
私と亀は日が暮れても尚、闘い続けた。
『魔素精錬』を習得していたおかげでこんな長時間の戦闘が可能になった。
闘い過ぎて、色々な魔法が上達したほどだ。
まあ、相手の攻撃も巧みになってきたが。
「聖女様!」
そんな中、魔法使いが飛んできた。
増援が来た!
「どうしましたか!増援ですか!」
「実は迷宮のボスたちが一斉に出現した為、儀式魔法はそちらに当たる事になりました!」
え?
この亀太郎(激戦の最中、渾名が進化した)はどうするの?
「それじゃあ、このアースドラゴンはどうするのですか!?」
「本部は討伐するなり、撃退するなり、奥地に誘導するなりして、どうにかしてくれと言っております!」
「無茶な!」
「頑張ってください!では、私はこれにて失礼致します!」
そう言い残し、魔法使いは去っていった。
確かにまだ迷宮のボスクラスは討伐した記憶が無い。
それが一斉に現れれば、混乱するのも理解はできる。
納得は別問題だが。
にしても、こいつを放置してするなんて選択した馬鹿はどいつだ!
「帰ったら、責任者、張り倒したるからな!」
おそらく、ギルマスの判断では無いだろう。
あの人はそんな馬鹿には見えなかった。
となると、馬鹿貴族、下手すると馬鹿王族が関わっている可能性がある。
大方、戦場を直接見たいとかほざいた挙句、ボスクラスの魔物を見て、こっちに儀式魔法を当てろとか言ったんだろうな。
「現場は現場に任せる!基本中の基本だろうが!なんで現場に口突っ込んでるんだよ!こうなったら、亀太郎に八つ当たりしてやる!」
私は大分、怒りが籠っていそうな魔法を連発した。
いや、魔力には思いが籠るから、実際に籠っているのだろう。
当然なからブチギレても、魔法行使には一切、影響を出していない。
我ながら熟練の技だな。
「このクソ迷惑亀野郎、いい加減にくたばれぇーーー!」
そう言いながら、この激戦で向上した魔力操作能力を全力以上に使い、特級魔法を連発する私。
客観的に見て、凄まじく殺意が篭っている。
しかも、一部の魔法に闇魔法が乗っている。
殺意を超えて、怨念が込められていても不思議ではない。
半日も休憩無しで、たった一人で戦っているのだ。
殺意も湧くというものだ。
「このクソがめぇーーー!」
「がぁーーー!」
亀太郎の何度目になるかも分からない岩の雨が放たれ、途中で分裂した。
それに対処しつつ、亀太郎の顔面に『業火』を叩き込む。
亀太郎が一瞬怯んだ隙に、さらに『崩壊』を三発叩き込もうとするが、亀太郎の『魔力波』によって魔法陣が破壊される。
そして、私を丸呑みしようとしてきた亀太郎から即座に離脱し、残念賞と言わんばかりに『崩壊』を追加で放つ。
今度は首に命中したものの、効果はあまり無い。
距離を取り、亀太郎の内包している魔力量を確認する。
最初の頃の魔力量と比べると、残り一%と言ったところ。
まあ、隠しているだけかもしれないが。こいつ、意外と知性があるからな。
しかも全身、傷だらけで、再生能力も限界になってきたのか、最初のような理不尽な速度は見る影も無い。
だがしかし、私もそろそろ限界だ。
魔力はこの戦いで上達に上達を重ねた『魔素精錬』で無尽蔵に回復できる。
怪我をしても即座に回復できる。
でも、体力や気力、失った血はどうしようも無い。
今は、気合いと根性とやる気で闘い続けているが、そう遠くない内に限界が訪れる。
「亀太郎や、そろそろこの戦いに決着をつけようじゃないか?」
「がぁー!」
言葉が通じたのか、亀太郎は口に魔力を集中させた。
私も膨大な魔力を集めて、詠唱をする。
亀太郎の口の中で魔力は光が迸る程に限界まで圧縮されていた。
おそらく、残りの全ての魔力を注ぐつもりなのだろう。
私も素早く、丁寧に詠唱をし、かつて無い程巨大な魔法陣を展開していく。
本来なら必要な儀式や詠唱を省く代わりに、魔力量でそれらを補う。
師匠のように規模を小さくして発動する事も考えたが、それだと亀太郎のブレスに打ち勝てない為、規模はそのままに、ひたすら構築していく。
必要な魔力量が圧倒的に足りない為、『呪術』で血を魔力に変換していく。
それでも足りない為、亀太郎のブレスの一部を乗っ取り拝借していく。
こうして、魔法陣の大きさこそ超級魔法クラスだが、にしては簡単で粗雑な魔法陣が形成されていく。
亀太郎の口には周りの魔素までもが収束していた。
そして亀太郎の準備が終わったのか、魔力反応の増幅が止まった。
「無属性超級魔法『虚無』」
「がぁーーー!」
亀太郎の口から放たれた超極太ビームのような魔力の塊は途中で分裂を繰り返した。
私に回避させない為だろう。
そんな魔力の塊を『虚無』が飲み込もうとした。
眩い光を放つ白光と真っ黒な光がぶつかり、せめぎ合った。
『虚無』はありとあらゆる物を消し去る魔法だ。
勿論、魔力も。
だが、亀太郎の全力のブレスに込められた魔力は膨大どころの話ではない。
やはり、魔力を隠していたか。小賢しい事である。
互角の闘いをした私たちの全力の一撃だったが、しばらくすると流石に落ち着いた。
結果は、私の勝ちだった。
『虚無』はブレスを全て消し去り、少しだけだが、亀太郎も削った。
少しだけ。
だが、元から傷だらけだった亀太郎にその少しだけが致命傷になったようだ。
私も疲労で『魔素精錬』ができなくなっている。
私は亀太郎の前に降りた。
「がぁ」
「一応、亀太郎もドラゴンだよね。会話できるよね?」
高位の魔物や幻獣は言葉を話す。
オークキングですら、話せたのだ。
『私は負けた。素材を持っていくなり、食べるなり、好きにしろ』
頭に直接響く感じだ。
『念話』と似ている。
ドラゴンはこうやって話すのか。
キングよりも聞き取り易いから助かる。
「なんで王都を向かっていたの?」
『私は寝ていたの。そしたら魔物どもに踏んづけられて起こされて、食事がてら魔物を叩き潰しに行っていたの。そして、お前と戦い、負けた。敗者は勝者に従うのが竜の誇り。私の事は好きにしろ」
そう言えば、そんな伝統があると書いてある本を読んだ記憶があるな。
「じゃあ、私の使い魔になってよ」
『はい?』
使い魔とは契約魔法で契約した魔物の事である。
一昔前までは魔法使いはほぼ全員、使い魔を従えていたらしい。
「好きにしていいのでしょ?なら、使い魔になってよ。私、まだ使い魔がいないからさ」
『わかった。それでどうすればいい?』
「ここに了承しながら魔力を流して」
私は魔法袋から使い魔契約のスクロールを取り出した。
もしもに備えて持ち歩いていた物だ。
流石にドラゴンクラスの契約は想定していない為、仮契約しかできないだろうが、今はそれで十分だ。
『わかった』
私は自分の魔力を流してから、スクロールをドラゴンに当てた。
そしてドラゴンも魔力を流すと、スクロールが燃え尽きた。
それと同時に私とドラゴンの間に魔力的な繋がりが出来た。
「これで、あなたは私の使い魔よ。ところであなたの名前は何?」
『名は無い。勝手に決めて。亀太郎はよしてよ』
「そもそも、メスなの?オスなの?」
『メス』
えっ!
太郎じゃないじゃん。
亀子じゃん。
「じゃあ、亀子で」
『流石に酷い』
お気に召さないようだ。
「それなら、タートルで」
『どちらかと言うと、陸亀だし、そもそも亀から離れてくれない?』
タートルの意味がわかるのか。
「それなら、ヒェロナはどう?」
『もう、それでいい』
ギリシャ語で亀を意味する言葉なのだが。
そして、ヒェロナが了承した瞬間、私は気絶した。
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