第二話 家庭教師
本日三話目の投稿です。
最初の短いプロローグを一話扱いすればですけど。
補足
主人公が「魔法」と脳内で言っているのはこの話では全て生活魔法の事です。
朝は起きたら(ちなみに僕は早起きである)水魔法で水を出し顔を洗い、それを火魔法と風魔法で作った温風で乾かす。
更に下に人がいない事を確認してから窓から水の球を落としたり、温風を出したり、冷風を出したりして、魔力を消費する。
昼間は図書室で主に魔法関連の本を読む。
ほとんどの本は背が届かない所にあるため、ソフィアさんによく取ってもらう。
本を読むのに疲れたら、息抜きに庭で土魔法を使い土人形を作る。
複雑な人形を作ろうとすればするほど、魔力と集中力がいるようだ。
良い修行になりそうである。
他にも光の球を生み出したり、火の球(もちろん安全には気を配っている)を出したりして、本を読んでいる間に回復した魔力を消費する。
夜は気絶するまで魔力を使ってから寝る。
と言うより、気絶する。
こんな日々を僕は送っていた。
そんなある日のことである。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
いつも僕の世話をしてくれるメイドさんにそう言われた。
にしても珍しい、生まれてからほんの数回しか会ったことのないお父さんが僕を呼ぶなんて。
「今、行く」
「かしこまりました」
廊下に出てお父さんの執務室へ向かいながら、「いったいなんの用?」だろうと考えた。
だが、僕の部屋とお父さんの執務室はそんなに離れていない為、思いつく前に到着した。
「お父様、お呼びですか?」
「ティファニーか、入りなさい」
「はい」
返事をしてからお父さんの執務室に入る。
お父さまの執務室は初めて入る。
内装は思っていたよりも質素だった。
貴族の執務室なんて豪華絢爛な部屋だと思っていた。
そんな強ち間違っていない偏見的な考えをしていると、お父さんが話し始めた。
「ティファニー、お前に明日から家庭教師をつける」
ずいぶんと急だな!
と言うか、ただの確定事項の伝達かよ!
まあ、僕も色々と学びたいからありがたいけどさ。
「分かりました、お父様」
◆◇◆◇
そして翌日、本当に家庭教師が来た。
「紹介しよう。この人はエリザさん。お前の家庭教師だ」
「初めまして、エリザ・フォン・アストリアです。これからよろしくお願いします、ティファニーお嬢様」
二十代ぐらいだろうか。
エリザさんは茶毛のロングヘアの綺麗な若い女性だった。
「ティファニー・フォン・アシュトンです。よろしくお願いします、エリザ先生」
今更だが、僕のフルネームはティファニー・フォン・アシュトンと言う。
とても長い。
一応、伯爵令嬢らしい。
「丁寧な挨拶ありがとうございます、ティファニーお嬢様」
こうして僕に家庭教師がつけられることになった。
◆◇◆◇
次の日から早速、エリザ先生の授業が始まった。
「おはようございます、お嬢様」
「おはようございます、先生」
「早速ですが、お嬢様はお勉強は、どのくらい進んでいますか?」
答え方がとても難しい質問だ。
「現代日本の高校一年生レベルです」とは答えれない。
かと言って「国語、地理、歴史もこの国の中等学校の内容ならすでに完璧で、算術に関しては前世で好きだったから、他の教科より得意で、魔法は生活魔法なら複数の属性を同時に行使(異なる属性の同時行使は一般的に難しいとされている)できます」とも答えれない。
嘘を言ってもすぐにバレるだろうし。
「図書室の司書のソフィアさんから算術、国語、地理、歴史を少々、魔法は生活魔法を多少教わりました」
都合よく解釈すれば嘘ではない。
事実でもないが。
「そうですか。では、テストをしますね」
テストは先生が用意した問題を用いて行われた。
僕は程よく手を抜き、この国の初等学校レベルの問題は正解し、中等学校レベルはそこそこ間違えた。
それでも、十分に驚愕されたが。
まあ、三歳児がこんな事すれば驚愕されるよな。
その後、庭に行って生活魔法のテストもした。
生活魔法のテストはほとんど手を抜かなかった。
もしかしたら、初級魔法や下級魔法を教えてもらえるかもと思ったからである。
実際、驚かれたが「初級魔法を教えてくれますか?」と尋ねたところ、「御当主様の許可を得れましたら」と言われた。
つまり、お父さんが許可を出せば、教えてもらえるということだ!
お父さん、許可を出してくれよと心から願った。
◆◇◆◇
その日の夜、執務室にてアシュトン伯爵は家庭教師になったエリザからの報告を受けていた。
「エリザ子爵令嬢、ティファニーはどうだった?」
「三歳とは思えぬほど聡明で、既に初等学校の内容は完璧のようです。さらに生活魔法も完璧に行使していました。マナーや礼儀作法には疎いようなので、これからはそちらを中心に教育していく方針です」
「いったい、どこでそこまでの知識を得たのだ?」
「図書室の司書のソフィアという方から教えてもらったと申しておりました」
「なるほど、確かにあの子は昔から図書室に通っていたな」
「もう一点、お伝えしたい事がございます」
「なんだ?」
「ティファニーお嬢様が『初級魔法を教えて!』と申しておりました。どうやら、本格的に魔法を教わりたいようです」
「そうか、だがまだあの子は幼い、少々危ないと思うのだが。エリザ子爵令嬢はどう思う?」
「お嬢様は魔力量がとても高く、魔力を暴走させる可能性もあります。しかし、だからこそ、今のうちから魔法教育を施すべきかと」
魔力量の多い貴族の子は適切な教育を施されなければ、魔力が暴走して死に至ることもある。
そして、幼い時から魔法教育を施されると魔力量が上がると言われているため、貴族の子には早い時期から魔法を教える事が推奨されている。
だがしかし、あまりにも幼いと逆に魔法が制御できずに魔力暴走を引き起こす事もある。
故に伯爵は悩んだ。
無論、ティファニーのことを心配してではない。
魔力量が高い子息や令嬢を輩出する事は貴族にとって一種の名誉である。
だからこそ、貴族は己の子の魔力量を増やそうとして躍起になる。
だからと言って、死なせてしまっては、醜聞になり、家名に傷が入ってしまう。
伯爵は熟考した末、結論を出した。
「わかった。では初級魔法を教え、様子を見て、大丈夫そうならそれ以上の魔法も教えることを許可する。練習には屋敷の訓練場を使うといい」
「ありがとうございます」
こうしてティファニーの望み通り、魔法教育がなされることになったのであった。
ティファニーの話し方がおかしいと思った方、誤字脱字報告か感想で教えていただけるとありがたいです。
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