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第二十四話 『加速魔法』講義

私はタロとリゼと言う可愛らしい兄妹たちに『加速魔法』の講義をしていた。

私は『念力(サイコキネシス)』で道に落ちていたなんの変哲も無い、小石を拾った。

そして、それを普通に腕で外に投げた。


「さて、諸君。何故、石は外に飛んでいったと思う?」


「そりゃあ、投げたからだろ」


「そうだと思います」


「私は石を投げた。つまり、それは私は石に力を加えたと言える」


「は?」


「理解できなくは無いのですが、わかりにくいです」


私はタロの腕を掴み、力を加えた。


「私は今、タロの腕を掴んでいる。つまり、タロの腕に力を加えていると言える」


「それは理解できるぜ!」


こういうタイプにはこうやって教えた方が良かったか。


「そうですね」


「『加速魔法』」


私は今度は『加速魔法』でタロの腕に力を加えた。


「このように、『加速魔法』は物体に力を与える事ができる」


私は馬車の外からまた小石を拾って、今度は『加速魔法』で投げた。


「すげぇー!これを極めたら相手を押し潰せるじゃん!」


「相手の魔力抵抗の高さ次第ではできるけど、非効率だよ。タロはただでさえ魔力量が低いのだがら、魔力の運用方法は考えた方がいいよ」


「あの、それであの五層のボスを倒せますか?」


「余裕、余裕。しかも、この魔法は無属性魔法だから、水属性のリゼでも習得できるよ」


「威力が低そうなのですが」


「今のはね」


私はそう言ってから、指パッチンした。

そして、外に生えていた木が折れた。


「今のは外にあった小石に無詠唱で『加速魔法』をかけた結果だ。わかりやすいように、魔力を感じ取り易くやった」


「たったのあれだけの魔力でここまでの威力が出るなんて」


まあ、単純に無詠唱だから精霊に支払う分の魔力と渡す際のロスが無くなっているから効率が良いのだが。

それでも、『石弾(ストーンバレット)』と比べても、効率が結構いいはずだ。


「これを目指して頑張りなさい」


私は折った木を樹木属性と言うエルフが好んで使う派生属性の魔法、『木再生(ウッドリバイバル)』で治しながら、そう言った。


「すげぇー!折れた木が治っているぞ!」


「それは気にしないでください。関係ないので。さてそれでは、呪文を教えます。頑張って聞き取ってね」


本当は精霊語を習得させてから、呪文の意味を理解した上で、呪文を覚えさせるのが理想だが、仕方がない。

頑張って真似して発音してもらおう。

この国の王立魔法学院ですら、この教育方針なのだ。




◆◇◆◇


なんとか、王都に着くまでにリゼには『加速魔法』を習得させられた。

と言っても、全文詠唱で成功率が半々と言う有り様だが。

まあ、往復練習をすれば一人前の『加速魔法』使いになるだろう。


「こっちです。ついてきてください」


私はリゼたちに先導されながら、王都を歩いていた。

魔法具師であるリゼたちのお父さんに興味があると言ったら、家に案内してもらえる事になったのだ。

お父さんの技量次第ではアシュトン領に連れて行くことも考えている。

勿論、お父さんの意思は尊重する。

謁見が終わったら、アシュトン領で魔法銃の量産を始める予定なのだ。

魔法陣の溝を掘ったり、部品を組み立てたりするのは誰でもできる。

アシュトンフォードで募集をかければやる気に満ちた若者が集まる事だろう。

だが、魔法具職人はそう簡単には増やせない。

しっかりと面接して技量を確かめた上で雇う必要がある。

なぜなら、魔法具の性能は魔法具師の技術に大きく左右されるからである。

しかも、魔法具師の数自体、少ないのだ。

だから、埋もれている魔法具師がいたら、是が非でも連れて行きたいのだ。


「ここだぜ!」


私は着いた店を見上げた。

なるほど。売れない理由がわかった。

単純に立地が悪い。

魔法具屋という物は普通は表通りにある。

なぜなら、客層が裕福層だからである。

だが、ここの店は裏路地と言うべき場所に存在していた。


「お父さん!会ってもらいたい人がいるの!」


私たちが店に入ると、リゼが大声でお父さんを呼んだ。

私は店を見渡した。

流石に売られている魔法具の質を『感知魔法』で調べる事はできないが、パッと見た感じ、質は良さそうだった。

魔法陣を形取っている魔鉄の純度は輝きからして、低そうだが、逆にあの純度の魔鉄にあそこまでの魔力を込めるのは難しいはずだ。

まあ、質の割に値段が高めな気がするが、それは経営が苦しいせいなのだろう。


「どうしたんだ?リゼ?」


店の奥からお父さんらしき人が出てきた。


「紹介するね。この人はティファニーさん。凄腕の魔法使いなの。お父さんに会ってみたいって言われたから連れてきた」


「あの、ここは貴族様がくるような上等な店ではないのですが」


ちらっと見えた髪質から私が貴族か、貴族の関係者だと判断したようだ。


「えっ!お前、貴族だったのか!」


驚きを全身で表現しているタロに対して、リゼは薄々気がついていたようで、少し驚いた顔をしているだけだった。


「タロ!失礼だろ!貴族様、ごめんない。うちの子が無礼を働いたて」


「気にしてないですよ。さて、本題に入ってもいいですか?」


「どうぞ」


「実は新しい事業の為に魔法具師を募集しているのです。腕次第では、我が領に厚待遇で迎えたいのです。どうですか?」


「具体的にはどのような待遇なのですか?」


「週休一日で、寮付き、勿論家族と一緒に住んでもいいですよ。仕事内容は指定の魔法具を作る事です。給金は作った分だけ払います。我ながら結構な厚待遇ですよ」


週休一日とかブラックだと思ったそこのあなた!

こんな条件でも、この世界では超ホワイト扱いなのだ!

街の工場とかの待遇なんて比べ物にならないぐらいに酷い。

十八時間労働、超低賃金、児童労働、各種ハラスメント。

本当に比べ物にならないな。


「受けてくださいますか?」


「是非お願いします」


私はその後、念の為に実際の作業を見せてもらい、私の目は間違っていなかった事を確信して、店を出た。




◆◇◆◇


私は店を出て後、リゼたちと一緒に屋台で焼肉の串刺しを少し遅い昼食として食べ、アイスクリームをデザートに食べ、買い食いを満喫し、親睦を深めた。

そしてお腹を満たしてから、冒険者ギルドへ向かった。


「お父さんを雇ってくれてありがとうな!」


「まだ契約はしていませんよ。約束です。工場と寮の建設は指示してから王都に来ましたが、まだ完成していませんでしょうからね」


「何を作らせる予定なのですか?」


「秘密です。まあ、量産が始まれば、常識が変わるでしょうね」


主に戦場(対人、対魔物、問わず)でだが。

しばらくすると、冒険者ギルドに着いた。


「着きましたね。冒険者ギルド」


私たちが中に入ると、中にいた冒険者に注目された。

一部は私を見て怯え、一部は私の魔力遮断を見破り警戒し、一部は舐めているな。

やはり、魔力遮断は強者と弱者の見分けるのに便利だな。


「おいおい、いつからここはガキの遊び場になったんだ?」


私はフードの中でほくそ笑んだ。

また、不良冒険者(カモ)絡んで来た(のこのことやって来た)なと。

そして十分後、私はほくほく顔で大金を仕舞っていた。

私では勝てないぐらい強い冒険者の参戦はお断りしたので、大金を稼ぐ事ができた。


「ティファニーさん、容赦が無いですね。しかも弱い人だけを集めて、お金をむしり取るなんて」


「こんないたいけな少女を集団で虐めるような趣味をお持ちの方に容赦はいりません。にしても、換金が終わった直後だったようですね。昨日よりも大金が稼げました」


「昨日もやっていたのかよ」


昨日、金をむしり取られた冒険者たちが「いたいけとは?」と野次を飛ばしてくるが、無視する。

私は弱い冒険者(カモ)たちからの恨みのこもった視線を無視して、買い取り場に向かった。


「買い取りをお願いします」


「おう、ここに出せ」


私は魔法袋(マジックバック)から二十層のボスの残骸を出した。

『爆裂槍』で雑に解体したため、見た目が石ころの山である。

先程、搾り取った冒険者の表情が面白い。

あたかも、「こいつ、自分で稼げるくせに俺たちから金を巻き上げたのかよ!」と言いたげだ。

リゼたちは驚きで目が点になっている。

ちなみにだが、このミスリルゴーレムの難易度はAランクに昇格すると期待されているようなBランクパーティーが頑張って倒せるぐらいだ。

まあ、相性の問題もあるため、一概には言えないが。


「こいつは魔鉱迷宮のボスか?」


「そうです」


「どうな雑な解体をしたらこうなるんだよ?」


「爆発する魔法で解体しました」


「雑過ぎるだろ。まあ、溶かしてインゴットにするから問題はないがな。こんな雑な解体ができない魔物を討伐した時用にでかい物も入る魔法袋(マジックバック)を買う事をおすすめするぞ」


「私もそうしようと思っていました。後で、道具屋で買ってきます」


私はそう答えると、リゼたちの所に向かった。


「ティファニーさん、あんな巨大なゴーレムを一人でどうやって倒したのですか?」


「『加速魔法』の応用だよ。まあ、今回は魔力量でゴリ押ししたようなものだから、参考にしないでね」


魔力量によるゴリ押しでは最下層には辿り着けないため、もっとエレガントでスマートに倒せるようにならなくては。


「リゼ、魔石の換金してきたぜ」


タロが元気に走ってきた。

手には小銀貨が握られている。

この二人が家計を支えられるようになるのはまだまだ、先の事になりそうである。


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