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第二十一話 Bランク昇格

この世界のありとあらゆる物には魔力が多かれ少なかれ宿っている。

その魔力を感知する魔法こそが『感知魔法』なのである。

その性質上、魔法が行使されると魔力場が乱れ、感知できなくなるという弱点がある。

私はそんな『感知魔法』の反応に一部だが違和感を抱いた。

魔力が薄い場所があるのだ。

勘違いだと思うほどの薄い違和感だが、私は鎌をかけてみる事にした。


「三秒数える間に出てこなかったら攻撃するよ」


私がそう言って魔法銃を構えた。

すると。


「待ってくれ!俺たちは冒険者だ!」


本当に出てきた!

いないと思っていたけど、本当にいた。

やはり、なんとなく抱いた違和感でも大切にする事が大切だな。


「それで、冒険者が何の用?魔力遮断していたよね?敵?」


「待て、俺たちはAランクパーティー『風の翼』だ!冒険者ギルドから魔物を狩り回っている人物とここにあったオークの集落の調査依頼を受けてここに来た!」


その冒険者はAランク冒険者の証である、金色のプレートを見せながらそう伝えてきた。

冒険者ギルドのプレートの複製は私でも難しい。

偽物でないだろう。

本当に冒険者のようである。

にしても、魔物を狩り回り始めたのは今日の明け方の頃なのに、冒険者がもう派遣させるなんて、流石は王都の感知網だな。

はあ、駆け出し冒険者の懐にダメージを入れ過ぎたか?

私が思うに狩場潰しがランク上げに最適なのだが、やり過ぎたな。


「そうなのね。私はDランク冒険者のティファニー。多分、魔物を狩って回っていたのは私のことよ」


私がDランクだと言うと、怪訝な顔をされた。


「色々と話を伺いたい。冒険者ギルドまでご同行願えないだろうか?」


「いいよ」


駆け出しの狩場を潰した事を怒られるかな。

私も初めての魔物狩りだったから許してほしい。




◆◇◆◇


私たちは一緒に王都に向けて歩き始めた。

まあ、『身体強化魔法』を使って爆速で、と但し書きが付くけど。


「なあ、ティファニーさんはなんで魔物を狩っていたんだ。見たところ、良いとこのお嬢さんなんだろ?」


「私は趣味が魔法の研鑽でね。せっかく王都に来たのだから、迷宮に潜って魔法に使えそうな素材を探したいのよ。でもね、ギルド管理の迷宮に入るには最低でもCランク冒険者になる必要があるでしょ?だからランク上げの為に狩り回っていたのよ」


「そうなのか。でもな、あそこはもっと弱いやつの狩場なんだ。もっと違う所で狩ってくれ」


「あれが一番効率がいいのよ。まあ、私も初めてだったから許して欲しいのだけど」


「あの強さで初めての魔物狩りかよ!」


「ずっと修行だけをしてきたからね。強さには自信があるのよ」


「ちなみにどんな修行を?」


「毎日、気絶寸前まで魔力を使って、師匠が作ってくれた激マズ魔力回復薬を飲んで、また魔法を使って、回復して、睡眠と食事の時間以外はずっとこれを繰り返したわね」


「眩暈と吐き気がするはずなのだけれど、どうしたの?」


「気合いでどうにかしたわね。まあ、途中から慣れたけどね」


「あなた、その修行を一日で何時間ほどしたの?」


「二十時間以上ぐらいかしら。足りない睡眠時間は薬と魔法具でどうにかしたわ」


「あの、その修行方法は一般的に頭がおかしい修行と言われているのだけど」


頭おかしい修行と言われていると言うよりかは、魔法使いが理論上可能(実際は不可能)な最高効率の修行なのだが。


「らしいわね。でも、これが一番効率がいいのよ。それに私は適性属性が無属性だから、人一倍に練習しないと器用貧乏になるのよ」


「そうなのか」


なんか若干、ひかれた。

解せん。




◆◇◆◇


それからしばらく質問に答えて、たまに私も質問しているとすぐに王都の門に着いた。

列に並んだが、割と直ぐに中に入れた。

そして、真っ直ぐにギルドに向かった。

王都の冒険者ギルドはとても大きかった。

中に入ると冒険者たちは出払っているようで閑散としていた。

まあ、一応、酒を飲んだくれている不良冒険者はいるが。


「おいおい、『風の翼』ともあろうお方がそんなチビのお守りかい?」


はあ、どこの冒険者ギルドでもこう言うやつはいるんだな。

例のあれをやるか。


「さて、こんな時間から飲んだくれている中途半端に実力のある冒険者ども!勝負だ!私に勝てたら、小金貨三枚を進呈してやるぞ!」


私がそう宣言すると、一気にざわついた。


「上等だ!俺は相手が餓鬼でも容赦しないからな!」


「参加料は大銀貨三枚でいいわよ」


私は満面の笑みを浮かべていた。 

『風の翼』の皆さんは引き攣っていた。




◆◇◆◇


十分後、私はほくほく顔になっていた。


「あんた、容赦が無いな」


「魔力がほとんど残っていない、いたいけな少女を寄ってたかってイジメようとする奴等に容赦なんて不要なのです」


「ほとんど残っていないとか言いながら、上級魔法を発動していたやつが何を言う?」


どのくらいでほとんど残っていないと言うかは人それぞれだと思う。


「解釈が違うようですね」


私はそう言ってから、解体場に向かった。

本来は大きな魔物を解体するための場所だが、大きな素材や数が極端に多い素材の買い取りもしているのだ。


「魔石と討伐証明の部位の買い取りをお願いします」


「それなら、ここに出せ」


私は魔法袋(マジックバック)から魔石と討伐証明の部位を全て吐き出した。

ただし、オークキングの魔石だけはとっておいた。

記念品である。まあ、魔石弾に加工する予定だが。


「どんなけ、狩ってきたんだよ。数えるのが大変じゃあねぇか」


「頑張ってください」


私は解体場を後にし、ホールに戻ると、カイさんたちに呼ばれた。


「ティファニーさん、ギルドマスターがお呼びだ。ついてきてくれ」


私はカイさんたちについていき、ギルドの奥に行った。

ギルドマスターの部屋は二階の奥にあった。

部屋に入ると、中には大柄で逞しそうな男性がいた。


「王都冒険者ギルドマスターをしているエルドだ。噂の聖女様にお会いできて光栄だ」


エルドと言えば、公爵家の人か。たしか、三男坊だったけ。まあ、今はギルドマスターと冒険者の関係だから気にしなくてもいいか。

にしても私が聖女だと知っているとは流石はギルドの情報網だな。いや、公爵家の情報網か?


「ティファニーと申します。一応、教会の聖女です」


政治的な都合でなった、と但し書きがつく聖女だけど。


「ティファニーさん、聖女だったの!」


「不良冒険者から金を巻き上げる聖女が存在するなんて!」


「言っていなかったのか?」


「はい。私は聖女としてではなく、冒険者としてここにいるので」


「そうか。さて、本題なのだが、単刀直入に言おう。初心者の狩場を潰すのはやめてほしい」


「その節はご迷惑をおかけいたしました。お詫びに魔石と討伐証明の代金で冒険者たちにただ酒を振る舞っておいてください」


「いいのか?あいつら、ただ酒だとアホみたく飲むぞ」


「ええ。わかっていますよ。それなりに稼いだつもりなので、大丈夫ですよ」


それに私が欲しいのはギルドのランクであって金ではないからな。


「わかった。そうしておこう。それとオークの集落の件なのだが、見事だった。『風の翼』からの報告だとオークキング相手に無傷だったそうじゃないか?」


「相手が魔法使いに空中戦を挑む愚かなオークだったから勝てたのですよ。実際、もしも持久戦をしていたら、私の魔力が尽きていた可能性もありますからね」


「だとしてもだ。そこまでの実力を持った者をDランクにしておくのは勿体無い。私の権限でBランクに昇格しておこう」


「ありがとうございます」


「参考までに聞いておきたいのだが、この後は魔物を狩る予定はあるのか?」


「迷宮に潜って、荒稼ぎする予定です。魔鉱石が掘られる迷宮で魔晶石を大量に手に入れたいですね。あれは買うと高いですからね」


魔晶石とは簡単に言うと魔力が貯められる石だ。

水晶に魔力が宿り、変異した物だと言われている。

そんな魔晶石だが、魔法使いからの需要がとても高く、値段も高くなっており、そのくせ質が終わっているのだ。

だがら、自分で掘りに行くのだ!


「なるほど」


「と言う訳で、王都の近くで魔水晶が掘る事のできる迷宮を紹介してください」


「それなら、王都の東の方に魔鉱石がよく採れると評判の迷宮があるぞ。鉱石系の魔物しか出ないから、対策も簡単だ。その分、人気だから冒険者がたくさんいるだろうが」


「混んでいても深い階層まで潜ればいいだけの話です。元より、浅い階層の低品質な物には用が無いので」


「では、後でBランクのプレートと共に地図を渡そう。その時に迷宮の詳細も聞くといいだろう。勿論、地図代はサービスだ」


「ありがとうございます」


こうして、私の王都冒険者ギルドマスターとの会談は終わった。

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