第十六話 山賊たちへのサプライズプレゼント
私は今、馬車に乗っている。
国王に謁見するために王都に向かっているのだ。
馬車ってなんか、速そうなイメージがあると思うのだが、そんな想像に反して馬車はとても遅い。
そう、遅すぎるのだ。馬車は!
「師匠、『加速魔法』使ってもいいですか?」
「車列を乱さないように上手くやってくださいよ」
『感知魔法』で周囲の状況を把握してから、『加速魔法』を発動した。
とは言え、少しだけである。
精々、馬車を引いている馬が重さを感じなくなるぐらいの効果しかない。
「全員に『身体強化』をかけますか?」
「そんなに急いで、どうするのですか?」
「急いでません。暇なのです」
「まあ、既に街を出て一週間が経っていますからね」
「後、どのくらいで王都に着きますか?」
「早ければ、一週間ほどですかね。まあ、なにかしらのトラブルが起きるのが馬車旅ですからね。もっとかかると思っておいてください」
はあ、そんなにかかるのか。
出発当初は良かったのだ。
初めての外の旅だったから。
色々と師匠に聞いていて面白くてよかったのだ。
でも、だんだんと飽きてくるのだ。
馬車の乗り心地は意外と最初は悪くなかった。
馬車の仕組みは知らないが、職人たちが創意工夫を凝らしたのだろう。
道も途中までは良かったのだ。
だが、途中から悪路になり物凄く揺れるようになったのだ。
「師匠、馬車から降りていいですか?歩いた方がマシなのですが?」
「駄目です。貴族たるもの威厳を持っていなければ」
まさか、悪路がこんなに辛かったとは。
はあ、辛い。
全ては我が領が辺境なのと隣の領地が街道整備をまともにやっていないのが悪い。
私はしばらくアシュトン領の地理を恨んだ。
◆◇◆◇
悪路を抜けると揺れがマシになった。
「師匠、後どのくらいで次の宿場町に着きますか?」
私は車酔いならぬ馬車酔いを『治癒』で治しながら尋ねた。
「私にもわからないので『感知魔法』で調べてください」
「あれは短距離用なのですが?」
「そこはいつもの魔力量のゴリ押しでどうにかしてください」
「なんか私が脳筋みたいな言い方ですね」
「いえいえ、魔法大好き系魔法少女だと思っています」
ちなみにこの世界にもなぜか魔法少女と言う概念がある。
大方、昔の転生者のせいだろう。
「はあ、ではやりますよ」
そう言いながら私は魔法袋から魔法銃を取り出した。
杖として使うためである。
私は無詠唱で『感知魔法』を発動し、範囲を前方に絞った。
そして、魔力を馬鹿みたく注いだ。
「中級魔法に魔法陣を暴走させずにそこまで魔力を注ぐとは流石ですね」
「師匠、『感知魔法』の制御に集中したいので静かにしてください」
「わかりました」
私は『感知魔法』によってもたらされる情報の取捨選択をした。
『感知魔法』は魔力を放出して、周りの地形や魔力反応を調べる魔法だ。
私が開発した『探知魔法』よりも高い精度の情報が色々手に入るが、魔力消費が激しい上に、情報が入ってき過ぎて、頭がパンクしかける魔法でもある。
今回はとんでもない範囲を探知するのだから、習得する情報の取捨選択は必須だ。
私は森の地形情報を軒並み破棄しながら遠くの方を探知した。
そして、気がついた。
「師匠、前方千五百mあたりに山賊がのような魔力反応があります」
「騎士団や自警団の可能性は?」
「どう考えても待ち伏せしていますね。道の両側にそれぞれ二十七ずついます。しかも魔法使いらしき反応が二つありますよ」
「『感知魔法』を使った事に気が付かれた可能性は?」
「端っこを感知した時に慌てて魔力を一旦引っ込めたので多分、大丈夫だと思います。今は薄くした魔力で感知しています」
「そうですか。どうしますか?」
「いや、『どうしますか?』と言われても」
「貴女は貴族なのです。いざという時に決断をできる存在でなくてはなりません。幸い、この戦力ならどんな愚策でも大丈夫なので、安心して決断の練習してください」
「既に練習相手にしか考えていないですね」
「あの程度の戦力なら私たち二人で殲滅できるでしょ?」
「それはそうですけど」
「さて、どうしますか?」
「先制攻撃で殲滅します」
補足だが、もし相手が賊ではなかったとしても、この世界ではあんな紛らわしい布陣をしている方が悪いとなる。
物騒な世の中だ。
「半殺しにしてくださいね。町に連れて行けば報奨金が出るので」
「はあ、わかりました」
「御者さん、止めてください」
私は扉を開けてそう伝えた。
「どうなされましたか?」
「前方に山賊がいます。五十四ほど」
「そんなにいるのですか!?」
「私が先制攻撃するので安心してください。では『飛行魔法』」
私は『飛行魔法』で馬車の上に登ると『拡声魔法』を発動した。
「皆さん、前方に山賊がいます!私が先制攻撃するので皆さんは捕縛の用意をしてください!」
さて、どの魔法を使おうかな?
魔法銃は殺傷能力が高過ぎるからな。
『爆裂槍』にするか。
今更だが、『爆裂槍』には色々種類がある。
威力が凄い版、射程が凄い版、速度が凄い版などなど、色々ある。
全部同じ名前だが。
今回は殺傷能力低め版にしよう。
「『爆裂槍』」
とりあえず十本の『爆裂槍』を投げた。
「綺麗に飛んでいきましたね」
「師匠、取りこぼしは何名いますか?」
『爆裂槍』は着弾すると魔力が撒き散らされるため、一時的に『感知魔法』が使えなくなるのだ。
まあ、『爆裂槍』に限らず、魔法全般がそうなのだが。
なので、相方に『魔力感知』に専念してもらうと楽なのである。
「魔法使いらしき反応は健在ですね。咄嗟に『魔法障壁』でも張ったのでしょう」
「ちょうど、こちらも再捕捉しましたので、『爆裂槍』」
今度は威力も速度も共に高くて、追尾機能まで付けた槍を発射した。
「全滅しましたね」
「そうなんですか。やはり、『爆裂槍』が着弾すると『感知魔法』が乱れるのは修正すべきですね」
「そうですね。やれたかどうかが分からなくなるのは欠点ですね」
「いつかは改良できるようにしたいものです」
目視確認でもするか?
「そうですか。では、山賊どもの回収をしましょう。いい稼ぎになります」
「既に騎士たちが急行して確保してますよ」
「そちらの事ではなく、あいつらの本拠地に居残っている奴等の事ですよ」
「場所が分からないのですが?」
「そこは、お嬢様の魔法でどうにかしてください」
ああ、なるほど。
つまり、闇魔法で尋問しろと言う事か。
「わかりました。では、聞き出してきます」
私は自分の体に『加速魔法』をかけて吹っ飛んだ。
一瞬で賊の捕縛作業をしている騎士たちの所に着いた。
そのまま着弾すると大怪我するので、体を『防御魔法』で覆い、さらに逆向きに『加速魔法』をかけた。
これ、新手の攻撃方法として使えそうだな。
敵地に強襲できそうだ。
遠くから吹っ飛んで、魔法を使わずに重量で落ちれば、感知されなさそうだしな。
「なっ!お嬢様!空から降ってこないでください。賊の反撃と勘違いするではありませんか」
「ごめんなさいね。でも、この移動方法が楽なのよ」
魔法の制御と体を動かすの二択だったら私の場合、前者の方が楽なのだ。
「さて、こいつらの中で一番偉そうなのは誰かしら?」
「おそらく、こいつかと」
騎士は重症の魔法使いを指差した。
「『爆裂槍』が直撃したようね。『治癒』」
情報を聞き出す前に死なれたら困るので血止めだけはしておく。
「気絶してるわね」
私は『雷撃』を無詠唱で威力を落として撃った。
「ぐはぁ!」
「起きたわね」
「なんだ!?何が起きた!?」
「うるさいわね。まあ、元気があって何よりだわ。さて、あなたには二つの選択肢があります。死ぬほど痛い目に遭ってから拠点の場所を吐くか、楽に吐くかの二択です」
「俺は仲間を見捨てねぇぞ!」
「そうですか。残念です。『苦痛』」
『苦痛』はその名の通り、相手に苦痛を与える闇属性魔法である。
闇魔法使いから教えてもらった。
とても尋問に便利だ。
「グハァッ!」
「言いますか?」
「誰がお前なんかに言うもんか!」
「『苦痛』」
魔力を前回の三倍ほど込めた。
「グァーーー!」
「さて、言いますか?」
私はにっこりと笑みを浮かべながら聞いた。
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