第十五話 魔法銃の虚しい発表会
花粉が辛い季節になりましたね。
翌日、私はお父さんに頼んで屋敷の訓練所を貸し切りにしてもらった。
そんな訓練場に私は魔法具化した銃を持って立っていた。
今更だが、銃の見た目は火縄銃のような形(ただし発射機構は無い)をしていて、装飾は一切無い無骨な感じだ。
耐久性と精度はガストンさんのお墨付きだ。
「遂に、銃が完成しました。と言う訳でお披露目会を開催いたします!」
パチパチと拍手がなるが、虚しい。
ガストンさんと師匠の二人しかいないのだ。
武器である為、閲覧料さえ払えば、誰でも見られる魔法具協会で発表する訳にはいかないのだ。
「結局、どんな機能をつけたんだ?」
「見てからのお楽しみです。では、やりますよ」
銃を的に向かって構えて、魔力を流した。
すると、ドカン!、カンッ!、ドッカーン!と音が響いた。
弾種を変えて撃ってみた。
「このように連射ができるようにしました。さらに魔力を流す場所を変える事で弾種を変えられるようにしました。まあ、その操作が面倒なのですが」
「弾は何種類あるんだ?」
「何種類もありますよ。普通の弾、榴弾、徹甲弾、徹甲榴弾、魔力弾、焼夷弾、色々機能詰め合わせ弾などなど、様々な弾を撃つ事ができます。速度は調整が効くように、わざと魔法陣を刻みませんでした。ちなみに『追尾魔法』を加えることもできますよ」
「他にはどんな機能があるんだ?」
「こんな機能もつけました」
私は銃を空に向けて、魔力を大量に込めた。
そして、引き金を引いた。
ドォッゴーンと、圧縮されて超高密度になった『魔力弾』が放たれ、空中で大爆発を起こした。
我ながら、地面に撃たなくて正解だった。
「このように魔力を溜めて撃つ事ができます。威力と射程は込めた分だけ上がります。ちなみに、これ単体で撃つ事もできますが、弾に絡めて撃つ事もできます」
「最早、『魔力弾』ではなく、『魔力光線』ですね」
「師匠、その名前はダサいのでやめてください」
「あんたら、あんな威力の魔法を見てよく平然としているな」
「「魔法使いですから」」
はもった。
「意味がわからん。てか、名前なんて適当に決めればいいじゃねぇか。どうせあれも登録しないんだろ」
「私たちは国王陛下に仕える臣下なので、兵器に転用できる物はあまり公表できないのです。それでも、名前はしっかりと決めないといけないのです」
「あっ!師匠、『加速魔法』も登録したら駄目だったじゃないですか!あれは兵器に使ってこそ、真価を発揮する魔法と言っても過言じゃありませんよ!」
「私もまさかあれがこんな強力な兵器になるとは思いませんでした。まあ、過ぎた事はいいのです。公開しなくても、誰かがいつかは模倣するので」
「では、次の機能を紹介します!」
私は魔法袋からスコープを取り出した。
「それは望遠鏡!」
「違います。スコープです」
以前、ガストンに頼んで作ってもらったのだ。
「これを銃に付けます。すると、遠くの敵を狙撃する事ができるようになります」
「無属性魔法の『望遠魔法』を使うのは駄目なのですか?」
「魔力を使ったら相手に存在を気取られます」
「つまり、狙撃用ですか。どれだけ離れたところから狙うつもりですか?」
「最低でも三kmは離れた場所からやりたいですね」
今更だが、この世界の距離の表し方は前世と一緒だ。
気になって調べたら、距離の表し方を統一した人物も名前からして転生者だと言う事がわかった。
まあ、今はそんな事はどうでもいい。
「そんな距離、だれも感知できませんよ。そもそも、弾の生成に魔力を使うのですよね?」
「そうなんですよ。しかも、発射にも魔力を使うのです。それに弾自体に魔力が篭っているのです」
「そうですね」
「そこで、私は考えました。魔力を感じ取られずに、狙撃をするにはどうしたらいいのかを」
「勿体ぶらずに早く言えよ」
「雰囲気と言う物を理解してください。まあ、いいでしょう。これぞ、私が開発した弾、名付けて魔石弾です!」
私はそう言って、魔法袋から取り出した水晶のような弾を掲げた。
「弾の形をした魔石か?」
「それだけではありません。魔法陣を刻んでおきました」
ちなみにだが、魔石に魔法陣を刻むやり方は魔法具の時とは違う。
魔鉄を使うのではなく、直接魔力で書き込むのだ。
「魔石に魔法陣を刻んだ場合、即座に魔法が発動するはずですが」
「その通りです。私も初めて魔石に魔法陣を刻んだ時は怪我をしかけてしまいました。そこで、私は魔石の魔力が着弾と同時に魔法陣に流れるようにするべく、工夫しました」
「ちなみに、その魔石はどこから持ってきたのですか?」
「作りました。魔力を圧縮して、さらに圧縮すると完成します。効率は驚く程に悪いのですが」
「さらっと、凄い事してやがるな」
「そうですね。魔力操作能力が余程高くなければ、出来ませんね」
「とにかく、私はその問題を解決すべく、『保護魔法』と言う魔法を開発しました。この魔法は魔石の中の魔法陣を魔力で包み込んで発動しないように保護するという物です」
「おおー!」
「そして、着弾すると衝撃により魔法が崩壊し、保護されていた魔法陣が発動するのです!欠点としては『保護魔法』を適当にかけると、保管中に暴発する事ですね」
「割と危ない構造ですね」
まあ、確かにいい加減にやると暴発率、不発率が凄まじい事になるけど。
「なんかよくわからんが、すごい魔法なんだな」
「そうなのです。素晴らしい魔法なのです。まあ、『封印魔法』の呪文を少し変えただけですが」
「発射の魔力はどうするのですか?」
「『隠蔽魔法』で隠します」
「そこは普通なのですね。まあ、お嬢様の技量なら上手く出来るとは思いますが」
「弾に込められた魔力はどうやって隠すんだ?」
「それは諦めました。無理なので。速く撃てば、反応出来ないと思うので大丈夫でしょう」
「今更だけどよ、何を想定してるんだ?」
「作りたかったので作っただけです。では、撃ちますよ。魔石弾は実験用の弾しか撃った事がないので、早く撃ちたいのです」
私は魔石弾を装填して、一番遠い的に向かって銃を構え、スコープを覗いた。
そして、『隠蔽魔法』で隠しながら魔力を流して発射した。
音も閃光も無く発射された弾は的に命中し、爆発した。
「どうでしたか?」
「確かに発射までは、ほとんど魔力を感じませんでした。『隠蔽魔法』の腕を上げましたね」
「練習しましたから」
「威力もすげぇな」
的を確認すると、的は消えていた。
跡形も無く、吹き飛んだようだ。
「魔石は崩壊すると、魔力を一気に放出しますからね。その魔力を魔法に使うと、このようになります。これでも魔力のロスが大きいのですよ。あの魔石は上級魔法五回分以上の魔力を持っていましたからね」
「刻む魔法を変えれば色々とできそうですね」
「そうですね。では、次の機能を紹介しましょう!」
「まだあるのかよ!」
「これの次で最後です」
「よくもまあ、そんなに機能を詰め込んで素材が耐えられますね」
「職人の腕がよかったのでなんとかなりました。では発表します」
私が銃に魔力を込めると、剣が伸びてきた。
「『魔力剣ですか。私、教えていないはずなのですが」
「魔法協会で呪文を調べてきました」
魔法協会は閲覧料を払えば呪文を閲覧する事ができるのである。
「これで、近接戦もできます」
「魔法使いに近接戦で負ける戦士なんてそうそういないと思うのだが」
「そこに近接魔法戦のプロがいますが?」
「なんか他の機能と比べると霞んで見える機能ですね」
「最後の機能はその分、凄いので期待してください」
「ほう。なんか凄そうだな」
「では、最後の機能を発表します!最後の機能の魔力増幅機能です」
「なるほど、魔法具に杖としての機能を入れましたか」
「そうです。魔法協会で精霊石を買ってきて、組み込んだのです。杖としては勿論、これのおかげで各種機能の魔力量を削減する事に成功したのです!」
「俺は魔法の事はわからんが、便利そうだな」
「そうですね。魔力の節約が出来るのは勿論、銃と杖を持ち替えずに済むのは大きな利点です」
「では以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました」
パチパチと拍手がなる。
「そう言えば、その銃の名前はどうするのですか?」
「どうしますか?ガストンさん?」
「魔法具の名前は魔法使いが決まるのがしきたりだ。あんたが考えな」
「では、魔法銃にしましょう!」
「「そのまま過ぎる!」」
「わかりやすくていいじゃないですか?」
「まあ、俺はそれでいいけどよ」
「まあ、私はもっとカッコいい名前の方がいいとは思いますが、開発者たちが納得しているならそれでいいです」
「では、魔法銃で決定ですね!」
「そうだな」
「そうですね」
「あっ、そうそう。言い忘れていましたが、ガストンさん。国王陛下に献上する為の魔法銃を作ってください」
「は?」
「国王陛下に魔法銃を献上するのですよ。献上品なので見た目にも拘ってください」
「俺が献上品を作るのか!?」
「はい、そうです。受けてくれますか?」
「職人としてこれ以上の名誉はねぇ。有り難くやらせてもらうぜ!」
「では、よろしくお願いします、ガストンさん。私はお父様経由で国王陛下に謁見を申し入れてきます」
こうして、段取りが決まっていき、三ヶ月後に国王陛下に謁見する事が決まったのであった。
よろしければ、高評価、ブックマークお願いします。




