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第十四話 オーツ教の聖女

書き溜めが凄い勢いで無くなっていく。

心細い。


私はその後、昼間は聖女活動をして、夜は魔法具作りの練習と銃用の呪文を考え、ガストンが銃の試作品を持って来た日は議論をし、空いた時間は魔法の練習をして日々を過ごした。

そして魔法具作りを始めて一ヶ月が経った頃、遂に彼等が来た。


「お嬢様、オーツ教が面会を申し入れております」


「そうですか。応接間に案内してください」


そう伝えて、しばらくして私も応接間に向かった。

応接間に入るとまだ十代前半ぐらいの金髪の美少女がいた。


「はじめまして。私はオーツ教の聖女のリシアと言います。お会いしてくださりありがとうございます、ティファニー様」


想定はしていた。

今更、多少人格の良い人員を送り込んでも、オーツ教の信用はあまり回復しない。

そこらの教会関係者よりも、私の方が神聖魔法を扱えるからである。

私は光属性が適性ではないが、神聖魔法への理解と魔力量に物を言わせて、連発したおかげで、上達したのである。

だから、巷で聖女と呼ばれている私に対抗するべく、本物の聖女が来る可能性は想定はしていた。

だが本当に本物の聖女が来るとは。

若さから考えて、聖女教育中の修道女を繰り上げ卒業させたのだろうが、人手不足のはずの聖女を一都市に過ぎないこの街に送り込むとはな。

教会の本気具合が伺える。


「これはご丁寧にありがとうございます。それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」


「オーツ教の代表者として、謝罪をしたいのです。この街の前司教は民に不当な治療費を要求し、孤児院にはお金を使わず、私腹を肥やしていました。その事を謝罪したいのです。ですが、私たちがそう訴えてもなかなか聞いてもらえなさそうなのです。どうか、一言口添えをお願いできないでしょうか?」


やはりか。

広場で謝罪をしようとしても、耳を傾けてもらうのは容易ではない。

実際、ここまで来る途中も攻撃はされずとも、色々と言われたはずだ。

まあ、そうなるようにしたのは私なのだが。


「私もあなたのような清き心を持った方とは仲良くしたいと考えています」


「本当ですか!?ありがとうございます」


やばい、無邪気そうな美少女な聖女が喜んでいる。

絆されそうになる。

我慢、我慢。

まさか!これを狙って送り付けて来たのか!?

教会め!なんて奴らだ!

下手な精神攻撃魔法よりも威力、あるぞ。


「ですが、民たちは教会を相当、嫌っています。私が口添えする()()では難しいでしょう」


一部を若干、強調して言った。

暗になにかしろと要求しているのだ。


「そうですか。そう言えば、この街は人口の急激な増加の対応に追われていると聞きました」


「ええ、付近の街から()()()()()()この街に民が集まったのですよ。それの対応として、仕事の斡旋をしているのです。街に来る時に城壁を築いている所が見えたでしょ。あれも対策の一つでしてね、城壁の拡張工事を行い、雇用を創出しているのですよ」


またしても一部を気づくか、気づかないかという具合に強調する。

暗に教会の責任を追及しているのだ。


「素晴らしい対応ですね」


「ありがとうございます。ですが、実は流石に街を覆う城壁を拡大しようとすると資金が足りないのですよ。資金不足の問題を解決しようとあれこれしているのですが、なかなか成果が上がらず困っているのですよ」


さて、民衆の視点に立ち、少し考えてみよう!

あまり実感の湧かない城壁建設の資金の援助。

日常生活で恩恵を実感できる、治癒料金の大幅な値下げ。

印象の違いを態々、述べるまでもない。

前者の方が、圧倒的に都合がいい。


「では、教会から資金援助をさせていただけないでしょうか?」


ありがとう。

本当にありがとう。

武器を作って売る計画があったとはいえ、それも軌道に乗るには最低でも一年はかかる。

皮算用しなくてもいいのは助かる。


「本当ですか?ありがとうございます。助かります」


「お役に立てれば幸いです」


「そう言えば、先月に王都の教会から闇魔法研究に対する抗議文が届いたのです。あれは王都の教会の独断なのか、それとも教会の総意なのかどちらなのでしょうか?」


「それは王都教会の独断です。教会本部としては研究を認める方針です」


よし、これで教会からのお墨付きをもらった!

教会本部も認めたくないと言うのが本音だろうが、渋々とは言え、認められたのだ。

これで、ようやく他貴族どもを黙らせられる。

あいつら、「邪悪な闇魔法を研究するなど、断じて認めん!」とか言ってうるさいからな。闇魔法も光魔法を紙一重だと言うのに。

貴族の対応をしていたのはお父さんだが、結構せっつかれていたからな。


「そうなんですか。それを聞いて安心しました。では、口添えの件は任せてください。私が責任を持ってやりましょう」


「では、よろしくお願いいたします」


「ええ、もちろんです」


こうして、私と教会の会談は終わった。




◆◇◆◇


会談が終わって一週間後。

教会が謝罪会見(茶番)をした。


「どうでしたか?」


「まだ、厳しい目を向けられますが、一応は謝罪は受け入れられました」


「そうでしたか」


だろうな。

私がこの一週間連日、「教会は改心した」という内容の演説をしきりにしたからな。


「これからも頑張って、信用を取り戻そうと思います」


既に、結構な人数が他教に改宗しちゃっているけど、間に合うといいね。


「頑張ってください。それはそうと今、時間は空いていますか?」


「空いていますけど」


「では、一緒に孤児院に行きましょう。最近行っていなくて、どうなったのか気になるのです」


「いい考えですね。行きましょう」


私たちは怪我人に治癒魔法をかけながら、孤児院に向かった。


「着きましたね」


「そうですね」


中に入ると、以前とは違って子供たちはちゃんと元気があった。

管理するシスターもおり、建物自体も補強されていた。


「皆さん、食べ物を持ってきました。みんなで食べてくださいね」


私たちがそう言って食べ物を入れた籠を机に置くと、子供たちは分け合って食べた。

しばらくして、外に出ると、人が集まっていた。

来る途中に治癒魔法を連発した甲斐があったな。


「リシアさん、一緒に来てくれてありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとうございました、ティファニーさん」


「リシアさん、よければ、呼び捨てで呼んでくれませんか?その、私、友達に憧れていまして」


実は私、転生したから友達と呼べる存在がいないのである。

一人ぐらいは友達が欲しいなと思っていたのである。

もちろん打算もある。

聖女と友達になれば教会と親密な仲であると仲良しアピールができる。


「もちろんです。実は私も友達が少ないのです。これからは私のことはリシアと呼び捨てにしてくださいね」


「リシア」


「ティファニー、私たちこれで友達ですね」


私は以前のように演説はせずに聖女リシアと親密な仲をアピールしつつ、色々会話をしながら帰途についた。




◆◇◆◇


私は自分の部屋に入り、ポケットから取り出した小さな紙に魔力を流した。

すると、紙に刻まれた魔法陣が光り、結界が張られた。

無属性中級魔法『遮音結界』だ。

本来は内緒話をする時に使われるが、私の場合は主に独り言を言う際に使用していた。


「遂に友達ができた。嬉しい。いつかは打算抜きで付き合いたいな。さて、もう一つ嬉しい事があるんだよな」


私は魔法袋(マジックバック)から完成した銃を取り出した。

実はつい先日、完成していたのだ。

銃としての性能は申し分なく、恐らく現時点で望める最高の銃である。


「後は、魔法具にするだけ」


私は魔鉄合金のインゴットを取り出した。

わざわざガストンが魔鉄にミスリルを混ぜて作ってきてくれたのだ。

通常の魔鉄よりも魔力伝導率が高いのである。


「国王陛下への献上はどうしようかな?」


本音を言えば、したくない。

新兵器の献上なんて事をしたら派閥から目をつけられる事、間違いなし。

元々、献上する予定で作ろうとしていたが、資金の目処がついた以上、売る必要もないのだ。

ちなみにだが、武器で商売して良心が痛まないのかと言うと、微塵も痛まない。

需要があるところに商人が生まれるのは当たり前の事だ。

例え、それが武器であってもだ。

全て、需要が悪いのだ。


「でもな、量産せずとも、こんな目立つ物を使っていたら、噂になるよな。そして、いつかはどこかの大貴族の耳に入るよな」


そうなったら、確実に面倒な事になる。

最悪の場合、武器をこっそりと生産したと言われ、反逆罪になる可能性もある。


「はあ、仕方ない。お蔵入りにするのは嫌だし、やっぱり献上するか」


私は諦めて献上する事を決めた。

そして、この銃を魔法具化するべく、作業を始めた。


「この銃は素材に拘ったってガストンが言っていたからな、魔法陣が色々詰め込める。機能盛り盛りにするか」


魔法陣を刻める数や大きさなどには限界がある。

品質が良ければ限界も高くなる。

そして、この銃は完成品なだけあって、とても素材の品質が良かった。


「魔力を流し込む場所を変える事で弾の種類を変えれるようにするか」


献上とか言う面倒くさい存在は一旦、忘れて銃の魔法具化に熱中する私であった。

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