第十話 オーツ教の腐敗が進み過ぎているので叩き潰そうと思います!
作品名よりも長いエピソードタイトル。
それと、なにやら、ルビの振り忘れが多発しているようです。
見かけられた方、誤字脱字してくれると助かります。
街の教会から金目の物が消えた次の日、私はお父さんに呼び出されていた。
「昨日、オーツ教から苦情が来た。金目の物を盗ったそうだな?」
「不敬を働いた者を処罰しただけです」
「はぁ、ここだけの話だ。私はあの司教と懇意にしているのだ。この意味が聡明なお前なら分かるな?」
「つまり、癒着しているから、関係修復をしてこいと?」
大方、尤もらしい理由をつけて領地法で診療所を教会の施設に限定して、その見返りとして賄賂を受け取っていたのだろう。
教会は競争相手がいないから料金を釣り上げれる。
伯爵家は懐が潤う。
そして民は苦しむ。
「癒着ではない。懇意にしているだけだ」
物は言い様だな。
「お父様、一つよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「今、関係修復をするのは得策ではありません。昨日、私は教会の半額の料金で冒険者を治療し、貧民街の子供たちは無償で治療しました」
「それがどうした?」
「そこに教会は乗り込んできて、治療をやめろなどと聞くに堪えない事を大声で言いました。さて、民たちはどう感じたでしょう?」
「まさか!」
「片や良心的で献身的な貴族、片や醜い欲望を隠そうともしない教会。もしも、今、関係修復を計れば、民衆は失望しますよ。不信感すら、抱くかもしれません。そうなれば、我々の権威も失墜します」
交渉の基本中の基本その一。
まず、デメリットから話し、恐怖心を煽る。
「確かにそうだな。と言うより、本当に面倒な事をしてくれたな」
効果は覿面のようだ。
普段、感情を見せないお父さんが少しだけ、表情を変えた。
「そうならない為にも、今は教会を悪行を糾弾するべきです。そして、教会から差し押さえた財産を使って、貧民街への炊き出し、孤児院への寄付などをして、それを大々的に宣伝するのです。そうすれば民からの信頼や信用が高まりますよ。賞賛の嵐でしょうね」
交渉の基本中の基本そのニ。
恐怖心を煽った後に、メリットを強調する。
「なるほど」
「ところでお父様、教会は孤児院にどれほどお金を使っていましたか?」
「ほとんど使っていなかったはずだ」
やはりか、好都合だ。
「ではプロパガンダを作りましょう。ついでに伯爵家の手の者を使い、噂を流しましょう。教会は法外は治療費を巻き上げていたにも関わらず、孤児院には一切お金を出していなかったのだ!と」
「なぜ、我が家の手の者の事まで知っている?」
「ただの勘ですよ。貴族家の当主なら、誰でもやっている事でしょう?どうですか私の計画は?」
「そんな事をすれば教会との関係がさらに悪化する。街から撤退でもされたら、街中が怪我人で溢れかえるぞ」
「なりませんよ。教会は愚かですが、馬鹿ではありません。少なくとも上層部は。もし、そのような事になれば、教会は民からどう思われるでしょうね?」
「悪事がバレてなりふり構わず暴れ始めたと思われるだろうな」
お父さんは少し考えてからこう言った。
「ええ、そうなるでしょうね。こうなる事を恐れて、教会上層部はまともな人員を送り、信用を回復する事を選択するでしょう。過去にも同じような事が起きていたようですが、その時も信用回復を目指していたようですし。ただでさえ、最近のオーツ教は信者を他教に奪われて焦っているようですし。まあ、もしかしたらあの司教が独断で撤退するかもしれませんが。では念の為、回復薬の増産の指示をしてください。これで教会との関係は冷え切りますが、街が困ることはありません。後は折を見て、少しずつ関係改善を行えばよろしいかと」
「はあ、わかった。教会への対応はそのようにしよう」
お父さんはそう言った。
まあ、選択肢なんて教会と共に権威を失うか、教会との関係を犠牲に民からの支持を集めるかの二つしかないけれど。
それと、私は一つだけ言っていない事がある。
それは父よりも私の方が賞賛を浴びる事になるという事だ。
なぜなら今回治癒していたのも私だし、有名なのも私だからである。
おそらく、一週間もすれば貧民街の子供たちのあの美談が女性たちの間で美化されながら拡散され、民衆は伯爵家と聞いたらあの影の薄いお父さんよりも私のことを想像するようになるだろう。
民たちの支持というのは大きな力だ。
こうして、父の執務室を後にした。
そして、自分の部屋に戻ると師匠が待っていた。
「企みは成功しましたか?」
「やはり、師匠にはお見通しでしたか」
「お嬢様は民からの支持を集めて何をなさるおつもりですか?」
「闇魔法の解禁ですよ。とは言え、あくまでも対処法を知るために研究をすると言う大義名分の元、行う予定なので研究しかできませんが」
「それでも、反発が大きそうですがね」
「だからこそ私は権力を手に入れ、反発してきそうな教会の力を削ぐ事にしたのですよ」
「実にお嬢様らしい動機ですね。昔から魔法一筋ですね。だとしても、闇魔法の為だけにここまでするとは驚きですが」
「一応、他にもお父様が政略結婚させようとしてきた時に反発できるようにという目的もありますがね」
「あの、お嬢様が恋愛結婚する姿が想像できないのですが?」
私も一応は貴族だ。
貴族に生まれたなら、よい相手と結婚しなければならない。
だがしかし、男と結婚すると考えると吐き気がする。
前世では、男と男で結婚しようとする人もいた。
同性同士でも誰が誰と結婚しようが個人の勝手だし、好きにすればいいとしか思わないが、私が当事者になるなら話は別だ。
私は女の子と結婚したいのだ。
はあ、これがTSのつらいところだな。
恋愛をしようとしたら、肉体的な同性愛か精神的な同性愛かを選ばされる。
「私も貴族の一員です。いつかは結婚しなければならないのは理解しています。ですが、好きでもない相手と結婚する覚悟はまだないのです」
「ちなみに旦那様と奥様も政略結婚でしたよ」
「でしょうね。愛がありませんからね。あんな風にはなりたくありません」
だからなのだろう。
どちらも私を愛していないのは。
お母さんなんて、最近会話どころか、見かけさえしないし。
別にどうでもいいが。
「話がそれてきましたね。さてそろそろ、仕事をしてきます」
「心配なので、私もついていきますよ」
確かに刺客に襲われる可能性はあるが、その可能性は限りなく低いと思うのだが。
あっ!襲われたらプロパガンダ作りに役立つから襲われたいな。
◆◇◆◇
私の仕事、それはようするに教会の力を削ぎ、私の名声を高めつつ、神聖属性の魔法を鍛える事である。
「『範囲治癒』」
というわけで、私は治癒魔法を連発しながら堂々と歩いていた。
昨日のようにフードで顔は隠さない。
できるだけ、多くの人の目に映るように歩いていた。
途中、『範囲治癒』では治らない人がいると、私は歩みを止め、『中位回復』をかけた。
もちろん、お金は取らない。貧民からは。
道中、店から「孤児院に寄付するのです」と言いながらパンやリンゴなどを買った。
そして『範囲治癒』を十数回連発した頃、ようやく私は目的地についた。
孤児院である。
ちなみに『範囲治癒』の光でとても目立ちながら歩いてきたため、私の周りには結構な人数の民たちがいる。
そんな民たちの注目を一身に受けながら私は堂々と孤児院に入った。
孤児院の中は、思っていた以上のひどい有様だった。
食べ物がもらえなかったのだろう。
何人もの、孤児たちが痩せ細っていた。
孤児院の管理をするシスターも不在だった。
勿論、孤児院自体もボロボロ。机や椅子なんて、折れているし、暖炉も使われた形跡がないし。
流石に崩壊はしないだろうが掃除もされていないようで不衛生だった。
私は『念力』で扉と窓を開けて、風属性の生活魔法で風を起こし、塵埃を吹き飛ばした。
そして、短縮詠唱で呪文を唱えた。
「『範囲治癒』」
そうすると、怪我をしていた子供たちがどんどん癒えていった。
『範囲治癒』では飢えを解決する事はできない。
だが、一時的に感じさせないようにする事はできる。
つまり、動く気力もない子供たちが動く気力のある子供たちになるのだ。
「皆さん、食料を寄付しに来ました。みんなで食べてくださいね」
そこまで大声で言ったわけではないが、扉が開いているので、外にいる民衆にも聞こえただろう。
私はそう考えながら、魔法袋から食料を取り出してボロボロの机の上に置いた。
食べ物を見た子供たちは途端に動き出し、バクバクと食べ始めた。
パンとリンゴを一緒に食べるの合わない気がするが、まあ栄養素は取れるからいっか。
そして、開いたままになっている扉から外に出た。
外にはやはり民衆がいた。
騒ぎを聞きつけたのだろう。
さっきよりも増えていた。
「皆さん、見ましたか!教会はあんなにも法外な料金で治療をしていたのにも関わらず、孤児院には一切お金を出していなかったのです!」
一切出していなかったとは考えにくいが、まあ、扇動術の基本は嘘と誇張だからいいだろう。
そうすると、民たちから「教会を許すな」とか「なんて酷い」とか聞こえてくる。
「これは当然、許されない事です!故に私は教会が溜め込んでいた財産を没収し、そのお金を炊き出しや孤児院への寄付、公共事業などに使う事にしました!」
公共事業とは城壁の拡大の事である。
おそらく、このままこの活動を続ければ他の街から貧しい人が治療を求めてくるだろう。
つまり、人口が増える。
その対応のためには城壁の拡大工事が必要なのだ。
他にも水路工事や、街道工事などもするつもりだ。
雇用の創出、大事。
しないと、悲惨な事になる。
「教会を許すな!」
「貴族様、万歳!」
「ティファニー様、万歳」
さて、この後は冒険者ギルドで格安治療をするか。
この日、この街におけるオーツ教信者が激減した。
そして、街の至る所から伯爵家とティファニーを絶賛する声が響いたのであった。
初日記念投稿ラッシュ(十話連続投稿の事)はこれで終わりです。
尚、投稿時間的に日、跨いでいるじゃんと言うツッコミはしないでください。
ちなみに、次回は閑話しない閑話の予定です。
それ、閑話じゃないじゃん!とつっこまないでください。
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