プロローグ
ナイトクラブを舞台にしたお仕事&ライトミステリです。
©Lamine Mukae
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《皆さんに感謝を込めて》
タイトル代わりの言葉を添えて投稿したイラストには、たった三十分の間に、三千を超える「いいね」がついていた。拡散を表す『R』マークもやはり四桁に上っている。
《綺麗!》
《わーい! 推しの絵師さん、新作キター!》
《前回の絵もバズってたよなあ。すぐメジャーになっちゃいそうで、複雑な気分 笑》
《アニメとかゲームのキャラデザもいけそうですね!》
《Thank you,too!!》
内外から届く温かいコメントの数々。嬉しいな、と素直に思う。ネットの世界も捨てたものじゃない。
「昨日見せてくれたやつ、アップしたんだ?」
「あ、うん」
明るい声にタブレットから顔を上げた。まさに「いいね」と言わんばかりの笑みが、ゆっくりと近づいてくる。左右の手にはそれぞれ、子狐と犬のイラストがプリントされたマグカップ。
「はい、どうぞ」と二人ぶんのコーヒーがローテーブルに置かれたタイミングで、自分も笑ってみせる。
「どうもありがとう」
でも感謝したいのは、コーヒーを淹れてくれたことについてだけじゃない。
想いはしっかり伝わったようだ。
向かい合った笑顔が、さらにふわりとほころんだ。