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この庭の芝生は青い  作者: 心愛
無実行きの切符
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検討

こんなにもたくさんの人がいるのに、3年間を通じて関わる人は何人いるだろうか。高校1年生7月中旬時点で、俺が関わりを持っている生徒は、科学技術部の梶原、伊沢、千春。毎日のように話しているのはこの3人だ。俺の中ではもう立派な友達である。その他に、その3人ほど親しいわけではないが、美術部の相川という女子生徒とも偶に話す。訳あって、部室の一部を絵描きスペースとして貸しているのだ。梶原が言うには、彼女には1枚壁を置かれていると言っていた。俺が鈍感なだけなのだろうが、俺はそうは思わない。俺は相川のそれが『相川らしさ』であると感じる。


「いやぁ朝から良いことした気分だよ」


 俺達は今梶原のクラスに向かって歩いている。いつもは俺の教室に来るのだが、せっかく一緒に来たんだからと意味わからん理由で俺はこの階段を上がっている。


「実際いいことだろ。財布を拾って届けまでしたんだ」


 俺ならきっと、見て見ぬふりをしていたかもしれない。


「つばちゃんならさ、あの財布から持ち主とか分かんないの?」


「はぁ?」


 とんでもないことを言われた。俺は超能力者でも何でもないただの一般高校生だ。


「わかるわけないだろ」


「大まかでいいんだよ。この人のだ!って特定しなくても」


「なんだ大まかって」


 …面倒だが、梶原のことだからどうせ逃がしてはくれないだろう。逃げて捕まるくらいなら、逃げずに受け止めるほうがまだ楽かもしれない。


「聞いてきたってことは、梶原は何か心当たりがあるのか?」


 梶原は、笑顔を崩さずに言った。


「ないさ。俺にできないから、君に聞いてみたんだよ」


 俺はもう過去のことと割り切って気にすらしてなかった。いきなりそんな事を言われても、急には無理だ。だがせっかくなら、少し考えてみてもいいかもしれない。こういうことに頭を使うのは、無駄なことだとは思わない。


 落ちていた財布はマジックテープで開け閉めする部分と、チャックで開け閉めする部分があった。折りたたみの財布で、中には身分を証明するものはなく、小銭と切符が3枚。その切符は、中央駅行きが2枚。東駅行きが1枚。いくら電車を使わない俺でも、2つの駅な位置関係位は分かる。東駅というのは、俺と梶原が切符を届けた駅だ。中央駅というのは、この街で1番大きな駅だ。これは憶測だが、さっき梶原にも言ったように、俺はもともと切符が4枚あったと考えている。残りの1枚は、中央駅から東駅の切符で、すでに消費済み。わざわざ2枚組を2つ買った。持ち主がどういう意図で切符を買ったか知らないが、普通に考えるなら2日分。きっと何らかの理由で、今日と明日、この区間を電車で移動しなければならなかった。面倒だからあらかじめ明日分も買っておこうと言う考えだった。だが持ち主は切符が当日のみ有効であることを知らなかった。俺や梶原と同じように。


「まぁ普段電車を使わない人であるのでは確かだな」


「あぁ、2日分を買ったからってこと?」


「そうだ。普段電車を使わない俺や梶原が当日しか使えなかったのを知らなかったように、財布の持ち主もその事を知らなかった。それに、普段から電車をよく使うなら、定期券やIC系カードを持ってるだろうし、それを使うはずだ」


 俺は一呼吸置いて続けた。


「まぁ、ここまではいいとして、問題は、果たして誰なのか。大まかに言うと、どういう人なのか、だが…」


 梶原が、桜が舞い落ちるくらいゆっくりと頷いた。


「たぶん高校生だぞ。この学校の」


 梶原からの反応がない。これはこれできついものがある。それとも次の俺の言葉を待っているのだろうか。


「まず気になったのは、財布の中身」


「確か、小銭と切符だけだったね」


「そうだな…何かおかしなことはないか?」


「いや、特に一般的な財布だったね」


「梶原が真っ先に中身を確認したのは、身分が証明できる何かが入ってるかもと思ったからだろ?それならなぜ、カードの1枚も入っていなかったんだ」 


「でもさつばちゃん。こういう考え方もできる。例えばあれは、小銭入れに使っていた。自販機用だとか、そういうために。だとしたら中にカードの1つも入ってなかったとしても、説明がつくと思わない?」


 言われてみれば…確かにそうだ。こうも反論されると、意地でも自分の意見を通したくなる。なにか…そうか。


「でも待て、それならわざわざあれである必要はなかった」


「どういう意味?」




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