表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この庭の芝生は青い  作者: 心愛
ラクガキサマ
7/77

理由

「それで、なんで今日じゃないとだめなんだ」


 ふと、今日梶原と昼を食べることになった経緯を思い出した。梶原は「そうだったね」と口元まで持っていっていた箸を降ろした。


「今日の午後何があるか知らないの?」


「知らん」


 きっぱりと言い、卵焼きを箸で掴んで口に運んだ。


「時間割くらい把握しとくんだね」


 それは確かに大事なことだ。とぐうの音も出なくなってしまい、場が悪くなった。


「理由を教えてくれ」


 見苦しい逃げだ。我ながら情けないふっと笑う梶原。逃げているのが流石にバレたのか。


「せっかく仲良くなれたんだから、一緒の部活に入ろうと思ってね」


「仲良くなった覚えはない」


「釣れないなあ。もっと気楽に行こうよ!」


 はあ、とため息をつく。


「この前から気になってたんだけど、そのメガネ、度高くない?」


 窓を見る俺を覗き込むようにして見てきた梶原。相変わらず近い。それにこれは今関係ない話だ…。だがなぜか俺は、その話にも乗って答えてしまう。


「ああ、裸眼だと0.3くらいだからな」


「悪っ!」と驚かれた。いくらなんでも大げさすぎやしないか。この静かな教室だと、こいつの声量だと悪目立ちしてしまう。目立つことさえも避けたいのに悪目立ちなんて余計にごめんだ。


 俺は1度外した丸渕メガネを袖でレンズを拭いて再びかけた。


「俺はまだ2あるんだよ!すごいでしょ」


「聞いてない」


 視界の端で頬を膨らませるのが見えた。褒めてほしいのだろうか。俺はご飯を一口食べる。


「つばちゃんって、なんだか不思議だよね」 


いきなり何を言い出すかと思えば……。俺は動かしていた口を意図せず止めた。


「おとなしくて落ち着いた声なのに、言葉に棘がある」


 そうだろうか。自分では意識したことがない。


「怖い声でもないんだよ。優しくて落ち着いてる声なのに」


 人に声を分析されるのは、なんだか良い気分には慣れない。


「そうですか」


 俺は結局、適当に流すという行動を取った。


 そしてそのまま前みたいに梶原の雑談を聞き流しながら昼を終えた。時折梶原がスマホをいじっていたのが少しマナー的にどうかと思ったが。特に注意はしなかった。時計に目をやる。まだクラスメートは誰一人として動いていないが、早く行くことに越したことはないと思って、俺は弁当箱の片付けに入る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ