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この庭の芝生は青い  作者: 心愛
ラクガキサマ
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再び現れたあいつ

その昼休み、俺のもとにまた奴は現れた。


「つばちゃん!」


 声と、その呼び名とか関係なしに、階段を降りてきた梶原と目があった。「ちょうどよかった」と近づいてきながら言っていた。まだ何かあるのか?


「今度はなんだ」


 梶原が手に持っていたものを顔まで上げて見せた。


「せっかく仲良くなったんだし、おべんとう一緒に食べようと思ってさ」


「却下」


 俺は即答した。


「えー。なんで!」


「先客がいる」


 あっけに取られたような顔で少し黙り込んだ。そして次の瞬間に、「えーー!」と驚き、前のめりになって来た。この前の喫茶店と同じくらい近づいてきた。俺はそれをまた頬を押して遠ざける。


「つばちゃんお昼一緒に食べる人いるの?!」


 こいつは俺を何だと思ってるんだ一体。押しのけた体は何事もなかったかのように先ほどの位置に戻り、彼自身も何もなかったかのようにまた話し始めた。


「友達いるの?!」


「まぁそんな感じだろうな」


 まだ納得言ってないというのが俺にもわかる。いかにも読み込めていないといった表情だ。当然。これは嘘だ。梶原を避けるための1番無難な嘘をついた。


「はぁ、じゃあ明日は一緒に食べて」


「そこまでして俺と食べたい理由はなんだ」


「話したいことがあるからだよ。今日か明日じゃないと間に合わないからさ」


 間に合わない?今日か明日じゃないとだめ。俺も少し噛み砕くのに苦労しつつも「わかった」と返事を返した。


 次の日、恐らくここに来るだろうと見立てを立てて俺は昨日と同じ階段にいた。もしこれで梶原が教室に来たらすれ違って面倒になるが。まあそうなればあいつは俺を探すだろう。なんたってあいつは消しゴム1つで知らないやつに話しかけるようなやつだから。


 人は俺を避けすれ違う。壁に体重を預けると、まるで壁と同化したように皆俺が見えていないように通り過ぎていく。


 そしてふと顔を上げると、梶原が階段から降りてきているのが見えた。向こうも俺と目があったことで俺の存在に気づき、一段とばしで降りてきた。


 俺は梶原を連れて教室に戻る。俺の席を除いて満席の教室に、梶原の座る席はない。


「ねえ、どういうつもりこれ」


 俺は自分の席に座った。梶原は仕方ないので俺の机の横に膝立ちをさせた。


「お前は満員電車で無理矢理席を譲ってもらうのか」


「そんな事しないよ。立つさ」


「同じだ」


 少し梶原は黙り込んだ後、ため息を挟んで話を始めた。一瞬にして、笑顔に戻る。こいつのデフォルトの表情は笑顔なのだろうか。


「つばちゃん部活何入るか決めてるの?」


 弁当箱を開けながら梶原は問うてきた。俺も弁当箱を開ける。卵焼きはやはりお互いに入っている。俺はそれに加えて昨日の夜のあまりである野菜炒めの残り、冷食のコロッケと春巻きが入っている。


 梶原の弁当にはからあげとブロッコリー。たらこのスパゲティ。似て異なる中身だ。


「席をいれるだけなら入ろうかと思っている。進学でも使えるしな」


「へえ。大学行くんだね」


「学歴主義社会だからな。就職に困りたくはない………ってなんだその目は」


 梶原は、まるで不審者でも見るような疑いに満ちた目で俺を見てきている。


「だってつばちゃんはそういうの気にせずにニートでもすると思った」


「愚問だ」


「でもめんどくさがりでしょ?」


 知ったような口を聞きやがって。


「違うの?」


「合ってる」


 場が悪くなって目を窓の外に背けた。「やっぱりー」と指さして笑ってくるのが窓に反射して見える。


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